表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
54/60

54.くーふくの月

3/3

セーフ!!(笑)


 この女給さんに私がタロットカード占いを教える事は分かったのですが、連続して占って説明もしていたのもあって、予想以上に時間が経っていたみたい。


「カード占いの世界っていうのも、……広いモノなんだね?」

「ええ。彼女にはその素質があるって事みたいです。本当は、この後ゆっくりと占いについてお教えしたい所ではありますが……」


 時計を見れば、そろそろ帰り支度をするような時刻。

 お店にあまり迷惑を掛けるわけにもいかないので、どうしようかと考えていると、ぴょこんと手を挙げたのは私の内側のみーちゃん。


「カードは、あげればいいけど占いの仕方とカードの意味、言葉の選び方は学ぶしかないから、それはちゃんと教えてあげないとダメ。どうしても時間が無いなら……ノートに書くか、言葉を覚えるか……。手ほどきもしてあげないといけないから、パパっと終わらせることは難しそうよ?」


 真面目にみーちゃんが言うのですが、どうやら別の二人は我慢の限界。


「おーなーかーがーへーった!」

「蕎麦コロッケ食べたい!」


 ふーちゃんがリズムよく言うと、つっちーが具体的なリクエストを続け、その言葉に最も反応したのは……何を隠そう私。


 くーー


 丁度一段落ついて、客席も静かになっていたところ。大きすぎないけど、みんなが聞こえるぐらいのちょうどいい音が。

 そして、音の主をみんな見ようとして、視線が一気に集まる事に。


 今更違いますと言える状況でもなく、恥ずかしくなりながらも頬を赤く染めてみますが噴き出したのは紫乃さん。


「ぷっ」


 口から洩れた笑い声に釣られて周りの女給さんも大笑い。

 ひとしきりみんなで笑いあった後、厨房からひょっこりと顔を出したのは大将。


「足りなかったか?」

「……そういう訳ではないと思いますが、がんばっちゃったら、お腹が減りましたね」


 ちらっと大将はおかみさんを見ると、おかみさんも何かを察していい音で手を叩いた。


「今日の所は占いも終わりだろう?そうしたら、今日はお開きだ。電気代もタダじゃないんだ、――それでいいかい?」


 おかみさんが遠慮気味に私に確認を取ろうとしてくれているのが分かったので、ちいさく「大丈夫です」と伝えると、そこからは目にもとまらぬ速さで次々と女給がお店を後にし始めるのですが、月のカードが出た女給さんと紫乃さんだけは残っていて上目遣いで私を見てきます。


「あの、私の結果は?」

「結果?……あっ、月の逆位置の説明……ちゃんとしていませんでしたね?」

「いえ、ええと、多分……はい」


 驚きのあまりしっかりと説明をしていなかったことを指摘されるまですっかりと忘れていたわけですが、もう帰り始めている人も居る中でという訳にもいかないでしょう。


「偶には一緒のお風呂でも、どう?お風呂で大騒ぎしない分には怒られないわよ?」

「あ、じゃあ、一緒に行きます」


 紫乃さんがいい感じに話しをまとめてくれて、ホッと一安心するとまたもお腹がくーと鳴り、ちょっとだけ恥ずかしさが戻ってきます。

 帰り支度とはいっても、前掛けを外すぐらいとやる事はそこまで多くないので、ぱぱっと済ませたらすぐに帰れる状態に。

 自分だけでなく、紫乃さんと女給さん……名前を後で聞かないといけませんが、二人もすぐに帰れるようになったみたいで、大将とおかみさんに挨拶をして帰ろうとすると、紙に包まれたものを大将が渡してきます。


「タダより高い物はないからな。御守りまで貰って、給料を普通に出すだけじゃ貰いすぎだ。そう多くは無いが、コロッケぐらい食べてくれ」

「おー、太っ腹ぁ」


 紫乃さんと女給さんの声が重なり、揶揄いますがその目はしっかりと紙に包まれたコロッケに向いたまま。そして、お腹の減った自分には何よりもうれしい現物支給。


「お風呂も凄く楽しみですが、持ち込み大丈夫なお蕎麦の屋台とか知りませんか?」


 紫乃さんに確認すると、何処も持ち込みは許してくれると思うが、何をするつもり?と聞いてきたので、かけそばにコロッケを入れると伝えると驚くのは残っている全員。


「かけ蕎麦にコロッケ?罰当たりな食べ方にしか聞こえないよ?」

「食べたらわかりますよ。揚げたてですと、尚更ですがサクサクのコロッケ食感も楽しめますし、すこしそばつゆで柔らかくなると、天ぷらとは違ったアブラの美味しさがじんわりとしていて、つゆまで美味しく頂けるんです」


 私の力説に目から鱗のような表情で大将も口をパクパク。

 そして、そんな話を聞いちゃったなら食べるしかないだろうと紫乃さんと女給さんがじーっと視線の先にあるのは紙に包まれたコロッケ。


「三つ、入っています?」

「当たり前だ。ただ、周りにはわざわざ言うなよ?」

「もちろんですよ」


 大きな喜びを女性二人は抱き合う形で表現しているのか、両手を繋いでくるくるとその場でまわり、数回転の後紫乃さんは「自転車取って来るっ」と浮かれたまま、パタパタ音を立てるほどの勢いで店を出ていく。


「蕎麦とコロッケ……なんかちょっと贅沢だねぇ」


 おかみさんの言葉に頷きますが、蕎麦の屋台まで我慢……できますかね?





どうやら間に合ったみたいです。


食べた事、ありますでしょうか?コロッケ蕎麦。

最近は……ああ、コンビニでも出してくれていた気がしますが、ちょっとだけ面倒でもコロッケを買って、かけ蕎麦に入れると美味しいんですよねー。

と、通ぶってみますがつい最近まで食わず嫌いでした(笑)

いや、天ぷらでいいじゃん?なんでコロッケ???って(笑)


立ち食い蕎麦のお店だと結構定番ですが、時代的にはちょっと先取りでしょうか?

このぐらいの時代からどんどん食文化も良くなっていくので、ちょっと調べてみるのもなかなか楽しい時間に。


さて、今日も読んで頂きありがとうございました。

次回、大安吉日にまた更新を頑張ろうと思います。


良い大安吉日をお過ごしくださいませ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
コロッケ蕎麦…好きです。 関東から離れるとあまり見かけないので、 自力で組み合わせてそれっぽくするしかないですが。 実はかき揚げよりコロッケの方が好みだったり(ᕑᗢूᓫ∗) 時代背景難しいですねぇ。…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ