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世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
30/60

30.ひとしずくは魔法

3/3

本日はここまでです


 戸を開けて、取り出した茶色いビンの中身はカルピス。

 戦後復興の時期、カルピスは戦前からの人気が続く贅沢品。

このお店の繁盛ぶりを象徴する、ちょっと特別な飲み物です。


「これを使わせてもらいますよ」

「……調理の前に一杯ってか?流石にそれを調理というのは……ズルくないかい?」


 あれ、私がこれを飲むイメージしか二人には無いみたい。

 勝手に人の家の飲み物を拝借するほど、私は礼儀知らずじゃないんですっ!!


「飲みませんよ。確かに飲みたいですけどね」


 そう言って、ある程度深さがある容器を取り出して半身にした骨のない方の身の皮目を上にして、まずは身を二つに切り一人前を作ってからそれを容器に置いて上から少しずつカルピスをかけます。

そして手で皮目いっぱいにカルピスを伸ばした後、水を多めにかけて全体の半分が浸る程度までカルピスを薄めます。


「なんってこった」

「折角の贅沢品を?なんてことするんだい」


 二人は絶望的な顔をして大きな口をあけたままこっちを見てきます。


「いつもでしたら、塩を振って臭み飛ばしや酒を振ってと生臭さをどうにかする部分をコレだけですべて補えますから。その驚きはこの後に取っておいてください」


 そう言って、深さのある容器を一度ポケットの中にひょいっと後ろを向く動きに合わせて仕舞い、鯖を捌いた包丁やまな板をさっと水洗いして厨房の奇麗な状態を保つ動きをしたら、ポケットにわざわざ仕舞った容器をクルリと取り出します。


「今日は時間が無いので特別ですが、お客さんに頼まれたら三十分程時間を貰って下さいね?流石にカルピスとは言え、万能選手ではないですからね?」


 ポケットの中で時間を早め、三十分程漬けた状態の鯖の感じはどこが変わった?という感じ。つい数分前に漬けたからといって絶大な変化は何一つみられません。


「フライパンを貸して貰っていいです?」


 そう言って、フライパンを借りたら漬けていた汁ごと皮目を上にフライパンへ。

 そしてそのまま火にかけて、カルピスごとしっかりと一度沸騰させましょう。

 ここまで来ると、流石にもう何も言わんという顔でおかみさんも大将も首を左右に小刻みに振るだけ。


 フライパンの中でしっかりと泡がブクブクと漬けていた汁が沸騰した事が分かるのですが、明らかに臭みの塊みたいなアクが結構出て来るので、そのアクだけはしっかりとすくって、アク取りを済ませたら大体三分から五分ぐらい鯖が茹でられた状態に。


「このお店は、味噌煮はやっています?」

「塩焼きより高いが、無い訳じゃないぞ」

「でしたら、このアクをとった物であれば味噌煮にも使えます」


 ブクブクと白い泡が出ている所から鯖を取り出して、焼き場に移すのですがかなりここはそーっとやらねばならず、気を付けないといけない所。


「そ、そんなに柔らかいのか?」

「ええ、柔らかく更に身もふわっとしているのでここからは雑に扱うとダメですね」


 焼き台は焼鳥屋さんで焼き鳥を焼く時のような形で、焼き鳥ではなく網が乗っている形。その焼き台に箸を使って移した鯖はいつもよりは柔らかく、芯が無いような状態。


「慣れないうちは箸でやるとどうしても皮がむけやすいので、最終手段は手で」

「おいおい、火傷は?」

「水にちゃちゃっとつけて、パパっとやればそこまでのろまではないでしょう?」


 後は中までしっかりと火を通し、更に今の状態だと皮がクタクタなのでパリッと焼き目をつけたい所。このまま焼くとカルピスの甘味が焦げやすい状態なので火の通りが分かり辛い部分ではありますが、網に魚がくっ付かない様に用意してある油を皮から全体に掛け、そして塩を振ります。


 油がパチパチと跳ね、香りも良くなってきたらひっくり返しましょうか。


 先程言った通りに水を流している所に右手を突っ込み、濡らした状態でサッと身を持つとそっとひっくり返して、皮目を下に。

 ここでも塩をもう一度全体にしっかりと振ってあげます。


「塩っ気がどうしてもこう……ひっくり返すと落ちやすいので、皮目がいい感じになったらもう一度塩を振って、完成ですよ」


 皮がパリッと焼けた音と香りが出来上がりの合図。

 後はひっくり返してお皿に盛ってあげましょう。


「さ、お客さんに出す前に味の確認をお願いします」


 お客さん用のお皿とは別におかみさんや大将用にそこにあった中皿の上に置いた鯖の塩焼きを出すと、二人共ジッとまさに凝視という程確認をしてから、箸をいれます。


「おおおお」

「やわらかっ」


 大将とおかみさんがかなり驚きながら、箸を入れると皮こそパリッとしているものの身はふわふわ。

 おそるおそるまずは大将が口に入れ、すぐにおかみさんもぱくりと口へ鯖を入れる。


「こいつはすげぇ」

「アンタのより美味しいかもしれないね?」


 おかみさんの言葉に大将が思わず首を落としますが、そのまま何度も頷く動きをして、言います。


「これなら問題ない。急いでお客に出そう」


 大将の許可も貰えたので、おかみさんが焼きたての鯖をお客さんに届けます。


「――ふぅ。どうにか、なりましたかね」


 誰にも聞かれることなく、タエが一人ごちました。








当たり前ですが、適当な事は書きたくないので(笑)

鯖を買ってきまして、カルピスに漬けました。


そして、塩振って焼いて。パクリ。。。うーんデリシャス。。。(笑)


こうやって書くと本当に嘘くさいですけど(笑)、ちゃんと味の確認をしてみたくて検証番組の量ではやりませんが、二枚おろしの鯖を使って、食べ比べしました。

鯖の臭みは塩なし、カルピスだけでも多少取れますし、身がふわふわにも。

タエさんの言う通り、鯖塩焼きよりもサバの味噌煮の方が良さそうですが、塩焼きでも身のふわふわは感じられるので、悪くはなかったですよ。……これからの時期を考えると味噌煮だったかもしれませんが、時代的に味噌煮はねー。高級な食べ物。そしてカルピスも贅沢品なので、かなりこのやり方は時代的に考えると、えー!?って話です。


時代にあまりにもそぐわないとは出来ず、でも美味しいモノを。


塩梅って本当にムズカシイ(笑)


ではまた、次回の大安吉日によろしくお願いします。

ぁ、ブックマークだけでも嬉しいので、評価は気が乗った時でいいので、よろしくお願いします(遅い(笑)今更?)

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