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世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
56/60

56.ほんのり甘い誘惑

2/3


 自転車に跨る女、その後ろに座る女、そして力強くその自転車を押す女。


 一風変わった三人組が夜の街を結構なスピードで駆け抜け、ついた先はいつもの銭湯。


「タエさんって、やっぱりすごくすごいんですね?」

「巻き込まれるこっちは大変だったけどね?」

「で、紫乃さん?お蕎麦の屋台は?」


 ブレーキを掛ける前に、キュッと自転車が急停止したのはタエが力でもって自転車を止めた為。


「……ブレないね、この子は本当に。そこの角を曲がった先の、そこのお店だよ」


 急制動に驚きながら、紫乃さんが教えてくれる方へ向かいます。


 夜の屋台蕎麦というのもあって、赤ちょうちんがくすんだ色でお出迎え。

 日本酒と蕎麦は短冊の様に書かれたメニューで見えますが、屋台の横には油揚げと豆腐も見えるので、ちょっと一杯飲むことが出来るようなお店にも見える。


「なんだ、なんだ、うるさい声がって……紫乃ちゃんじゃないか」

「おっちゃん、ちょっと相談なんけど出来れば聞いてくれない?」

「前置きなしに、相談……だと?厄介事は嫌なんだが?」

「変な事じゃないから、ちょっと美味いモノを食わせてもらうだけだよ」

「美味いモノ?……ウチの蕎麦はそこまで美味くはないぞ?」

「知ってるよ。だから、それを美味しくするんじゃないか」


 屋台のおっちゃんは何を言っているんだ?という顔で眉間にしわを寄せながら睨む。


「紫乃さん、ここは私がしっかりと交渉します」

「え?」


 十分とは言えないまでも、殆ど交渉は終わったと思っていた紫乃は何でタエちゃん出て来るの?って顔で見るわけですが、ちょっとだけここから鮮やかな交渉を女二人と一人だけ居た客が見る事に。



「店主さん?ここはかけ蕎麦、ありますよね?」

「ああ、アンタは……なかなかの別嬪さんだが、かけ蕎麦がどうした?」

「美味しい相談がありまして。特別に持ち込みを許可してもらえませんか?」

「持ち込みだぁ?酒のあてにどっかで買って来たものでも一緒に食べたいのか?それなら、ダメだ。うちの売り上げにならねぇじゃねぇか」


 屋台のおっちゃんは真っ当な事を言います。


「分かっています。酒のあてではなく、かけ蕎麦に持ち込んだものを入れさせて欲しいだけなんです」

「蕎麦に何か入れるんなら、大した味じゃないがきつねがあるぞ?」

「それよりも美味しいんです。それと、ココだけの話ですが儲かりますよ、多分……コレ」


 キランという擬音がタエの目から出るぐらい、眩しいウインク。

 人によっては星が飛んでいたと言われるぐらい、別嬪さんの流し目からのウインクというのは破壊力のある攻撃。

 そんな攻撃を受けてしまったおっちゃんは思わず胸のあたりを抑え、勢いだけで小さく一度頷きますが……ハッと気がつき、慌てて首を左右に振ります。


「ダメだ、ダメだ。蕎麦の屋台だって、儲かるって始めたが大して儲からねぇ。金を掛ければ客は来るかもしれないが、元々料理をやっていた人間でもない俺にはこれより上なんてみえねぇんだよ」

「だからこそ、です」


 そう言うと、スッと音もたてずにおっちゃんの横へ移動して耳元でごにょごにょと説明をするタエ。

 酒を飲んでいた客は、キスの一つでもしたように見えたのか大笑いしながら酒を勢いよく煽り、交渉をジッと見ていた女二人は大きな口をポカーンと開けたまま固唾を見守る。


「損はさせませんから、かけ蕎麦4つお願いします」

「本当だな?」

「ええ、私の分のコロッケを半分に分けますから」


 そう言うと、眉間にしわを寄せたままおっちゃんが引き出しを引くと中にある蕎麦を取り出し湯の中へ。

 蕎麦を茹でている間、さっと一度器もかるく湯を通して温め、蕎麦が茹ったところで雑に水気を切って器に入れるとたっぷりのつゆを掛けます。


「ほらよっと。しっかり金は貰うからな?」


 おっちゃんがかけ蕎麦を4つ机の上に並べます。


「美味しかったら、きつね蕎麦と豆腐、あとお酒も一杯下さいな?」

「……どんだけぼったくるつもりだ、全く。美味かったら、な?」


 そんなことないだろうという目でおっちゃんが私を見てきますが、あえて今回はしっかりと冷めたコロッケが用意できている状態。

 熱々のつゆの中に本当は丸々一つのコロッケを入れたいところですが、おっちゃんと約束したのは味をみてくれという話。

 その為、半分にコロッケを手で割って自分の分とおっちゃんの分を用意。


 ついでというわけではないのですが、ちらっと一緒に来ている二人に念の為確認をしたら、同じでいいと返事が返ってきたので二人の分は丸々一つのコロッケをそのまま入れて、屋台のかけ蕎麦がコロッケ蕎麦に大変身。



「コロッケ蕎麦はコロッケそのままの方が美味しいのにっ!!」

「でも、割れているなら、しみこみやすい分中から旨味もたっぷり出るから一口だけ先に齧って、あとはゆっくりスタイルがいいんじゃない?」

「わかめは無くても仕方ないけど、おっちゃんネギも入れてくれないなんてケチ」

「美味しいって認めてくれたら、おかわりがあるんでしょ?しっかり認めさせないと!!」


 私の中のみんなもやっと出てきた蕎麦に大興奮。

 半分のコロッケは先行投資と思って、早速いただきましょう。




ウインク……できますか?


行為的な出来るかどうかと言われると、多分片目をつぶる行為なので出来る気がしますが「ウインク」かと言われると微妙。

当たり前ですが、アイドルじゃねーんで(笑)そもそもする機会もありませんけど。


アニメ的な演出の「キラッ」ってあれ、凄いですよね。


そんなことが出来ちゃう……タエさんも凄い???

あれ、自分の知ってるキャラなんですけど、予想以上にスペック……高い???(混乱中)


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