36.喧噪のあとで
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本日ここまで
お昼が終わり、占いの席を整えてフゥと一息。
行く時はふらっと出て行けたのに、戻ってみたら男衆や親方さんたちがやけに気にしてくる。
ほんのり居心地が悪い――というよりはむず痒い、そんな感じ。
「さてと、この後はどうする?」
席について少しも経たないうちにタエの前に列が再び出来始め、出し忘れていた椅子を何処からともなく取り出すと、声をそろえるように周りの人達から「おぉ」と驚きの声が上がる。
「どうするって、タエは占いをするんでしょ?」
「だから、占いをしている間の僕達。折角だから客集めをしてみたり、ちょっと美味しそうななにかを拝借してみた――」
「ん?ふーちゃん?」
ゴゴゴという擬音が背中に張り付いているような状態のみーちゃんが言葉を遮ると同時に、不思議な声とも音ともいえるようなものが聞こえる。
ピギャッ
その変な音に列をなしていた人達がキョロキョロとし始めますが、音の場所は見つからず、空耳だとでも思ったみたいで次第にまた視線はバラバラに。
「ふーちゃん?」
「ふぁい。尻尾をいきなり握るのは反則だよぅ」
「反則じゃないでしょ?つっちーがさっきやったみたいな事をしたら、また周りの人たちに迷惑をかけるのよ?分かっているの?」
「ふぁい。でもでも、少しぐらい遊びに行っても、いいでしょ?昨日はみんなで我慢したんだからさ」
そう言うと、ひーちゃんもみーちゃんも何も言えないみたいな顔をしますが、尻尾をギュッと掴まれているふーちゃんはヘトヘト。
「とりあえず、尻尾は離してぇ」
あ、忘れてた。みたいな顔で、みーちゃんがパッと手を離すと、ぺたりと地面にへたり込むふーちゃん。
頭の中がどんどん賑やかになりそれはとても面白くもあり、ほんの少しの心配もあり、でも今は占いの準備中なので顔に出さない様に注意しながら、私は成り行きを見守ります。
少しばかりふーちゃんはその体勢のままで静かにしていたみたいですが、どうやら隙を伺っていたみたいで、ひーちゃんとみーちゃんがこの後は順番にお昼寝でもと話している最中にこっそりと飛び出します。
「ずるっ!」
声を上げたのはつっちー。
一応、お昼の後からずっと重しを背中に載せられているのですが、重しの氷も時間が経って減ってきている事もあり、反省よりも楽しさを選んだのかポイッと重しを外しながら声を上げます。
「ちょっ!!」
「待ちなさいっ!!」
大きなつっちーの声に二人が反応するのですが、飛び出したふーちゃんは止まらず、タエの足元からダダダッと何処かに黒い影が一つ動くので、並んでいる人達が再び驚く。
「あっかんべー」
わざわざふーちゃんは飛び出した後に建物の影からこっちに向かって下をペロンと出して見せ、再び街の中に消えます。
慌てたのはひーちゃんとみーちゃん。そして、チャンスと思ったのはつっちー。
ふーちゃんが飛び出したので、自分達が飛び出すと流石にまずいと思ったのですが、このタイミングで二人が飛び出さないと読んでいたつっちーもこっそりと飛び出します。
ただ、ちょっとだけ律儀なのが流石つっちー。
「いってきまーす」
「「え!?」」
ひーちゃんとみーちゃんが一瞬、家での会話みたいに「いってらっしゃい」の「い」が出そうになった後、出た言葉は「え」。
「反省の色が無いのね?」
「あわわわ。反省、してなかったね?」
ひーちゃんはみーちゃんの威圧に戦きながらも、今は何か言ったところで意味が無いと悟ったのか、ただ言葉をオウムのように繰り返します。
「後でみんなお仕置き」
「み、みんな?」
「勿論、ひーちゃんは無いわよ。でも、二人を探すのは――手伝ってくれる、よね?」
ひーちゃんはただひたすらに首を縦に振る人形の如く、カクカクと動くとみーちゃんが確認をとる事に。
「どうしよう?」
少しばかりしょんぼりとした声でみーちゃんがタエに声を掛けます。
「別に、いいんじゃないの?食後の散歩って思えば」
「でも、ふーちゃんもつっちーも……」
「みんなのやり取りはちゃんと確認しているから、怒らないよ?」
「うん、でも……二人共どっか行っちゃった」
「占いの最中は動けないから、二人もあの二人に倣って街の観察でもしてきたら?」
どうやらその提案は自分の中にはない発想だったみたいで、驚いているのが分かります。
「美味しいご飯も食べられて、昨日よりも少しだけ自由になってきたから動きたいのよ。まあ、相談できる人が居ないのは私もちょぴっと寂しいけど、二人も一時間ぐらい散歩してきたら気も落ち着くんじゃない?」
微妙にまだどうしようか考えている状態のみーちゃんとは裏腹に、ひーちゃんは目をキラキラさせて、ウキウキの様子。
「お散歩だったら、とりあえず……あ、アレの様子を見て来て、あとはさっきの市場も……おお?そっか、この体だと見え方も見えるものもちょっと違うかな?」
もう自分なりに楽しむつもりになっているのか、ウズウズとした逸る気持ちにとめるものが無い状態。
「あ、でも二人が出るときは陰からこっそりね?二人が実体で飛び出しちゃって周りの目があるから、ね?」
そう、お願いすると「わかった」という声と一緒にスッと自分の中から二人の気配も消える事に。
「では、並んでいる前の人から順番に占います。お待たせしました」
スッと息を整える。そして午後の喧騒が遠のいてゆく。
午後のお仕事を始めましょう。
今回も読んで頂きありがとうございます。
何処かに行った皆の心配とこの後の占いと。
書いている作者もどっちも気になっています(笑)
実は作者自身も読者なので、先が気になっています。
ドウシテコウナッタ(笑)がありそうですけど、どうでしょうか?
次回の大安吉日までに、方向性決まるかな???
最低でも一話。出来ればいつも通り三話。
期待せず、お待ちください。




