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世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
50/60

50.見えてるものと見えないあしもと

2/3


月のカードをそっと右手で持つと、カードを引いた女給さんの――思いを受け取る。


 そこには、周りに流されながらも曲げられない信念や、時代という大きな波に飲まれながら、必死に抗う気持ちの欠片が無数にみられ、色々なモノを抱えていながら、負けずにもがき続け、場合によっては溺れそうな程の辛さを秘めているのが伝わってくる。


 ……ただ、流石はおかみさん。


 そんな迷いを抱えていても、折れない心と強い意志を内包している事をしっかり見抜いている。

その結果の月の正位置だと感じていたが、どうやらそれだけではないみたい。

魔法を使った(仕掛けのある)カード占いではあるものの、今この瞬間もこのカードが自分の意思で、正逆をひっくり返そうと足掻いている。


 ここからの一連の光景に……女給は息を呑んだ。

ただ、タエにとってはいつものこと。


「月の正位置。意味は不安、迷い、恐れ、時代的にも先行きが不透明で私がいつも占っている時に特によく見るカードです」


 実際、昼間の占いで男の人達を見ていると数回に一回はこのカードが出てくる事も多く、その人に合ったアドバイスが必要で、人の悩みをたった一言二言でどうにかできる程人間は簡単に出来てはおらず、私を散々悩ませているカード。


「月の下の方に居る、二匹は狐で見た目の通り。凛としている知性と吠える躍動的な野生を表しています。さらに下の水辺にいるのはアナタの不安を表すザリガニ……なのですが、どうやら私の読みが――違っていたみたいですね」


 私が語り始めてからもカードの中の図柄は躍動を続け、ついにはザリガニが両手を強くあげると、下から水がざばーッと昇り、図柄を水浸しにしながら上下を大きくひっくり返す。


「あなたが選んだ正しいカードは、月の逆位置。先ほどの意味をひっくり返した、安定、迷いが晴れ、見通しが立つという希望に近いとても力強いカード」


 正逆ひっくり返ったカードの絵柄達。水浸しの後、上下逆さまになったことで自分の位置が分からなくなり、混乱しながら、あるべき位置へ。その中でも野生を司った狐はひっくり返ったまま混乱したままですが、知性を司った狐はしっかりと力強く月を見上げる眼差しは強く、この女給さんの知性の高さを表しているのでしょう。

 少しだけ面白いのは一番上の自らひょっこり出ているひっくり返ったザリガニ。上下が逆さまになっているのか水にぶら下がるような形になり、そして月も水をかぶって心なしかさっぱりした表情に見える程。


「……何か、迷いが吹っ切れるような出会い、もしくは不安を吹き飛ばすような強烈な何かを見たりした最近の記憶はありますか?」


 そんな言葉を女給さんにかけてみると、ブンブンと髪の毛が邪魔と言いたくなるぐらい大きな頷きを返し、更に力強い目でもって私をジッと見て来る女給さん。


「では、その出会い、もしくはその何かがアナタを照らす光ですね。それについて何か覚えや特徴はありましたか?」


 穏やかに、でも否定をせずに言葉を優しく掛けるように聞いてみるのですが、何故か周りの空気がより一層穏やかに。

 あまりにもその生ぬるい空気が不思議に感じ、一番近くにいた紫乃さんにそっと声を掛けてみます。


「あの、紫乃さん?なんか一気に空気が変というか生暖かいものに変わった気がするのですが……」

「そりゃあ、そうでしょ?」


 何をこの子は言っているんだ?と言わんばかりの顔で返事が返ってくる。


「えぇ、私の占い……おかしかったですか?」

「いいや、全くおかしくはないよ。でも、今までだって凄かったけど、たった今、それ以上のモノをみんなが、目の前で見たからね?」


 本当にこの子は手が焼けると言わんばかりの目で滔々と紫乃さんが言葉を零す。


「カードの図柄が変わる程の強さを彼女は持っているわけですからねぇ」

「……そうね」


 あれ?紫乃さんが今度はブスっと本気?と言わん顔に。


「正位置が逆位置に変わる程の心意気の強さなんて、このお店の人ならではの力強さですよ。それに私の予想は皆さんが戦車と予想していたので、頭の中もごちゃごちゃとこんがらがって、ちょっとだけ私も冷静さを失う程でしたからね」

「そうは見えなかったけど、とりあえずこの子の占いは今の所で終わっていいのかい?」


 すっと会話に入ってくるのはおかみさん。

 終わりでいいのかと言われると、もう少し伝えないといけない事がありますが、出会った人の事やどういう事が彼女にとっての不安解消につながったのかを確認しない事には話が前に進まない状態。


「この人の衝撃の出会いと出来事を確認して、それにまつわる話を確認してみない事には……」

「それだったら、すぐに分かるから問題はなさそうだよ?」

「それは助かりますね」


 どんな出会いをしたのか、また、どんな衝撃を受けるようなモノを彼女は見たのか。

 その内容を聞けばいいアドバイスも出来ると思うので、しっかりと確認をしたうえでいいアドバイスを授けましょう。



書いていて自分でも思ったのですが、こんな占いしてもらってみたいなーって。


マジック的な視覚的にも楽しめて、内容はしっかりとした占いで。

先をしっかりと見通してくれるなんて……。

うらやましいっ!!!(笑)


いや、自分で書いたキャラクターなんですけど、現実に居て欲しいです。

チラッと遊びに……来ませんかねぇ?(笑)


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