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世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
55/60

55.洋食駅……次は蕎麦屋台

1/3

いつも通り……となりそうです


 大将とおかみさんにしっかりと頭を下げて挨拶をしていると、昨晩同様に紫乃さんが自転車に跨って戻ってきます。

 そして、少し悩みながら言います。


「よく行く蕎麦の屋台のおいちゃんなら、許してくれるはずだけど……たまーに気難しい時があるから先に頭下げておくね?お店の位置は昨日の銭湯の近くだから二人はゆっくりでいいから風呂屋前で待っていてくれるかい?」


 先手を打って交渉をしてくれるみたいですが、私のお腹はそう待てる状態でもなく。


「交渉が必要でしたら、私がしっかりと伝えますのでえーっと……」


 そういえば占いも中途半端でしたが、女給さんの名前を伺っていなかった事に気がつきます。


「お姉さんのお名前は?」

「私ですか?私は妙子みょうこです」

「そそ。みょーちゃんよ。タエちゃん」


 紫乃さんは名前を伝え忘れていた事に今更ながら気がついたという感じでみょーちゃんの頭の上に手を乗せながら、教えてくれます。


「何とも乙な名前ですね。えーっと、紫乃さん?みょーちゃんさんを自転車の後ろに乗せられません?」

「みょちゃんで十分ですから、さんはいりませんよ?」


 みょーちゃん、さん?みょーさんだと変で、みょーちゃんだとちょっと気軽過ぎる気がしたので、合わせてみたつもりだったのですが、気にしないでいいと言われてしまっては分かりましたとしか言えません。

 そして、紫乃さんは笑顔で大丈夫という返事。


「え、あの、でもそうなると……」

「ああ、みょーちゃん?タエちゃんを心配しているわけね?」


 紫乃さんは昨日一緒に銭湯まで行っているので、私の体力が凄い事もわかっているのですが、みょーちゃんは分かっていないわけで。


「タエちゃんって凄いのよ。むしろ私達の方が置いて行かれちゃうかもしれないぐらいだから、急いで後ろに乗ってくれる?」


 紫乃さんに急かされてみょーちゃんが目を白黒させながら慌てるのですが、私は二人のそんな様子を見ていてハッと気がつきます。


「……あぁ、私の気遣いが――まだまだでしたね。すみません」


 そう、私が言うと何故か二人がキョトンとした顔。


 あらあら、呆れさせてしまうなんて……本当によくないですね。


 自転車の後ろのところにそのまま座ろうとすれば、お尻が痛くなってしまうのは当たり前。時代的にも高性能なクッション素材などは無い訳ですが、こんなこともあろうかと……私のポケットには荷台用に使える何度も巻いた手拭いが用意してあります。


「これを座るところに敷いて、その上に腰掛ければお尻も痛くなりませんよ」


 これで問題ないでしょう?という目で二人を見たのですが、まずは何を置いたのか確認するように紫乃さんが触り、とても柔らかいモノが置かれた事に驚き、大きな頷きをみょーちゃんにすると、すぐに試そうとみょーちゃんがとても行儀よく自転車の荷台に腰掛けます。


「はわわー。これなら、お尻も痛くないです」

「私のサドルにも欲しいぐらいいいモノがあったんだねぇ」

「あ、でもでも、本当に大丈夫なんですか?」

「ええ。こう見えて私、足には自信があるんです。勿論お二人の分のコロッケもしっかりと保護しておきますから、コロッケは無事ですよ」


 いきなりコロッケの話をした事に驚く二人。

 あれ?コロッケの心配をしたんじゃないの?という気持ちだったのですが、二人はそこじゃないよ?と顔を見合わせて笑います。

 そんな私のお腹がまたもくーといい音を出す。


「えーっと、お腹も減っているので早く行きましょう?……銭湯の近くでしたよね?」

「そうだよ、タエちゃん。私も偶に仕事終わりにちょっと小腹が減る時があって、そういう時とか失敗しちゃった日はお風呂を済ませてから、一杯飲む事もあるお店だからまあ……頼み込めば何とかなるはずさ」


 そんな会話をしつつ、私もいつもより強めに地面を蹴って昨日の紫乃さんが自転車を漕いでいた時と同じぐらいのペースを維持するように走り始めたのですが、紫乃さんは後に一人分重さが増えている状態。


 昨日よりもペースはかなり遅めですが、もう少しスピードに乗ればどうにかなりそう。


 ただ、このペースだと私のお腹の方が我慢できない状態になりそうだと気がつき、我慢が出来なくなってやる事は一つ。


「私のお腹がペコペコなので、ちょっと押しますよ。紫乃さん、しっかりとバランスを取って下さいね!」

「押してくれるのかい?助かる……よって、は、早いっ!」


 グイっと強めに力を入れて、自転車の荷台を押すと自転車のスピードは一気に加速。

 夜の街をスイスイと女三人が笑いながら結構な速さで街を抜けていく様子はあまりない事で、酔っ払いや帰宅途中の人達が好奇な目で見て来ていますが、そんな事を気にする余裕はありません。


「さあ、私のコロッケ蕎麦が待っているのでガンガン、いきますよー!」


 気合を再び入れ直して、グイっと押すと苦笑いしているのはみょーちゃん。


「タエちゃん、早いっ!早いって!!」


 さらに加速すると、街並みは線の様にながれ、フワッと二人の髪からいい香りが。

そんな私とは正反対に、必死にバランスをとっている紫乃さんはちょっと大変そうですが、私のお腹が減り過ぎなので、我慢してくださいっ!!




今回は話が正直進みませんでした(ごめんなさい)


一応、いい感じに落ち着くところまで……行けたと思いますが。

まずは舞台が洋食屋さんから変わるところまで。


お腹が減っている時って、思っていた以上に力が出る事……ありませんか?


お腹が減って力が出ない……某アンパンな妖精さんのセリフが頭をよぎりますが、人間なのでそうでもなかったり。

すぐそこまで行けばコンビニが……とか、いつも以上のスピードで走っている気がします(笑)


……単に食い意地はってるだけですかね(笑)


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