60.キツネと〇〇の円舞曲(わるつ)
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本日もここまで
少しばかりお湯の中で疲れを癒していたのですが、色々とにじみ出るアレコレと一緒にぽろっと出てきたのは、みょーちゃんに占いの結果やちょっとしたお話をしないといけなかった事を思い出します。
「お二人共、まだもうちょっと……お湯に浸かっています……よね?」
「あんまり私、長湯はしないけど……もう少しなら大丈夫だよ」
「私は少しのぼせ気味です!」
まだ入って数分なのに、みょーちゃんは顔を結構真っ赤にしている状態。
「お湯の中でゆっくりお話をと思いましたが……お風呂に失礼って事ですね。お風呂上りに、お話はしますね」
「誰も失礼だなんて思っちゃいないが、公共の場だからねぇ。あんまり大きな声で騒げないし、その方がいいだろうね。っと、みょーちゃん、一度洗い場で水被ってきな。フラフラだよ?」
紫乃さんがみょーちゃんの腕をつかんで、ひょいっと持ち上げて。
みょーちゃんは千鳥足というほどではないものの覚束ない足取りで洗い場の椅子にすわって、ぬるいお湯を頭から被ると、周りに人が居ないのをいい事にぶるぶると頭を振って、まるでみょーちゃんは小型犬のような感じ。
「人懐っこさもあるから、あの子は好かれるんだよねぇ」
「紫乃さんだって、常連さんや他にも色々と好かれていません?」
「……あたしゃいいんだよ。これぐらいがね」
少しだけ含むところもありそうな、少しだけ遠い目に見えたのは、お風呂場のもくもくのせいでしょう。
優しい声の紫乃さんが、確認をしてきます。
「今日も長湯かい?」
「ええ、モチロン。って、言いたいところですけど……」
本当はお店が閉まるまでといえるぐらい長く浸かっていたい所ではありますが、みょーちゃんに伝えないといけない話がある状態。
「昨日と違って、みょーちゃんを家まで送らないといけないでしょう?」
「あー、うん。そうだね」
「もしよければ、一度紫乃さんを送ってから、みょーちゃんを送ってきていいですかね?」
紫乃さんとしては自分を先に家に送るというのがよく分からなかったみたいで、眉をひそめます。
「それだと、タエちゃんが一人で動くことにならないかい?」
「私はまあ、ご存知の通り腕っぷしも、度胸も、この通りありますからね」
シャドーボクシングみたいなことをしようかと思ったのですが、時代的に伝わらないと警告を受け、慌てて両腕をくの字に曲げ力こぶを作るようなしぐさに変えてみたのですが、何故か力強さは伝わらなかった模様。
「そんなに強調しなくても、タエちゃんの方が色々と肉付きがいい事は知っているよ?」
「え、いえ?そうではなく……こう、力強さを……」
たゆんと大きく跳ねる胸に引っ張られるように来たのは、みょーちゃん。
「おおお。お姉さまの……おっ!!」
少し離れたところから、ぬるま湯をかぶっていたみょーちゃんが吸い込まれるように私の胸元へダイブしてきます。
お湯の中に居た私は思っているよりも踏ん張りがきかず、少しだけ後ろによろめきながらもなんとかギリギリ体勢をキープ。
胸の中には幸せそうな顔でホクホク顔のみょーちゃん。
「大丈夫……って、血!!血ぃ!!」
へ?って顔の私に慌てて声を上げる紫乃さん。
ちょっとした騒ぎになって少ないお客さんの目が私の方に向くと、あんぐりと大きな口を開け、鯉の様に口をパクパクさせながら首を小さく左右にプルプル。
何があったのか把握できないまま下を向くと、何故か真っ赤。
真っ赤?
「ん?」
カポーンって、お風呂を上がる他のお客さんが桶を重ねる音が入口の方からやけに大きく耳に残りますが、やっと状況を把握できます。
どうやら、私の胸に当たった衝撃か、あるいは興奮なのか――理由はわかりませんが、みょーちゃんが鼻血を出してしまい、くらくらとしている様子。
そしてその鼻血は私の胸からお腹にかけてタラーっとしていて、まあ、ただの血なので洗い流せばいいわけですが、今いる場所はお湯の中。
慌ててみょーちゃんをグイっと抱え、湯の上から洗い場へ。
ここからは何とも素晴らしい連係プレーで、思わずこの一連の動きに実況が欲しくなるような惚れ惚れする動きが続きます。
まず、私が洗い場まで行きみょーちゃんを剥がし、胸のあたりを真っ赤にしている鼻血を洗い流します。
幸せそうにしているみょーちゃんに対して紫乃さんは容赦なく水が多めのぬるま湯を顔面に連続で三回かけると、後で洗って返すからっ!と私の貸した手拭いでごしごしと顔を拭き洗い、ぎゅっと一度強く絞るとこよりを作ってグイっと鼻に突っ込みます。
このタイミングで、番台にいたお店の人ものぼせた人間がいると気が付いたみたいで、ちょっと横になれるスペースを作ってくれます。
このままだと拭くものが足りなそうだったので、裸状態の今、服の様にポケットは無い訳ですがそうも言ってられないという事で、引き戸の入り口手前まで移動して、ひょいっとちょっとだけ時代に合わないよさげなタオルを取り出し手早くみょーちゃんの全身を拭いてあげます。
一瞬の出来事ですが、チラッと視線を何度も感じましたが気にせず。
紫乃さんが着替え場でみょーちゃんにゆっくり落ち着くまでそのまんまでね?と伝えて、お風呂場に戻ってきます。
「……のぼせたみたいだね」
「ですね。ちょっと冷めちゃったので温まったら行きましょう?」
「だねぇ」
色々となんというか有耶無耶な感じになってしまいましたが、一連の騒動も考えてみると面白いわけで。
お湯に戻った私達は頬を緩ませたまま、温まります。
師走突入ですねー
ここからは、駆け抜けるような一か月
なんでこう、早いんですかねぇ?歳をとったから……だけじゃない気がする!(笑)
お風呂回、楽しめましたか??
書いている分には結構……楽しかった気がします。
まあ、かなり悩みつつ書いていましたけどねー。……いつもの事です(笑)
楽しめたのなら嬉しいです。
続きが読みたくなったら作者的には更に嬉しいです。(笑)
さて、大安吉日は年内あと四回?
そして、年始一発目は大安???アレぇ……???
まあ、いつも通りだと思って頂ければ幸いです。(私の予定に年末も年始も関係はないみたいです(笑))
ではまた次回の大安吉日にお会いしましょう。
本日も読んでいただき、ありがとうございました<__>




