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世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
73/90

73.温度のちがう夜

あけましておめでとうございます

どうにも、昨年だけでは終わりませんでした

もうしばらく……続きそうです


本年もよろしくお願いします


1/3


いつも通りの話数です


 半分に分けた鳥皮。


 穴が開くほどというぐらい双葉さんはジッと見てから食べる。


 そんな変なモノじゃないのに、ちょっとだけ失礼な気はしたのですがそんな気持ちおくびにも出さず、ニコっとする。


「こんな旨いもん食わされたら……店は閉めるしかねぇな」


 そんな事を店主がいきなり言うと、お世辞にもキレイとは言えない様な暖簾っぽい布を外した。


「え?終わりですか?」

「いや、本日のついさっき新規開店だったんだが、つい今し方最終日になったんだ。捨てるもんだとばっかり思っていた鳥皮がここまで美味いんだ。食といえば大阪だろう?とりあえずそっち方面行きながら、真面目にやらなきゃ損だろ?」


 何とも思い切りのいい発言で客である私と双葉さんは慌てて顔を見合わせるばかり。


「今日の駄賃としてかっぱらった日本酒だが、祝い酒にはもってこいだ。別に泥棒の片棒を担がせようって魂胆じゃねぇ。寧ろこんなに旨い人の目の向けないモノを教わった勉強料として納めてくれって……いうのも、盗んだもんじゃサマがねぇな?」


 豪快に笑う店主は色々と吹っ切れたのか、付き物が落ちたようなさっぱりした顔に。


「いえいえ、お気持ちはしっかりと受け取りましたし、お祝いでしたらパーッとやるのもいいでしょう」

「おっ、別嬪さんは流石に分かってるねぇ」


 そう言いながら、きゅぽんっといい音でビンをあけて日本酒をつぎ足し、再び温め直す店主。


「それに比べて、兄ちゃんは威勢こそよかったが尻すぼみだな。まあ、これだけの別嬪さんなら尻に敷かれても幸せだろ」


 そんな事を言われて、さっきよりも顔を赤くして俯いてしまった双葉さん。

 店主はこっちのことを気にせず、そのまましゃべり続けます。


「地元に帰る金欲しさでとりあえず闇市で日当貰ってみたが、人に食わすもんじゃねぇもんも売っていてな。仕方ないのも分かるが、流石にちょっと頭に来て、売り言葉に買い言葉よ。まあ、カッとなった割に、いい酒だけ駄賃で貰ったから、おあいこ様だろうよ」


 時代がそうさせたのか、それともこういう時代と納得するしかないともいえるような話を聞きながら、絶妙な燗酒を注いでもらい、クイっと開けるとすぐにお酒を注いでくれます。


「あんなこともこんなこともあった後だろう?後悔しねぇように生きたくなるもんだ」


 店主は少しばかり遠いところを見る。

その目は悲しさなのか侘しさなのか遠くを見ているような目だ。


「そうでしたか。でしたら、一つ」

「なんだい別嬪さんよ」


 店主は自分のコップにトクトクといい音でひや酒を入れると、私の言葉に少しばかり構えるように、グイっと一気にコップを煽る。


「人は後悔します。後悔のない人生というのは人間にはほぼ送れることはありません」


 私がしゃべり始めると周りの空気がピンッと張り詰め、遠くに聞こえていたはずの喧騒もなりをひそめる。


「出来ない事を目指しても、出来ないんです。そして、それを人は後悔ともいうんです」


 だから、私が今店主に伝えなければいけない言葉はただ一つ。


「どうせ後悔すると思って生きて下さい。その中で、耐えられない程の大きな後悔『だけ』に抗って下さい」


 私の伝えられる言葉はたったこれだけ。


「耐えられない程の……」

「大きな後悔……」


 店主と双葉さんが順番に言葉を繰り返し、なにかを思い出してみたり、今までの後悔を振り返ってみたりしているのでしょう。

 ちょっとだけ真面目になって話をしてしまったら、お腹が減ってしまったので呆けている双葉さんの所から一本串を貰いましょう。


「そんなの……」


 店主が何か思いだしたのか言葉を出そうとして、でも何も言えずなのか何かしらの言葉を飲み込みます。


「間違えてはいけませんよ?今、何が出来るか考える事も大事ですが、今ではなく後で出来るようになることも多々あります。それこそお金があれば出来る事も増えます。今、出来ない後悔は未来にはお金があって出来る事もあるんです」


 何でもかんでも後悔しろって話なんてもちろんしているつもりはなく、何とも博打を打つような人生をしている気配を店主から感じたので、美味しい鳥皮を勝手に作らせてくれたお礼程度のアドバイスとも言えないアドバイス。


「まあ、そうですね……気に留める程の話じゃないですけど、もし覚えている可能性があるとすれば、お酒を楽しく飲んだ夜、狐に化かされたとでも思えば、案外肩の力も抜けていい方向に向かうかもしれないって程度ですよ」


 暗に、憶える程ではないというつもりで店主に言ったつもりだったのですが、何故かポーっとした顔で仰ぎ見る様な状態の双葉さん。

 そして、さっきから黙りこくってしまった店主。


 静かなうちに、もう一本串を頂いて……あ、熱燗もつけてくれませんかねぇ??




あけましておめでとうございます<__>

本年もよろしくお願いいたします


たまたまの内容が正月に来てしまいましたが……

大丈夫です。

このまま後二話も進めば、ふふっと笑えます。(ネタバレぇ)


お正月なので、新年の抱負とか初○○とかどうしても気負う事が増える時期。


そんな中でも、後悔を出来るだけしないことは難しいので、だったらという話がまぎれました。


肩の力抜いていい場所だと思うので(文字を読んでいる間だけでも)、ここではどうぞごゆるりと。。。

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