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世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
41/60

41.閑話 女給仲間/まだ見ぬ人

2/3


 このお店は普通に繁盛していて、ランチ営業をしなくても客足が遠のくことなど無いというのに、昔気質な大将が「安くてうまいモノを提供しないでどうする」と、休みなくお店は開けている。

 そんなお店の女給に私が成ったのは先月。

 いっつも人手が足りないって女将さんも言っていて、数日間だけとか数か月しか働かない仲間もいるけど、それでもここで働きたい人は結構多くて。


「んー、今日の出囃子も美味しいわ」


 ちらっと見れば、紫乃さんが今日も不思議な物言いで美味しそうに賄いを食べている。


「ねぇねぇ、昨日の夜のお味噌汁飲んだ?」

「お味噌汁?いつものでしょ?」

「違うのよ。昨日来たあの子……名前は出てこないけど、別嬪さんで料理の心得もあったみたいで、チャチャッとやる割に美味しくしてくれたらしいのよ」


 聞きたくなくても耳に入る会話は、まさに「女三人寄れば姦しい」というやつ。

ランチから一段落ついた時間で私達も少し休憩しながらも仕事をしている時間帯なので噂話には目が無い感じ。


「私それ飲んだけど、なんか違うのよ。コクがあるっていうの?いつもよりちょっと美味しいのよね」

「わたしもそれ、飲んでみたいなー」

「今日も夜はくるんでしょ?」


 賄いを食べているのもあって、会話にはついていけないけれどいつもよりちょっと豪華な今日の賄いは薄い卵に包まれたカレーの入ったオムレツ。ご飯と一緒に食べると食感は様々ながらも、普通にお金を出して食べるようなかなりいい賄いなので、自然と周りの声よりも味の方に集中しちゃって。


「それはそうとして、ちょっと有名な占い師がこの近くにいるらしいの……知らない?」

「あー、さっきも男連中が話していた……御守りをくれる占い師だっけ?」

「そうそう。悩みも吹っ飛ばしてくれるって」

「え?私が聞いたのは別嬪って話で男どもがメロメロって聞いたけど?」


 話は飛び、今度はご飯から占いに。

 御守りの効果しだいではちょっと占って貰いたいような気もするけど、占い自体は「当たるも八卦当たらぬも八卦」。周りに占いが好きな人は多いけど、私はいいやと思っていると、トントンと肩を叩く人。


「占い、好きよね?何かお客さんからも聞いていない?」


 ご飯に夢中だと思った先輩女給がわざわざ声を掛けてきますが、興味が無いと言えるような空気はなく。


「私が対応したお客さんには、めぼしい情報を持っている人はいませんでした」

「あら、そう。そういえばたまに来る軍人さんとはいい感じなの?」

「え、あー。お誘いはしましたけど、こういうご時世ですから、どうですかね?」

「女だからって三歩うしろを歩く時代じゃなくなっていくかもしれないんだから、まあここで働こうって気概のある子がそんな弱っちい訳は無いと思うけど、シャンとしないとね」


 どうやら先輩は女給という仕事にしっかり誇りを持っているらしい。さらにいえば、ついこの間までは語る事も許されなかった「夢」まで持っているようで。

 その目にはメラメラとやる気があるようにも見えますが、わたしとしてはもうちょっとゆっくりと賄いを楽しみたいという感じ。


「ほら、あんまり喋ってばかりいないで、お客さんの相手、してきな」


 おかみさんが小さめの手を叩く音でもって集まっていた女給をバラバラに。

 ホッとしながら賄いを食べ進めていると、先に食べ終わった紫乃さん。


「タエちゃんが作ってくれたお味噌汁美味しかったから、今日もお願いするけど後で一緒に飲む?」

「私、ですか?」

「うん。先輩たちの話を又聞きしていて思ったけど、ぜーんぶタエちゃんの話のような気がして」

「タエ……さん?ってそんなにすごい人なんですか?」


 なんとなく聞きたくなるような、興味を持たせることが上手いというか、思わずその話は?って空気を紫乃さんが出してきて口からついつい言葉が漏れる。


「凄いよ。なんだろう、パワフル?――力の塊?繊細さもあって、美人さんで、あー、でもだからかな?ちょっとだけ近寄りがたい空気も纏っている事あるんだよねぇ」


 そんな人が居たら私だって見てみたいと思ったのですが、考えてみれば昨日はお休み。会う事が出来なかったのも仕方ない話。


「今日は、来るんです?」

「多分ね。今日と明日まで?とか言っていたかな」

「三日、ですか」


 紫乃さんは寂しそうに笑いながら、でも――と言葉を続ける。


「タエちゃんはタエちゃんの人生があるからねぇ。出会えただけでも嬉しいって話よねぇ」


 ふにゃっと笑う紫乃さんはもうちょっとゆっくりしていようとしたところに、女将さんからの雷が落ち、私もそろそろ仕事に戻らないとマズそうで慌てて賄いをかきこむことに。


「タエさん……早くちょっと見てみたいなぁ」


 遠からずタエさんと会う事になるわけですが、私の人生までまるっと変わる出会いになるなんて、この時は思いもしておらず。

 本当に、人生って何があるか分からないものです。





何となくお気づきでしょう?

〇1話 は 閑話です。

たまーに別の視点っていうのが私は見たくなる事ありますが、読者の皆さん的にはどうなのでしょう?


色々と手探りながらも前には進めている気が。

進めて、いますよね?(笑)

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