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世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
43/60

43.どーもすいません

1/3


「おはようございます、大将。今日のおすすめは?」

「……揚げ物、いやコロッケだな」

「分かりました。ちょっと色々あって、のっけからごたつきました」

「客を連れて来ただけだ、むしろ助かる」


 大将が静かに小さく頷き、私はそれを確認すると大きく頷きを返し前掛けを付けた状態になったので早速接客を始めましょう。


「今日のおすすめは、コロッケです。お仕事終わりですし、ご飯もいいですけどパンにして、お財布に余裕があるのでしたら、特別ソースでいかがでしょうか?」


 待たせないようにしていた大工さん達に紫乃さんから受け取ったお盆の上の水を提供しながら、確認すると四人共に若干前のめりになりながら聞いてくる姿はひな鳥が親鳥から餌を貰う様子にそっくり。


「特別ソース?」

「メニューにないよ、な?」

「これはついてきて大正解じゃねぇか?」

「飯もいいが、パンだとそこまで力が出ねぇ……って後は寝るだけだし、いいのか」


 大工だけあって、力が出にくいイメージのあるパンはどうやら避けがちだったみたいですが、この後は飲んで寝るぐらいの時間帯。

 いつもだったら頼まないという注文でも、タエさんがいうならと快く注文を決めてくれます。

 そして、その様子を見て、釣られて入ってきたお客さん達も口々に、そんなものがあるのか?って他の女給に確認をします。


「いつものソースもいいですけど、特別だとお酒に合うんですよ。勿論ビールにもですけどね」

「おっと、酒を忘れていたな。酌もタエさんがしてくれるのか?」

「ええ。まあ、ずっととはいかないかもしれませんけどね」


 その一言にこっちに呼んでもいいのか?と色めき立つ客も。

 一気に店内がこんな形で賑やかになってきたのですが、流石はおかみさん。注文を通しに戻ってくると、他の女給さん達にしっかりと発破をかける。


「ぜーんぶタエに持ってかれるんじゃないよ?誰一人劣っている子はウチが取っちゃいないんだからね。ほーら、いったいった」


 おかみさんのその一言に目の輝きを取り戻した他の女給がビールの空き瓶と空の徳利をもって駆け付け三杯のお酒はどうだい?と、客席側に。

 そして、美人のお姉さま方がお酌をしてくれるならと注文も一気に増えていき、客席も厨房も賑わいが一気に伝播していきます。


「流石はタエちゃん。一気に忙しくなっちゃったね」

「紫乃さんのお酌を待っているお客さんもいるでしょ?」

「まーね?ふふっ、これだったら今日も出囃子が更に楽しみになるから、昨日みたいにちゃちゃっと美味しくお願いね?」

「あっ、大将に確認するの忘れてた」


 てへっと右手を握ってコツンとおでこの横に。


「あら、かわいい」


 あれ?っと、私は驚いたのですが、頭の中で答え合わせをしてくれたのはひーちゃん。


「それ、もうちょっと後の時代よ。存命中だとは思うけど」

「……まずかったかな?」


 ひーちゃんが尻尾を振り振りしながらも大きなあくび。


「まあ、セリフを言ってないから大丈夫じゃない?」

「でもでも、紫乃さん後で思い出すんじゃない?」


 みーちゃんも猫みたいに背中を逸らしながら大きく伸びをしながら言う。


「……ま、その時はもういないんだからセーフでしょ」

「かな?」


 あくびを噛み殺しながらひーちゃんがそう言ってくれたので、このまま誤魔化すことに。


「連れてきたお客さん達が一段落ついたら、大将に相談するね」

「うん。お願いね」


 今日もラードをお味噌汁に少し入れるぐらいなので多分問題はなさそうですが、注文の入ったコロッケを大将が揚げていくと店内からとてもかぐわしい香りが外まで広がり、その香りが更に客を呼び、賑やかな店内の様子に更に客が増えるという好循環。

 ちょっとだけ面白いのは、お酒を飲みすぎないように先輩女給がお水をしっかりと出し、ヘロヘロにならないように適度な所で「今日はお帰り?」と優しく諭すところ。

 私の連れて来た大工さん達はお酒にも強いみたいで、空の徳利は二本が三本、そして四本と結構ハイペースで飲んでいるみたいですが、ケロッとしたままの男達。


「タエさんが連れて来るお客さんは胃まで強いと来たもんか。こりゃあ、儲かってしょうがないね?」

「お客さんに聞こえるところでそんな話したら……」


 音もなくスッと近づいてくるのはおかみさん。


「そういう話は後でするもんさ。ほーら、喋ってないでお客さん達を相手してきな」


 ちらちらっと紫乃さんが私を見て来るのは、そろそろ賄いの方に顔を出して、味を調えてきて欲しいという感じみたいですが、四人の相手を一人でしているのでなかなか抜け出す隙は無く。


「タエさんのオススメ、バツグンに美味しいな」

「酒に合うコロッケ、初めてだ」

「いつもより酒が美味しいのは、タエさんのお陰だよなぁ」

「占いも出来て、気立ても良くて、タエさんは女神様かなにかか?いやあ、ありがたやありがたや」


 男の一人が両手を顔の前で擦り合わせて、拝むようにへこへこし始めるのですが、ピクピクと耳が動いていたのは女性陣。


 なぜかブルリと悪寒が走った気がするのは、どうしてでしょう?





何とか乗り切れた先月。

そして始まった今月


サクサクと話が進み、嬉しいような寂しいような(笑)


サブタイトルってやっぱり難しいです。

頭から湯気が(笑)


なんとか今回も三話程届けられそうです。

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