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世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
29/60

29.厳しさの中に、甘さあり

2/3

もう一話ー


 順番が完全にチグハグだと気がつき、慌てて向かうのはおかみさんの元。

ただ、どちらかと言えば大事な客さんの許可が取れているので、どうにかなって欲しい所。


「あの、お客さんに伝えた通りで……少し、料理には心得があるので厨房を借りられますか?」


 若干目線が泳いでいるものの、気持を汲んだのか厨房手前まで案内してくれます。


「なんだ?女が厨房に入ろうってのか?」

「あー、今日この時だけ、赦して貰えませんかね?」


 両手を胸の目の前に合わせ、拝む仕草をして頭も下げます。


「フンッ、女は色々あるから味が安定しないだろう?それでも、引かないってのか?」


 ダメだと言うと大将は首を左右に強く振ります。


「味が分かれば文句はないと?」

「客に出す以上味がブレるなんてことは許されないんだ。家庭料理の延長で言われてもな」

「では、味が分かればいいんですね?」


 首を左右に振っていたハズの大将は怪訝な目でこっちを睨みます。


「おかみさん、ちょっと大将に耳打ちしても?」

「え?ああ。べつにいいよ」


 気があるとか、余計な事を後になって言われると面倒だと思ったので確認を済ませて大将の耳元に口元をそっと手で隠して耳打ちします。


「鯖には塩を強めに振って、十五分程度休ませて臭みを飛ばし、その後に甘酒粕にこれまた塩を足したモノにしっかり手拭いで包んで、ひと晩冷暗所で味をなじませたのが御宅の焼き鯖でしょ。偉いのはこの後。漬けた甘酒粕を軽く焼いて、味噌と混ぜた後にアラ汁で再利用。普通のお店じゃこの味は出せないわ」


 お店の味の秘密であろう部分を詳らかにするので、他のお客さんに聞かれるわけにもいかず。そして、この様子だとおかみさんもどういう下処理をしているのかはなんとなく知ってはいるものの、秘匿技術という程ではなくとも隠された作業のはずという事で、直接言うと目を大きく開き息を大きく吸う大将。


「なっ」


 言えた言葉はそれ一つで、大将の顔色がどんどん悪くなっていく。


「誰にも勿論言いふらしませんよ。ただ、味に関して私、ちゃんとわかっているでしょう?」


 大将は言い返せる言葉も無いみたいで口をパクパクとさせながら、悔しそうに一度大きく縦に首を振ります。


「すぐに出ますから、厨房、貸して貰えませんか?」


 間違えちゃいけないのは、今の自分の立場。脅しているような形になりつつあるものの、そもそもはつっちーの悪戯というか食欲で鯖を食べてしまった事を発端となるわけで。頭を下げるべきは自分達。

大将もおかみさんも何も悪くないのに、お店の味の秘密を暴かれ、更にお客さんを待たせ、追い込まれている状態。

 自分なりに再確認してみると、何というか本当に酷い事をしている気が。


「わ、わかった。ただ、作業は見てもいいか?」

「それは勿論。あと、色々と厨房のモノは借りますから、それは許して下さいね?」


 必要なアレコレがあるので、この確認はとっても大事。


「何をするつもり……なんだ?」

「即席で大将の味を真似る……感じですね」


 大将の目にはそんな簡単に真似る事出来る訳ないだろうという自信と簡単に真似られてしまう程の技術と言われたような絶望がないまぜの状態みたいで、何とも言えない表情に。


「真似て出来る味じゃない……ぞ」


 それでも絞り出した一言を否定する必要はありません。


「ええ。だから、近い味を短時間でやらせてもらうだけですけど、ちょっとだけ工夫が必要なんですよ。……ね」


 そう言いながらずかずかと厨房に入る許可も貰えたので、早速作業開始。


 氷の入った木箱の中にある鯖を一尾取り出して、確認をとります。


「半身、使いますよ」

「客には、更にその半分だぞ?」

「美味しく頂いたので、覚えていますよ。味見、必要でしょう?」


 お客さんに出す前に確認は必要なわけで、取り出した鯖をまずは二枚おろしにするのですが、大将は何も言わずにじっと手元をみていて、おかみさんは私の手際の良さに驚いているのかしきりに口をポカーンとあける。


「えーっと、サー……さっき確認したから、この辺りに茶色い……あった」


 厨房から少し離れた位置の比較的涼しそうな場所に一本の茶色いビンが。


「おいおい。なんでそれがそこにあるって」

「借りると言いましたよね」


 わざわざ戸を閉めていたので、おかみさんにばれないようにたまに飲んでいたであろう茶色いビンの中身は白くて美味しい甘いアレ。


「あら、本当にアンタは甘いモノがすきねぇ」

「仕事終わりの一杯が美味いんだよ。贅沢品だってわかってるだろ」

「私にゃ滅多にくれないくせに」

「お前の飲み方していたら、すぐになくなっちまうんだよ」

「当たり前だろう。濃い方が美味しいじゃないか」

「薄めにして、タンも絡まないぐらいのさっぱりした味わいがいいんだよ」


 そんなやり取りを二人が始めてしまいますが、これを使って短時間で鯖をどうにかしましょう。




面白いというか、不思議というか。


調理場に女は入るなと言われるような「時代」が昔は普通にまかり通っていたんですよねぇ


家では普通にお母さんが料理しているのに、調理場に入るなとはコレ一体???


何というか、昔の男の人の曲がった思考っていうのは、今の常識からすると非常識ですよね。

タイミングばっちりという訳ではありませんが、そういえばサイレントヒルFってホラーゲームも古い時代の田舎が舞台で……今の時代とは色々と違う偏った思考というかそういう時代のですね。

まあ、私は自分で操作できるほどゲームが上手くないので、見る専門ですが、本当は自分でやった方がもっといいんでしょうけどねー。。。


話が逸れちゃった。。。


茶色の小瓶、すぐに答えは出るのですが……分かりました??

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