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世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
64/90

64.シッソウのさきの夜

1/3

いつも通り、よろしくお願いします


 紫乃さんに自転車を借りることが出来たので、早速後ろへみょーちゃんに乗って貰います。

 伝えるつもりはないのですが、お風呂でゆっくりして私自身の気力もバッチリ回復したのもあって、実はさっきの荷台よりも更にクッション性がよくなっていますが、わざわざ伝える事でもないので、急かすように乗って貰ったら……ギュッとしっかり腰を持ってもらいましょう。


「え、え?腰を?……ギュッと?」

「ええ。紫乃さんもなかなかの速さだったと思いますが、私だと更に早くなっちゃうかもしれないので、振り落とされないようにギュッと強くです」

「は、はい。……ギュッギュッとですね!」


 こころなしか、みょーちゃんは嬉しそうな気がしますがもしかしたら、クッション性の良さに気が付いたのかもしれません。

 そうであるならば、いい事をしたなと私も頬が緩みます。


「では、行きましょう」



 と、紫乃さんの家の前からお店の方向へ結構なスピードでスタートダッシュを決めたのはいいのですが、家の場所が分かっていない事に気が付きます。


「あの、みょーちゃん?お家って、どっちですかね?」

「あ、タエさん……やっぱりわかっていなかったんですね?」

「ええ。とりあえず大通りに出ればいいですかね?」

「ですね。ウチは、入船の方なのでもう少ししたら南下すればいいだけですよ」

「ナルホド。朝の公園から動いたあの道ですね」


 大きな公園があったあの先の方向と分かれば、スピードを再び上げて一気に移動が出来るので、案内された通り大通りに出てから太そうな南下できる道へ移動を済ませてぐんぐん夜を置き去りにしていきます。

 どうやらみょーちゃん、ぐんぐん上がるスピードが楽しいみたいで私の腰をギュッと掴んでいたハズが、ギュギュギュっとかなり強めになり、もっともっとスピードを上げて欲しいと言わんばかりの動きをしてきたので、その期待に応えてさらにスピードを上げてみたのですが、残念ながらスピードを上げ過ぎたみたいでたったの五分も掛からずにみょーちゃんの家の前につくことに。


「はぁ、はぁ、はぁ、は……早……早すぎです」

「いやぁ、風のようなスピードで駆け抜けましたねぇ。楽しかったです?」


 笑顔で確認しようとすると、目をキュッとつむりながら小さな頷きをしてくれるぐらいには楽しかったのでしょう。

 私としても楽しめたというのであれば嬉しいモノで、これだけの速さで目的地に着く事も出来たので、お話をゆっくりする事も出来ます。


「あまり遅いと紫乃さんにまた心配させてしまうので、えーっと……この時間から人様のお家にあげて貰うのは忍びないので、さっき通り過ぎた公園で話しましょうか?」

「え、別に家に来て貰ってもいいですよ?」

「ご家族も居るでしょう?」

「あ、いえ。私は千葉から出て来ているので……その、一人です。ただ、ここのお部屋達はタイピストや電話交換手の人が住んでいるので、あまり騒がしくは出来ない感じ……です」


 時計はないので正確な時間は分かりませんが夜も結構遅い時間に違いはないので、静かに頷いて自転車に鍵をかけて家にあげてもらう事に。


「散らかっていてすみません」

「いえいえ。キレイですよ?」


 そんなやり取りがありながら、家にあげて貰ったらすぐに白湯をだしてもらったのでふぅと一服付くと、気持も落ち着きます。


「占いの話に今更戻りますが、どうやら私との出会いがみょーちゃんにとっては色々な転換点だったみたいでして」

「ええ。見るもの全て驚きの連続でした」

「カードの言葉で言うと、みょーちゃんは売朴者……占い師にもなれるとなっていましたが……」


 あくまでもカードの導きであって、人の未来は人の手で自分の意思で決めるべきもの。

 流れに身を任せるという選択自体も悪くありませんが、主体性を持って選んだ場合の方が人生というのはいい方向に近づけます。



「私、今までも言われるままに人生を生きて来たんです。房総生まれの三女でしたし、男が家を継ぐ時代に女はそこまで喜ばれませんし、二人の姉のような器量よしでもなかったので。まあ、人の運?出会いとかは良いみたいで、ひょんな事から東京に出て女給をさせてもらえるようになりましたけどね」


 みょーちゃんは目をスッと細め、なにかを懐かしむような目で空を見つめます。


「この部屋は、今の私のお城です。……それと、今日の事は多分一生忘れる事の出来ない、私にとっての宝物です」


 ギュッと両手を胸の前で握り込み、その手は強く、冷たく、でも手の中は温かさをもって、大事な何かを離すまいという思いを受け取れるほど。


「色々と聞かれても、話すことが出来ない事ばかりで心苦しくなっても、大丈夫ですか?」


 その強い意志に絆された私は、必要のない再確認をしますが、予想通りに強くみょーちゃんは頷くだけ。


「では……、コレを。いえ、これらを渡しますね」


 そう言って、ポケットから取り出すのはカード、そして多種類の本。

 またも驚きの目でみょーちゃんが見てきますが、私は右手の人差し指を一本立てて自分の口元にシーっとすると、その指をそのまま彼女の口元へ。

 フフッと二人で笑います。




師走も半ば。

早いですよね、12月って。


人によってはさらに忙しくなる時期でもありますから、まあ無理はほどほどに。

……というか、無理している人がこれを読みに来る暇は……無いか。(笑)

いや、小休止で読んでくれるのかしら??

まとめて年末だし読むか。とか、そういうのでも嬉しいんですけどねー。


今回もいつも通りな三話なので楽しんで貰えると嬉しいです。

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