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世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
46/60

46.はやい店じまい

1/3

本日もよろしくお願いします


 賄いの時間が終わり、私も女給仕事に戻る。ところが――客席の空気がさっきまでとは違う。

ソワソワした緩めの空気とピリピリした張り詰めた空気がないまぜになっていた。

 それは私だけではなくおかみさんも感じている様子で、更にはお客さん達も何かを感じているみたいで、美味しい料理を食べているにもかかわらずそそくさと出るお客さんまで。


「これはもう、今日はダメだね」


 お酒の追加を貰いに厨房に戻るとおかみさんが頭を振った。


「今日は、ダメですか?」

「ああ、タエちゃんが悪い訳じゃなくてね。この通り皆の気が気じゃないんだよ」

「気が気じゃない?」


 そう言いながら、戻ってきた女給の首根っこをまるで野良猫を掴むようにひょいっと持ち上げたのは大将。


「占い?が気になるんだろう?それとも、今日の賄いが美味しすぎたか?」


 先輩女給に確認するように大将が問うと、笑顔に。


「もっちろん。賄いの味噌汁が具沢山になるし、美味しくなるし、さらにこんな時代でも行く末に光を照らしてくれるって、言われたらね」

「……行く末に光を照らす?」

「タエさんの占いっていうのは、未来を見通すって聞いたよ?」


 何の話?って顔をしますが、後ろの方で首をひょいっと引っ込めて、この場を後にしようと踵を返す一人の女給。

 それを見逃さなかったのはおかみさん。大将とは対照的にぐいっと首根っこを掴まえた。


「噂の“もと”は、どうやらこの子みたいだねぇ?って、こんなんじゃお客さんにも申し訳ないから、ほら、お前たち暖簾を下げて、最後のお客を出したら順番だよ?」

「……この店や俺達の事もいいか?」


 大将が捕まえていた女給を客席に行かせ、厨房に戻る道すがら、ぼそっと確認をしてきたので、頷きだけを返すと意外にも右手で小さく拳を握る大将。

 もしかして、占いとか……好きなのかな?って思う一瞬でしたが、確認するよりも先に奥へ入ってしまったのでそのままに。


 そこからの数分間は何とも素晴らしいもので、店内はテーブルに残っていた食器が一気に厨房に戻って来るのですが、厨房に戻ってくるスピードと洗って拭き上げて棚に戻るスピードが全く一緒。その為滞ることもなく、まるでベルトコンベアのように食器と人がくるくると回る流れが出来上がります。同じタイミングで外に出た女給は暖簾を下げて、店内に残っているお客さんにそっとなぜか耳打ち。

 男の人によっては少しだけ頬を赤くしているのは、酔っているからなのか耳打ちされたからなのか。

 耳打ちをされた男性たちも何度か頷きを返すと、勢いよく残っているご飯をかきこみ、酒をグイっと飲み干すと「お勘定」と言いながら席を立ちます。


「はぁ、全く。いつもこのぐらいキビキビ動いて欲しいもんだけどね」


 おかみさんは苦笑いしながらも、統制された動きに感心こそしつつも呆れていて、思わず私は聞いてしまいます。


「能ある鷹は爪を隠す、というやつですか?」

「いや、どちらかと言えば、弘法筆を選ばずかねぇ」


 その言い様はとてもよく見ているおかみさんならではの優しい顔。


「流石の慧眼、ですね?」

「まあね。っと、この後も忙しくなるからタエちゃんは準備を先にしておくれよ?」

「ええ。ちょっとだけいつもとは違う形になりますけど、時間はあまりかけないでどうにかする方法、考えますね」


 私の言葉に驚いた様子のおかみさん。


「そんな事、出来るものなのかい?」

「こんなこともあろうかと、裏技がありまして」


 と、言ってはみたものの、裏技なんてもちろんあるはずもなく。この言葉は完全に勢いで口からぽろっと出てしまっただけ。

 ただ、私の言葉に笑顔を向けてくれたおかみさんを裏切るつもりはもちろんありません。



 いきなり始まった、脳内の緊急会議。


「で、どうする?」


 脳内でひーちゃんが確認すると、尻尾をピーンと挙げたのはふーちゃん。


「風を使って、頭を撫でる?」

「それのどこが占いなのよ?」

「えーっと、神の使い?」

「占いはだから、どこなのよ」


 ひーちゃんとふーちゃんの二人漫才が始まって、どこが面白いのか分からないという顔のみーちゃんと大爆笑のつっちー。

 そのわちゃわちゃが若干うるさく感じてきますが、一気に占うとなれば何かしらの方法は使わないといけないわけで。


「ココは私達が力を合わせて、飛び出しちゃう?」

「それは、流石にダメでしょ?力だけ乗せる……のも難しいし……」

「穏便にね?」


 ひーちゃん、ふーちゃんにみーちゃんが加わって、方向性をさぐっているみたいですが、良さそうな案は無いみたい。

 さらに少し経って、一人だけ笑い転げていたつっちーが漸くツボから抜けたみたいで、息を荒くしたまま言います。


「人数が多いだけなら、カードだけめくって貰えばいいんじゃない?」

「「「それだぁ」」」


 頭の中でいきなり大きな声が出そろい、思わず「ひゃい」っと変な言葉がでて、視線を一気に集める事になりましたが、つっちーの提案はどんぴしゃり。


「ナイスな裏技。使わせてもらいましょ」


 ちょっとうるさい脳内会議もこういう閃きがあるので、馬鹿に出来ないんですよねぇ。





そわそわしているお店の空気。

どっちかと聞かれたら、私は苦手なタイプです(笑)

だったら、早めに今日は帰って欲しいって言って欲しいなーって思うタイプではありますが、客商売としてそれはお客さんに言えないという気持ちも一応理解はしている感じ。


そんな雰囲気を感じながら書いていたのですが、そわそわします(笑)

いや、書いているだけなのに何でお前さんがそわそわしてるん?って、思うかもしれませんがなんかソワソワしちゃったんですよねぇ。

あ、もちろん家で書いていますけどね?自分の文章で自分がそわそわしたってことは、伝わるような文章……だったんですかね?(笑)


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