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世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
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24/127

24.鉄板deひとまわし

3/3

本日もご一読いただきありがとうございます


 牛めし屋さんの長蛇の列により幻のランチとなった牛めしから流れ流れてたどり着いたのは乾物屋さん。

 そして、弾かれるように落ちたのは喧嘩の真っただ中。まあ、人の流れが不自然になるのは仕方ないのですが、この乾物屋さん朝に案内をしてもらった時も思っていたのですがかなり質のいい乾物を取り扱っていて、若い男の人が言う様なカスの部分でも十分美味しそうなものに見えます。


 少しだけ周りを見渡すと、お店の横には乾物を少し炙る為の七輪。そしてはす向かいのお店は野菜を少し取り扱っていて、一つ思いついたものが作れそうな気配。

 ただ、そもそもなぜこの二人が喧嘩をしているのかは当人達以外はしらない話。


「お二人共、どういういきさつでこんな事に?」


 解決できるのか?と言われて、どうにかできる可能性はあるものの、そもそもの話を知らない事にはどうにもなりません。


「俺は、一銭洋食……いや、十円洋食の屋台で働いているんだが、踊り節を見てピーンと来たんだよ。コレだってな!屋台は見栄えが命。踊り節があれば百人力だろう?」


 大きな声で若い男が堂々と言うわけですが、堂々と言ってしまうと周りの人達は苦笑い。

 だって、自分で商売のタネをひけらかした様なもので、目の前のお姉さんもクシャッとした顔に。


「だったらそう言えばいいじゃないのよ。鰹節クレクレしか言われてないよ、こっちは」

「だからちゃんとした鰹節くれって言ったろ?」


 という感じに、また堂々巡りになりそうな気配を私も感じた訳ですが、理由が分かったというのと、若い男の大声で商売のタネも手に入れたと思っている人も居たみたいで、人だかりは少しだけ掃けます。


「こんなカス節、要らねぇんだよ」

「カス節だって?うちの鰹節にカスなんてないよ!そんな事を言うんだったら売らないよ!」


 予想通りに二人の言い合いはヒートアップしていくのですが、お姉さんの言う通りこの鰹節はかなりいいモノ。若い男にその辺りはきっちり教えないといけないでしょう?


「仕方ありませんね」


 溜息一つつきながら、カス節といった男の口を黙らせる為、一肌脱ぐとしましょうか。



 私はもう一度まわりをしっかりと確認し食材になりそうなものを確認。

 乾物屋さんから少しだけ離れたところに焼きそばの屋台をやっているお店があり、屑野菜が入っていたボウルがあったので、そのボウルを貸して欲しいと伝えると二つ返事で貸してくれます。


「お姉さん、その鰹節一掴み……だと美味しすぎちゃうから、少し買わせて?」

「え、ええ。いいけど?一体何をするつもりだい?」

「こちらの鰹節は美味しいのに、さっきからカス、カスとうるさいので、それだけは改めさせようかと」


 ニコっと笑えば、お姉さんも頷きを返してくれて、何が必要と聞いてくれます。

 幸いにして乾物屋さんというのもあって、揚げ玉や青のりも売っていて今だと量り売りは少ないのですが、この時代は少量からでも問題ないみたいで欲しかったメリケン粉もすぐに手に入ります。


「少しずつだとお金が取れないねぇ」

「ですので、これで」


 そういって、ポケットから五円を出すと首を左右に振りますがタダより高いものは無し。お姉さんの手にぎゅっと五円を握って貰い、もう一つお願いをします。


「そこの七輪を借りますよ」

「いいけど……」


 どうするんだい?と、今にも言葉が出てきそうな顔でこちらを確認してきます。


「こんなこともあろうかと、一人用の鉄板が……実はありまして」


 スカートの中から手品の様に三十センチ各の鉄板を取り出して、なにも焼いていない七輪の上にそれを置きます。

 喧嘩を見ていたまわりの人達もなにやら毛色が変わったことは察していたみたいで、遠巻きながら人の流れを阻害しない程度に人が残る状態に。


「借りたボウルに、メリケン粉、あ、お水を少々借りますよ?そして、鰹節の粉、揚げ玉に青のりも先に入れちゃいましょうか」


 本音としては卵も欲しい所ですし、もっと野菜も欲しい所ですがはす向かいの野菜屋さんはそっぽを向いているのでパス。無い物ねだりをしても仕方ないので、これでいいでしょう。

 ボウルを借りた焼きそばの屋台の人に無理を言ってソースをちょっとだけボウルに入れて貰ったら、カッカッカッと小気味いい音を立てつつボウルの中身を混ぜ合わせ、鉄板の上に右手の人差し指を向けて、指の先から油を鉄板に。


「おお!?」


 まわりの人達はまた手品か?と声を揃えます。


「あとは、これを鉄板に流して……って、あらら?急いでヘラをどうにかしましょうか」


 混ぜる時に箸を使って、箸はすぐに仕舞ったのですが食べる時にはヘラが無いとしまらないので、ポケットからヘラを三つほど用意して取り出します。


「焼けた端っこからこそげるようにどうぞ?」


 ヘラは三つ。

 私とこの場所を貸してくれている乾物屋のお姉さん、そして若い男の三人に。


「……これを食えって?」

「まだ、真ん中の方はブクブク言っているよ?」

「あれ?食べ方、知りませんかね?子供の頃に食べていると思ったのですが?」


 予想と違う反応が二人から返ってきました。





食べるものが無い時代。

今の飽食の時代をみると、どう見えるのでしょうか?


おじいちゃんやおばあちゃんがたまーに炊き込みご飯とか混ぜ込みご飯を嫌う人が居ます。

何故かと聞いた所、昔のひもじい時代を思い出すからだそうで。


今の時代だとただ普通に美味しいとなりますが、人に歴史あり。


ご飯が少ない時に、色々と混ぜ、足し食べた事を思い出すのでしょう。

その時を生きていないと分からない事は多々ありますが、今の時代に生まれた事は「幸せ」なのでしょう。


あ、いつも通り次の大安日にまたお待ちしております<__>

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