表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
72/93

72.はんぶんこ

3/3

本日ここまで


 双葉さんが焼き鳥に出していた金額から、このお店に値段が張っていないのもあって、足りないと言われない程度の金額を用意。

色々とやる気になった私は五円玉を一枚叩き付けるように置いて、湯呑にお水を入れていた蛇口の元へ行って、ポケットからハンカチを取り出して口にくわえたまま丁寧に手を洗います。

 口にくわえたハンカチで手を拭き、店主をお尻でグイっと横に動かしながら勝手に先程の木箱の中から鳥皮だけを取り出します。


「動物の皮全般がそうですが、火を通すと縮みます。その為優しくではなく、ぎゅっと張った状態にしながら、グッと引っ張って……ちょいの、ちょいの、ほい。っと」


 鳥皮はほぼ正方形に近いモノだったので、角の一つを串に刺しギュッと強めに引っ張りながら、三周半。串に回しつけ、ググっと串の上の方に伸ばして反対側の角を上から通して真ん中よりやや上に皮を固定。


「脂がかなり出るのでとてももったいなく、本当はこの脂もかなり美味しいのですが、こういった焼き台なので流れる脂は仕方ないと思って下さいね?後は塩ですが……この時代、モノが何もかも不足していて大変なのはわかりますが、塩をケチったらマズくなります。ケチらずにしっかりとかけないとダメです」


 そう言って、慣れた手つきで私は焼き台の横の方で鳥皮だけを焼き始めます。

 先に焼かないといけないのは最後に止めた部分。ここを固定させたいので、最後に刺した部分を重点的に焼き場の中でも強めの火に見える近くに置き、パチパチと今まで以上の脂の跳ねる音に気を取られないようにしながら、皮を焼きます。

ある程度したところで通常の焼きモノと同じ位置でコロコロと回しながら焼く形に。


 勝手にお店の焼き場を使って鳥皮を焼いて見せているわけですが、私的には先にお金も払い、そこまで勝手気ままにやっているつもりはなく。

 途中までやってから、これを店主に食べさせる事を思い出し、慌てて自分の分を作る為にまたも勝手に他の肉も入っている木箱に手を伸ばすと鳥肉からぺりぺりと一枚分の皮を剥ぎ取って同じ要領で皮だけを巻きつけます。

 何も言われないのをいい事に、勝手に二本目の鳥皮を作り始めた訳ですが、やっとこの異常事態に意識が追いついたのでしょう。


「おい、お前!なに勝手に材料使ってるんだ!!」

「別に汚い手で触れてもいませんし、先にお代も置いたでしょう?」

「にしたってだなぁ……」

「文句がまだあるようでしたら、食べ終わってからにして下さい」


 そう言って、先に焼き始めた鳥皮の一本を勝手にお店の皿の上に置いて店主の前に。


 あまりにも勝手すぎる動きに怒りも忘れたのか、大きなため息を一つついて、嫌そうな顔で店主は焼きたての鳥皮に口をつけます。




 タエさんと一緒に公園に入り、ちょっと一杯飲めることになって一緒の時間が増えたことに喜びを隠せなかったのですが、ついさっきといい、今もまた屋台の店主と何故か少し揉めるような空気に。

 そして驚くほどの手際の良さで勝手に色々と始めるタエさん。

 鳥皮を串に巻き、更に塩を惜しげもなく使うのは見ている分にはいいのですが自分がやられる立場だったらかなり困りそうなモノ。

 そんな一幕、自分はお酒を飲みながら見ていたわけですが、微妙そうな顔のままタエさんが作った鳥皮を店主が食べる事に。

 自分だったら、一も二もなく喜んで食べ、美味しくても美味しくなくても大絶賛して褒める……と思いながらも、昼間の一件を思い出してみれば、多分あの鳥皮も思った以上に美味しいハズ。

 そう考えると、自分の分はどこにも見当たらないのでお願いするタイミングを完全に見失ったと気がつくわけですが、その予想は大正解だった模様。


「なんだこりゃぁ」


 店主が噛みついた時のカリッとパリッとした鳥皮の音、その後にプシュと溢れる脂、口に入れた後の驚き顔は次第に、トロンと頬を緩め目尻が下がって、幸せそうな顔にみるみるうちに変わっていきます。


「鳥皮……だよな?」

「目の前で見ていたでしょう?」

「だよ、な」


 見ているだけの自分がこれほどまで食べたくなるものをまさかこんな屋台で見させられるとは思っていなかったのですが、凄く美味しそうに店主がぺろりと食べきります。


「あの、タエさん?今焼いているそれ……は?」

「えぇと、わた……食べたい感じ、でしょうか?」


 うるうると目を潤ませて見られてしまったら、今更欲しいとは言えない空気なのですが、そんな空気をみじんも感じさせず、さらに言えば居たという存在感も無かったはずの店主が仕方ないという顔で焼きたての普通の焼き鳥を置きます。


「今更これの気分じゃねぇかもしれないが……」


 店主の言う通りなのですが、空っぽの皿も侘しいので手を伸ばそうとすると、タエさんが出来立ての鳥皮焼きの半分ぐらいの所にグイっと爪を立てながら歯で半分に食いちぎります。

 その姿にはしたなさなどはなく、とても気高く見えました。





さて、年内最終話となります。


誰が設定したのか(笑)、次回はお正月のいつもの時間に更新予定。



鳥皮、食べたくなったでしょうか?

あれ、美味しいんですよねー。

お正月とかも欲しいぐらい……。


え?クリスマスにチキンを食べた???

ナルホド……私は食べていないので、鳥皮が今!欲しい!!!(笑)


年内最後のあとがきがこんなわちゃわちゃ、私らしいですね。


次回大安吉日は先にお伝えした通り。

少しばかり早いですが、本年読んでいただきありがとうございました。

また、来年もよろしくお願いいたします。


 <__>  最上品より

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ