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世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
47/60

47.船長夫婦

2/3


 本日最後のお客さんを全員で丁寧にお見送り。

 いつもと違いすぎる空気にお客さんがすわ、雨か?と勘違いする程。その様子が可笑しくて、きょろきょろしているお客さんの後ろ姿は数分の間の語り草に。

 そして、お客さんが帰った後は私達の時間。


「皆さん順番に占いますけど、まだ食事が終わっていない人も居るので先におかみさんと大将、いえ、お店の今後を占うのが先でいいですか?」


 確認をすると、寧ろそうするべきだと言わんばかりに女給さん達がキビキビと動く。


「大将、早く早く」

「おかみさんも、ほらほら」


 そういって何かしらの作業をしている二人を無理矢理連れてこさせられた二人。客席に座るように促され、席に着く二人に私が苦笑い。

 その様子が面白かったみたいで、おかみさんと大将も思わず苦笑いを返す。

そんなことお構いなしと急かしてくる先輩女給さん達。

私は逆に勿体ぶるようにポケットの中からひょいとカードを取り出します。


「私が昼間やっているのはこのカードを使った占いです。本当は一人ずつなのですが、お店の事みたいですからお二人でお願いしますね」


 そう言ってカードをバラバラに机の上に広げ、二人にカードを混ぜ合わせて貰います。


「お二人で一枚を決められますか?」

「一枚だね?」

「ええ。もし意見が合わなかったらもう一度混ぜ、それを繰り返し、二人の意見があった一枚を占います」


 二人は一度見合ってから、両手を使ってカードを混ぜ、指を差す形で何度か揃わない事があり、四回目にピタリと一枚のカードを選びます。


「このカードですね」


 ゆっくりとめくるとそこに出てきたカードは正位置の皇帝。

 狐耳の上には豪華な王冠があり、血色のいい笑みをたたえ、がっちりとした鎧と明るい色に包まれたカード。


「なんか偉そうなカードだね?」

「ええ。皇帝というカードです。意味としては安定や確立といったところですね」

「安定に確立」


 大将もジッとこっちを見ながら私の言葉を反芻する。


「お店の今後を占った結果として言えるのは、順風満帆ですね。この結果が出た所をみると、意見が合わなかった他の三枚も似たようなカードで揃いづらかった気がしますね」


 ホッと一安心した顔になるおかみさんと、どういうことだと聞きたそうな大将。


「具体的に説明をすると、しっかりと基礎が出来ている。お店の舵がしっかりととれているという感じですね。大将の作る料理の味、おかみさんが育てて指示を出している客席の空気が上手く連動しているって感じで、分かりますかね?」


 出来るだけ分かりやすく伝わりやすい言葉を使って説明をしたつもりですが、今度は伝わったみたいで、大将も大きく頷きさっきも見た小さめの拳を握る動き。


「と、まあこういう感じにお悩み、方向性を占って……あ、出し忘れていましたね」


 ポケットから出てこないような大きさの柊の枝を取り出し、枝から一枚葉っぱをもぎり、ぎゅっと目の前で握り込み、スッと手のひらを返しながら広げた手の上には――白い御守りが一つ。


「どうぞ。いい事が続き、悪い事を断ち切る御守りです」


 二人の目の前に突然出てきたように見えていたみたいで、その御守りを恐る恐る二人の指が受け取ります。



 シンとした空気が客席を包み、静かな空気のまま数秒が過ぎた後沸き起こったのは何故か拍手。

 一人がパンパンと大きめの柏手をすると、つられるように周りの女給さんも拍手をはじめ、店内が一気に沸きます。


「こんなに凄い占いなのかい。いっちゃあなんだが、もっと胡散臭い何かかと思っていたから、……びっくらこいたね」

「さっすがタエちゃん。この美貌で更に手品みたいなだけでもお客が寄ってくること間違いないのに、御守りまで貰えるなんて。男連中が放っておかないのも頷けるね」


 おかみさんと紫乃さんが大絶賛。拍手の音が小さくなるにつれて、女給さん達の声が大きくなります。


「流石に一人ずつは無理って言っていたけど、どういう形でも占って貰えるのだったら、十分よね?」

「あの子、今日休みだけど……明日、私自慢しちゃおうかな」

「私は、占いも嬉しいけどあの御守り欲しいかも」

「「「わかるー」」」


 女三人寄れば姦しいと言いますが、三人どころではないのでうるさいに近い感じ。

 ただ、そんな中黒一点の大将は、御守りをボーっと見つめたまま。


「大将って信心深いから、嬉しいの……よね?」

「多分ね?」


 そうだったのかというような話がぽつぽつ聞こえますが、心ここにあらずといった感じの大将を先輩女給がぐいぐいと力で押す。


「大将、大将、次は私達だから……ほら、どいて。どーいーてってば」


 ガタイがいい大将は女給二人に押されてもピクリとも動きませんが、押されて触られ、ハッとしたみたいで少しだけ頬を染めながら、すっと立ち上がると店の奥の方へ。


「さ、大将も動いたから次は私達よね?」

「どうやるの?」


 期待の眼差しは強めの圧を感じますが、裏技でどうにかここを切り抜けましょう。




ネタバレなタイトルが個人的には「ふふっ」となるので好きなのです。

でも、読み終わった後に「そういうことだったのか」と分かるタイトルもかなり好きで。


今回はそういう感じにしてみたつもりですが……

果たしてうまく行ってるのかどうか(笑)


作者としては上手くいってるつもりなんですけど、結構つもりで終わる事もしばしば。


ままなりませんねぇ(笑)


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