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世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
21/60

21.閑話 鳶職人/十円の占い

3/3

本日はここまで


 ここは御徒町。

 上野ほどの屋台街ではないものの、人も空気も悪くなく暴れる馬鹿も少ない界隈。


「綺麗なおべべ着た別嬪さんがパパっと手品みたいなことしてよ、なんかよく分からない占いをしてくれるんだが、御守りまでくれてたったの十円。お近づきになるに越したことないだろう?」

「そんなに別嬪さんなのか?」


 言いながら男はつまみをぱくりと一口。


「そりゃもう。後光が人によっては見える程だぜ?」

「で、その占いってのは?」

「見た事もないカードを引く奴だった。ただ、俺も横でじーっと見ていただけなんだが、占ってもらった男がかなり驚くし、どうやら内容もドンピシャ。今日は飲みすぎて銭がなかったが、明日は休憩の合間で占ってもらうつもりだ」


 俺はいつもの飲み屋の屋台でそんな話をしていると、他の男がフラッとやって来る。


「占いが凄いのか?女が別嬪なのか?どっちだ?」

「そりゃあ……難しいな。正直見ていた感想でいえば、どっちもだ」

「そんなうまい話あるか?」


 あきれ顔で残り少ない酒をクイっと煽った。


「俺も自分の目で見ていなけりゃ喋らねぇよ。これに関して嘘はないぞ」

「……お近づきになるのに十円でいいなら、変な店でよく分からない女に引っかかるよりマシだな」

「まーたどっかで変な女に引っかかったのか?」

「変な女じゃなくて、器量のいい未亡人だって聞いて近づいたんだが、ガキが二人もくっ付いていやがった。……今月の給料の半分は持っていかれちまったよ」


 頭に手を当てながら空の猪口に零れそうな勢いで酒を注ぐ。


「……。お前もなんだかんだ優しいな?」

「仕方ねぇだろ。ガキが食うに困ってるって言われて、ハイそうですかなんて男が言える分けねぇだろうが」

「そこは縁が無かったって断っても問題ないだろ?」

「……ガキの頃に飯が食えない辛さは俺達の時代、みんな知ってるだろうが」

「まあ、今の配給じゃあまだギリギリみんな辛いのは仕方ねぇ。だからあっちもこっちもヤミがある事も分かってるが、あんなこともあったしな……」


 グイっと一気に酒を煽った。


「判事だろ?」

「ああ。やっぱり生きていけないことを知らしめてくれた……馬鹿な野郎だよ。だが、正義の人間だ。馬鹿につける薬はないよな……」

「ったく、なんでこんなしみったれた話になってんだよ?」

「お前が変に話題を振ったからだろ。しみったれた話は酒が不味くなるからこの辺りにしてくれよ?」


 残り少ないつまみを一気に男が平らげる。


「なんか酔いが冷めちまった。銭湯行ってくるわ」

「そういや、あそこの銭湯は夜中も通しだっけ?」

「ああ。やっちゃ場が近いって、昼間に二時間程休んで、三時から開けてくれてるよ」

「最近、あの銭湯でも情報が聞けるって噂だぞ?」

「ああ。情報収集には酒が無い方が正確性もあるしな」


 まだ飲むぞと決めた男は、追加の酒を注文。


「戦争は終わっても、俺達の動き方は変わらねぇな?」

「上官様が口を酸っぱくしていっつも行っていたからな。情報は命だって」

「バカの俺達には分からない話かと思っていたが、その通りだったな」

「おかげで俺は今じゃ歌舞伎座再建のとび職だよ」

「とび職なのに情報がいるのか?」


 空の皿をちらっと見つつ、猪口に残る酒を一気に煽った。


「どの会社が良いか、悪いかも調べないと福利厚生も全然違うんだぜ?」

「そういうもんか」

「お前はいいよな?一人気楽な探偵だろ?」

「そうは言うが、探偵なんて依頼が無けりゃただの人。自分から売り込みも難しいし、安定した職に憧れもあるってもんだ」

「だったらお前も転職すりゃあいいだろ?」

「ま、みんなすねに傷持つ身だ。今なら何でもなれるかもしれないが……」

「っと、俺は明日も仕事なんで、今度こそ本当に風呂に行くわ」


 いつもの飲み仲間に別れを告げて、銭湯へ。

 そこの銭湯は広くないモノの、小さな庭があって井戸も併設されているので風呂上がりの井戸水が身に沁みる。


「おっ、今日はいつもより早いじゃないか」

「しみったれた話になりそうだったんで、分かれて来たんだよ」

「まーたお前らは。ん?今日はいつもより顔がにやけてねぇか?」

「あー、別嬪さんを今日は見る機会があってな?」

「ほうほう。詳しく話してくれよ」


 いつもの飲み仲間とは違う、裸の付き合い。

 どちらかと言えばご近所さんというべきおやっさん達と話をしていると、何やら怪しげなひょろ長い男も聞き耳を立てているような気配はあるが、聞かれて困る話でもないのでそのまま話にちょっとばかりエッセンスを盛って、誇張表現はこういう時には大事だろう?


「別嬪さんのカード占い、百発百中ってわけよ」

「白い御守り?ってのは、霊験あらたかだな?」

「アレは貰って損はないハズだぜ?」

「それがたったの十円?」

「おっまえ、たった十円って傷病人には十円だって大金だからな?」

「綺麗なねーちゃんの店行ったって十円じゃ手も握れねえんだ。そう考えたらやっすいだろう?」


 その一言に男達は頷くばかり。

 そして、同じように話を聞いている番台のおかみさんがぽつりと一言。


「男達ってのは本当に馬鹿だねぇ」

「おかみさんは占いとか……」

「信じないよ。占いで戦争にかてなかっただろう?」


 その一言で、銭湯全体がシーンと静かに。


「ったく、余計な事いっちゃったねぇ」


 おかみさんは周りに聞こえない様な声で反省するのでした。







閑話で今回は終わる事になりました


噂のお店ってこんな感じに広まるのでしょうか?(笑)

いや、噂になるようなお店にあまり自分は行ったことが無いので何ともですが……。


最近で言えば、食べ〇グとか口コミサイトの星の数とかコメントをみるのでしょうねー。


……自分はあまり確認せずに、とりあえず飛び込むパターンが。

まあ、それもかなり数が少ない気がしますが……。


いいお店に当たると嬉しいですよねー。


とりあえず、本日はここまで。

次回も大安にお待ちしております。

……大安カレンダー見るの面倒でしたら……どうしましょうかね?、あっちで告知?それともここに次回の大安日を書いた方がいいのでしょうか?

ご意見等ありましたら、感想に……って、感想じゃないですねー(笑)


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