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世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
2/12

2.ひみつのささやき

2/3です


 さっきの事もあったので、境内からさらに少し奥へ。

 少しヒンヤリとした風が吹いて、それが懐かしさも運んでくる。思わず笑顔になった。


「で、占いをするんでしょ?」

「どういうのがいいかな?」

「どういうもこういうも、ニコって笑って、ちょっと手を見せて貰って、良くなりそうですって言えばいいんじゃないの?」

「……それ、占いって言うの?」

「違う。ちゃんと手相を見たり、カードを使ったり、って嫌そうな顔しない!!」


 私に出来る自信なんてまるでない事をいきなりみんなが言ってくるから、正直戸惑う。

でも、みんなの言う通りお金を稼がなければ食べたいものも食べられない。

 だから、腹をくくってやる方向に気持ちを固める。


「手相はこの線とかをどうのこうの言うんでしょ?」


 自分の手を出して指を差しながら動かすと、その指を皆がじーっと見ている感覚。ちょっとだけ面白くなったので、指をくるくる回したり、手相の線を辿ってみたりする。するとますます面白くなってきて、そのまま指をひょいっとあらぬ方向に向けた。丁度その先には、境内にあるヒイラギの木。


「ヒイラギ?」

「ん、今何か閃きそう……ちょっとそのまま待って?」

「ん?ひーちゃんが何かいい事思いつきそうだって」

「そうなの?」

「占いじゃないの?」

「そう、そう、そう!占い!!葉っぱを使って占ってみたらいいんじゃない?」

「葉っぱ占い?……ちょっと昭和の人達を馬鹿にし過ぎじゃないの?」

「葉っぱで占うわけないでしょ!葉っぱに魔法をかけてカードに見せれば何というかそれっぽくなりそうじゃない?」

「カード占い……は無理だけど、なんだっけ、トロッと?違う……クロケット?も違う……えーっと、そんなような名前のカードをぺらってめくる……」

「あー、タロット?」

「そう、それ。一枚だけめくって貰って、上下と図柄で適当に言えばいいんじゃない?」


 みんなが提案してくれている事を聞いているだけで楽しく、何とかなる気が。


「……なんとなく、だけど、少しはできそうな気がしてきたかも?」


 私の言葉に、みんなも喜んでいるみたいで肉球をひょいっと見せるように手を挙げたのはつっちー。


「美味しいモノの為、私が今回は色々とやった方が良さそう」

「そうなの?風でパパーってはげ山――」

「罰当たりっ!」


 つっちーの尻尾がふーちゃんの頭をバシンと叩いた。


「いたひ」

「次は、無い」

「つっちーのコレは……ガチだね」

「ごべんなさい、ちゃんとします」


 かなりつっちーが本気だというのが分かったみたいで、ふーちゃんが謝って何となく会議がふわっとしたので、さっきの指を差していたヒイラギの所へ行ってつっちーに確認をすると、大丈夫と言う言葉が返ってきたのでトゲトゲの葉っぱに注意しながらヒイラギの枝を手折ります。


「元に戻してあげてくれる?」

「うん。ちゃんとお礼も伝えておく」

「ありがとう」


 ヒイラギとつっちーに対してお礼を言ったつもりだったけど、つっちーはあまり気にしないみたい。

ちょっとだけ魔力をヒイラギに流してあげると手折ったところからにょきにょきっと枝が再生した。

そして少しだけ早回しを見ているみたいにトゲトゲの葉っぱが数枚出て、その後に棘のない葉っぱも出て来たので不思議に思っていると、つっちーが柔らかい笑顔で教えてくれます。


「ヒイラギは歳をとるとトゲトゲしなくなるの」

「そうなの?」

「全部じゃない。でも、人間も一緒でしょ?」

「……歳をとると丸くなるって?」

「そう。……多分?」

「……へー?」

「何でもかんでも適用されるわけじゃない」

「ふーん?」


 つっちーを見ると、視線が集まり過ぎてちょっとだけ照れたみたいで目線を下げます。


「でも、なんでこのヒイラギそんな事になっちゃったの?」

「……魔力をあげ過ぎた」

「それって、大丈夫なの?」


 つっちーは小さく首をかしげると、口をもにょもにょ動かしながら言った。


「……ご飯の方が大事?」


 下げていた目線のまま今度は反対側に首をコテンと倒し誤魔化そうとしているようにも。もしかしたら結構まずそうな事をしている気がしてくる。


「ご飯は大事だから、仕方ない」

「……そうね。小さい事は気にしちゃダメよ」

「なー、今のってあ――」

「ふーちゃんは大人でしょ?ね?……ね?」


 みーちゃんにじっと見つめられたふーちゃんは、耳をぴくぴく揺らしながらわずかに視線をそらす。

 でもみーちゃんがさらに顔をぐっと近づけてくると、観念したようにちょっと目を細め、ぎこちなく首を縦に「カク、カク」と振った。


 見ていたまわりも空気を読んだのか、脳内会議は一気に静かな状態に。


 少しだけ間があった後は最初の空気に。


「折角だし、このヒイラギの枝を飾って少しこの枝が作用しているように見せるのもいいかしらね?」

「それよりも、流石に占うだけじゃちょっと怪しいんだから何か少しぐらい渡してもいいんじゃない?」

「だったら、この葉っぱを……こうやって、こうやって、こうやって、こう!」

「あー、葉っぱで作ったお守りみたいにして渡すの?」

「そ。まあ、効果が切れたらただの葉っぱに戻るし、後は……」

「周りの状況を見て、つっちーに屋台?机ぐらいは作ればいいんじゃない?」

「かな?」


「(……勢いに流されている気がするけど、ま、いっか)」


 方針が決まったので、早速やってみましょう。






もうちょっとだけあります

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