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世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
53/60

53.導かれた、カード

2/3

もう一話……あるはずです


「昼間の休憩の時、タエさんの事を紫乃先輩から聞いて。どんな人なんだろうって、ワクワクしていたら、何事もテキパキこなして。さらに占いまでしてもらえて。あ、今日のお味噌汁すっごく美味しくって、食べた感じがいつも以上にあって、えっと、えっと、凄かったです!!!」


 後半になるにつれ、喋りが早くなっていくのは恥ずかしさと、照れ隠しなのでしょうか?

 あまりにも慣れていない状況に、ワタワタとなり、体が勝手に恥ずかしがります。でも、私に対して誰からの突っ込みもなく、ぐっと気持ちを抑えてみたのですが目だけはそうもいかずに、キョロキョロとさせながら何か良さそうな答えが出ないか、必死に頭を悩ませます。


「私達に憧れるなんて、中々この子いい目をしているわね?」

「ええ、本当に。占いの通りであれば、私たちとの出会いは彼女の運命よね?」


 頭の中でも二人は真面目に。


「そんな事より、お腹減ったかも」

「パンの一つでもくれたらよかったのに」


 残りの二人は変わらずで、二つの派閥という感じですが褒められたお味噌汁の話でうち二人の食欲を再び刺激されてしまったみたいで、何か食べられるモノが無いか探し始めるような不穏な動きも。

ですが、本人であるタエはかなり慌ててしまっているみたいでそんな事には気がつかず。


「えーっと、うーん……、私に……何を見たのでしょう?大した何かは多分……していないと思うのですが」


 考えあぐねた結果、聞くのが最も早いと結論づけて、恐る恐る確認をしてみます。


「お料理もそうでしたけど、何よりその占いが……。カード占い?って言うんですか、コレ」


 女給さんが気になったのはどうやらカード占い。

 食事も気になるのはこの時代ですから当たり前だと思うのですが、占いに興味ですか。


「折角だから、この占いについてみんなも知りたいから教えてくれるかい?タエちゃん」


 おかみさんが周りにも聞こえるように言うと、一番後ろに居た大将まで大きな頷きを見せてきます。



「この時代、海外にはもうタロットカードはあるけど、日本にはまだそこまで広がっていないものだから、説明は気を付けてね?」



 そんな事を言って注意をくれたのはみーちゃん。

 どうやら色々と心配してくれているみたいで、その心配しようとしてくれている気持がじんわりと私に伝わってくると、やっと私の慌てていた心もゆっくりと焦りをほぐしてくれます。


「えーっとですね、コレは海外にあるタロットカードという占い専用のカードです。本当はこんな感じに、かなりの枚数がありまして……全部で78枚を一つのデッキという単位で呼びます」


 さっきまで見せていた22枚の上に手の平をかざし、手の平からパラパラと残りの小アルカナを司る56枚を落としていくと、目の前のマジックに再び皆さんが思わず身を乗り出すほど驚きます。


「ただ、占いの内容が多岐にわたるので、分かりやすく、簡単に示せる大アルカナ……最初の22枚だけを使ってさっきみたいにいつもは占っているんです」


 喋りながらデッキをまとめ、カードを束の状態に戻すとペラッと1枚めくったところに出るのは、私の予想とは違って正位置の『世界』のカード。


「あれ?愚者のつもりだったのですが……」


 と、一人ごちても見ている皆さんは何のこと?って顔のまま。


「1枚1枚に色々な意味が含まれていて、ちょうど今さっき目の前で皆さんも見ていたように、その意味は2つの方向を持っていて、正位置と逆位置と2種類の向きによる違いがあります」


 喋りながらもう1枚めくるとそこには逆位置の『愚者』のカード。


「先程皆さんが引いたような前へ進むという気持ちを表す戦車もそうですし、この愚者というカードは見た目通り何も持たず、とても自由ですが今は逆位置。自由の反対である責任の放棄や、計画性の無さを意味し、とても危ういカードでもあります」


 なんとなく絵柄と経験からの直感が働き、雰囲気を掴めるのでは?と優しく諭すと、ニヤリと笑顔の先輩女給達がいい顔に。


「次にもう1枚、先に出た世界のカードはこれまた完璧であったり、幸福であったり。おおよそいいとされる、……そうですね達成なども含んだようなカードですね」


 私の言葉に頷きながらおかみさんがカードを持ち上げてみると、輪の中にいる狐人がにこりと笑いかけ、ギョッと驚いたおかみさんはおもわず手からカードをぱさりと机の上に落とした。


「と、まあこういう感じのカード占いになるわけですが……」


 少し考えながら、おかみさんが慌てて落としたカードを持ち上げ軽く読み取ると、どうやら彼女の完璧な未来は売卜者ばいぼくしゃの気配。

 私とここで出会う事は彼女の人生にとってあって当たり前。

 寧ろこの感じは、私が彼女に引き寄せられたとも思えるわけで。


「このお店に私が引っ張られたのは――あなたのお陰だったんですね?」


 キョトンとした顔の女給さんですが、どうやら彼女の導きのお陰で私はココにたどり着く運命になったようです。





難産に次ぐ難産(笑)


占いの世界ってなんというか、スピリチュアル?神秘的?なイメージがありますが、迷いを晴らしてくれるという意味では、凄く心強いモノなんだろうなーって勝手に思っています。


それ故に、傾倒しすぎる人が出て来るのも仕方ない……のかなぁ。とも。


ただ、私の中の理想的な……傾倒しそうな人は突き放し、迷う人に光を照らすような占い師を見てみたいという感じで、こんな形に。


売卜者と書いて「ばいぼくしゃ」とルビを振っておきましたが、占い師の事です。


何となく、昔の言葉でこう……格好つけてみようかなって。。。(ばらしている時点で格好がついてないですけどね(笑))



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