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世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
74/90

74.一本の酒、二つの夜

2/3


もう一話あります


 勝手に拝借した双葉さんの前に合った串と自分の良さそうなタイミングで持ち上げた熱燗を手酌で一杯。


「ふぅ、美味しいですね」


 何もしてくれない周りの人達を当てにしたところでいい方向に行くわけもないので飲み食いを勝手にしていたのですが、追加で店主が焼いていた串はかなりいい感じだったので勝手にそれを頂くことに。


「あちち」


 焼き加減は完璧でいつまで二人は呆けているのかと思ったのですが、少しばかり神妙な顔つきになったのは店主。


「今日、俺のやった事はよくない事……だったのか?」

「さあ?盗んだ事実は変わりませんね。そしてお店を開いて辞めた。これもまた事実。ですが……そうですね、真実は別でしょうね」


 私の言葉に再び二人の視線が集まる。

 視線をわざわざ気にすることなく串から一つ肉にかぶりつき、お酒をクイっと煽った後に、水で喉を潤す。

 もうちょっと水を飲もうと思ったら、湯呑が空っぽだったのでお水を汲んでコツンと湯呑を机の乗せると、私の言葉を待つ二人の圧が強くなった。


「真実というのは『人の目』を介します。単純に言えば人の数ほど真実はあるという事です」


 なんとなく分かった顔をした双葉さんとさっぱり意味が分からないという顔の店主。


「私達は飲んでいるこのお酒の事実を知っています」


 そう言って一升瓶を私が持ち上げる。


「このお酒はあるお店から盗ったモノです。ですが、働いた給料でもある。盗まれた側の真実は単純です。『盗まれた』ですが、盗った貴方の真実は『給料』です」


 別にトンチをしたい訳ではないのですが、中々説明というのは難しいモノで、眉を顰める店主。


「いいですか?まず先に事実を言いますよ?」


 そういって、全員のコップに日本酒を注ぎます。


「このお酒はある店の商品で、その商品が盗まれた。お酒が一本店から無くなった。事実はたった一つです。」


 ここまでは分かったのか店主が頷きます。


「ですが、真実は違います。あなたの真実は給料として正当な理由で頂いた。そしてお店の真実は店の人間に盗まれた。と、ここで真実が二つに分かれるわけです」


 私の言葉に眉をひそめたのは店主。


「俺が悪くないとは言わないって事だな?」

「ええ。嘘ではなく、偽りはなく、本当のこと。それが真実なのですが……それがまた厄介で。嘘は無くても、偽りが無くても、本当のことしか言っていなくても、人が見るモノと自分が見るモノは全く違う事にもなります」


 ただ、そんな事を一から十まで気にしていたら、この時代生きていけなくなることは当たり前。

 分かりやすく言うのであれば、生きる為にはグレーゾーンを突き進む必要があるわけで。


「事実を変えることは出来ない。ただ、真実だけが正しくはない……」

「いい事を言いますね。その通りです」


 コレは拍手喝采モノと私がパチパチと手を叩きますが、なぜか二人は微妙な顔。


「何も考えずに生きられる、そんな事があれば後悔なんて無いかもしれませんが、人は考えますからね。事実だけ見ると痛い目を見る事もあります。それこそもう忘れ始めているかもしれませんが、とある判事が無くなったのも、『手をつければよかった』の一言で済まされるように……ね」


 私の言葉にハッとした顔をしたのは意味を理解したであろう双葉さん。

 何のことかわからないという顔になったのは店主。

 二人の顔色はまるで正反対になって、双葉さんは青白く、店主は赤ら顔に。


「貴賤を問わず。このお酒に罪は無し。っと、お金はちゃんと私達も払いますけどね」


 タダ飯を頂くわけにはいかないのでその辺りはきっちりとしたいと思い、ポケットからごそごそとお金を出すわけですが、私自身も多少の酔いが回ってきたのか銭湯の時とは少し違う形でナニカが溢れます。




 溢れたナニカが私に見せたのは不思議な光景。


 それは店主がココではないどこかへ行ったもしもの世界に見える。


 五角形に見える堀があって……雪もちらほら見えるところで声を張り上げながら商売しているこの店主はから揚げっぽいモノを売っていて、とても繁盛している様子。


 そんな幻がゆらりと消えて、フワッと風が西に吹く錯覚をみせると、食い倒れ人形の近くで少しだけ今よりも年を取った店主がとりすきを扱っていて、どうやらこれまた繁盛の様子。


 更に再び西へ吹く風を感じると、船が作られる港町近くのこれまた小さな屋台でせっせと鶏皮を巻いては焼いている店主。ちょっとだけ違うのは今までよりも真に迫っている雰囲気が感じられる点。


 どれもこれも同じ店主でその様子は楽しそう。

 酔いが見せた不思議な光景ですが、それにしても変な雰囲気があり過ぎ。もしかして?と思う事があったので折角なので聞いて終わりましょうか。


「ふふっ、貴方もしかして酉年生まれですか?ここまで人生が鶏まみれというのも面白いモノですが……」


 私の言葉に再び驚く店主。


 そして、三人何故かタイミングが合って、コップのお酒をクイっと煽る。


 行動が重なって、なんとなくお開きの空気が漂って。

 不思議な公園の一幕が終わりをつげます。




か、軽く……出来てない?


いや、別に重くしたいわけじゃないのですが……


うぐぐぐ


こればっかりは作者の努力不足。申し訳ありません


名探偵小学生に喧嘩を正月から売るスタイル(笑)


いや、結構この問答は哲学やら色々と聞いたこと、耳にした事皆さんもあると思いますけどね。


自分の目を疑うのは厳しいですが、事実だけでは人は生きていけません。


……お?今の最後の一文ちょっとだけ格好良かったかな??(笑)

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