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世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
77/90

77.間と間のあいだ

2/3


もう一話あります


 とっても静かな“間”が私たち二人の間に時間と空間を作る。


 私はひたすらに言葉を待ち続けていたのですが、ふと違いを感じる眩しさから頭の上に爛々と輝く電灯を見ようとすると、思っていたよりもこの街から見える空は綺麗で、見えないハズの流れ星が一つ降ったような錯覚を見た。


 私は目をいつも以上にスッと細め、視線を夜空から双葉さんへと移動させる。


 双葉さんは目を閉じたまま、まだ言葉を探していた。


 多分、今、――そう思うほどに、双葉さんは沈黙を続ける。


 一言も発していないのに、思い出すナニカを否定できそうになく。


言葉に変換することが難しく、気持ちと否定の板挟みで、何も喋っていないのにどんどん辛そうな顔に変わる。


 正直を言えば、声を掛けてあげるべきだ。


 だが、コレは双葉さんが自分で乗り越えるべき、いや前に進む為にも必要な事だというのが感覚でなんとなく分かるので、私はただひたすらに自転車の上で待つ。

 まあ、少しだけそんな時間にも飽きて来て最後の方は足をプラプラとさせるぐらいには待ったのだが、双葉さんが言葉を発し始めたのは、五分ほど経った頃だと思う。




「戦争が、あったじゃないですか。生きている奴もいるけど、仲のよかった何人も多分、死にました」


 ぽつりと、双葉さんは言葉を零し始めた。


「確かに、戦争の気運やら流れやら、爺さんも勝ちに勝ったって言っていましたけど、それはたまたまだったはずなんです」


 ギュッと目を瞑り、ただ、それは涙をこぼすまいとしたわけではなく、別の感情を膨らませないようにした顔。


「何が悪かったんですかね?勝てない戦争を始めた日本?それを止めなかった、軍上層部?それとも同調圧力に、何も言えなくなった……国民?」


 強く瞑った目からは涙など流れず、でも少しだけ目は赤くなった双葉さんは続ける。


「死んだ、死んだ、死んだ。でも、僕は……何も、一歩も、動けなくて……、生き残ったというより、死ななかった。空襲も沢山あった。でも、当たらなかった。焼夷弾もあったけど、焼けなかった。ただ、それだけなのに……」


 真っ赤に充血した目はギョロリと不可思議な動きをしたかと思うと、どろりと体からあふれる様な闇を彼の心が抱えているのが垣間見える。


「死にたいわけじゃない、たまたま拾った命なのに、でも、蔑ろにも出来なくて」


 その言葉と共に、溢れかかった闇はスッとなりをひそめた。

 代わりに、双葉さんの語気が少しだけ強くなる。


「生と死が曖昧で。知識でどうにかならないかって、読めば読むほど分からなくなって」


 胸ポケットから一冊のメモが出て来る。

 そこにはぽつりぽつりと優しい文字で書かれた、危うい言葉たち。

 ちらりと見ただけで、全てを見られたわけではなくても言葉の節々からも察することが出来るぐらいに、彼を闇に引きずり込もうとしている色々なナニカの不気味な手招きが見え隠れする。

その深い闇は大きな口を開けていて、双葉さん一人だけでは飽き足らず、関わる周り全てをも飲み込まんとするように見えた。


「吐き出しても、書き出しても、納得なんて出来なくて」


 喋っているうちに、双葉さんの感情も刺激を受けたのか、持っているメモを破りそうな動きの予備動作に入ったので、スッと右手を伸ばして破ろうとしている左手に添えると、ビクンッと強く跳ね、俯き加減の双葉さんが顔をあげるとやっと私と目が合った。


 目が合うと、もう一度驚き、泣き顔のような目尻が緩んだ顔をみせつつ、肩を落として下を向いた。


 私はどうしようか少しだけ迷って、反対の左手をそのまま双葉さんの頬に当てた。

 今度は驚くことなく、ただ私の手のぬくもりを感じたまま。

 少しだけ、優しい空気が私達を包む。


 そして、無意識と思われる緩やかな手つきでメモから私の左手に双葉さんの右手がそっと重なった。

 双葉さんの手は少し冷たくて、私の手からそっとぬくもりを移す。

 静寂の時間はとても短く、双葉さんがハッとすると慌てて重ねていた手を下ろす。


「あ、すみません……タエさんの手が、その、温かくて」

「気にしないでいいですよ。双葉さんの頬も手も少しだけ温度が下がっていたんですね。私の手で温まれるのであれば、温もりは分けますよ」


 私の言葉に嬉しさを見せる双葉さん。

 ただ、内に秘めたままの闇はもう少し観察が必要そう。


「いいですよ。吐き出しちゃいましょう?でも、ちょっとだけ声のトーンを落として、全部、全部、一度口から出しちゃいましょう」


 緊急で、即席で、自転車の上の相談所。


 あまりヒートアップしてしまうと、ご近所さんも起きてしまって、怒られてしまう可能性があるので、小さく「ね?」とだけ言って、人差し指を一本自分の口元から双葉さんの口元へそっと唇をなぞるように伸ばして、一歩先へ踏み込みます。


 そんな私達を見守るように、見えない流れ星がまたきらめいた気がしました。




間って難しいですね。


日本人は比較的、空気を読む事に長けているので、その辺りが特に顕著。


え?作者??……読まないに決まっているじゃないですか(笑)

読めるけど、読まないという程厄介ではないハズですが、ダメなタイプです。


もう少し大人にならないと……ダメ。。。


そう言い続けてもう何年でしょう?


人としてあんまり良くないなぁ(笑)


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