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世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
13/60

13.ゆけむりの幻

1/3

今日もギリギリ三話でお届けいたします


 銭湯の入り口の暖簾をくぐり、下駄箱に靴を入れ、紫乃さんの後ろについて行くと、番台から女性が手を差し出してきた。


「あ、はい」


 昼間の占いで稼いだ五円を紫乃さんに続いて渡すと、木札を手渡された。


「木札?」


 それが何か分からずに不思議そうな顔をしていると、眉をひそめる紫乃さん。


「好きでしょ?銭湯」

「ええ。大好きです……が、初めてです」

「初めて?……まあ、これだけ綺麗だとどこかのお嬢様かもしれないけど、この木札と一緒に脱いだ服を預けるんだよ」

「あー、鍵の変わりですね?」

「そうだよ。それにしても、よく見るといい生地をつかった服だね?」

「えへへ。お気に入りです」


 手拭い一枚だけ持って、服を脱いで堂々と札ごと番台に預けると、紫乃さんがまたも苦笑い。


「別に誰も取って食ったりはしないから、堂々としなくていいんだよ?」

「恥じることなんてないので」

「まあ、それだけ立派なモノがあればそうだろうね……」

「紫乃さんだって綺麗じゃないですか」

「それだけのものを見せつけて言うもんじゃないよ」


 そんな会話をしながら、扉を横にひき、洗い場の方に進むとむわっとお風呂の湯気と湿気を感じられた。

 時代柄か、洗い場の端では洗濯板でごしごしと洗濯をしている女性もいて、お風呂場なのに生活感が滲み出ている。

 思わず笑みがこぼれたが、漆喰の壁をぼんやり眺めていると、洗濯していた女性に声をかけられた。


「戦前は奇麗な絵もあったんだけどね、一度焼けちゃって今はこの状態で絵はないんだよ」

「ああ、そうですよね」

「それにしても……どえらい別嬪さんだね?」


 そんな人がいるのかと辺りを見回したが誰もおらず、不思議そうに首をかしげると、紫乃さんがお風呂セットを持って入ってきた。


「タエちゃんのことだよ。別嬪さんは」

「えぇ?私ですか?」

「それだけ立派なものまでつけて、くびれるところはくびれていて……って、何を言わすんだい?紙石鹸使っていいから、ちゃっちゃと洗ってパパっと済ますよ」

「えぇ、紫乃さん?私長湯ですよ?」

「そうなのかい?別に構いやしないけど、私はささっと終わらせるよ?」

「じゃあ、あんまり長くは入れないですね」

「まあ、疲れが取れるぐらいまではゆっくりおし」


 渡された紙石鹸と自前の手拭いをつかって体を洗うが、赤い方がお湯で青い方が水なのは分かるものの、丁度いい温度が作れず悪戦苦闘。

 やっといいお湯が出来たかと思うと、すぐにお湯は冷めてしまいノロノロしているつもりは無いのに、思っていた以上に時間がかかってしまう。


 ちなみに、頭の中は見るものすべてが新鮮で嬉しい発見ばかりなので、賑やかだったのだが、ひーちゃんがかなり強い口調で「静かに」と言い、みんなを黙らせてからは静かな状態に。


「最後の追い炊きが今終わったから、後はぬるくなるだけだってさ」

「じゃあ、熱いのが好きな人は今だね」

「えー、私は少しぬるいぐらいがいいんだけどねぇ」

「埋めないでよ?」


 と、常連さん達の会話が聞こえたので、体をきれいに洗った私は、早速お風呂へ。


「あら別嬪さん。かなり熱いわよ?」

「熱いのが好きなんですよ」

「江戸っ子ねぇ」


 そう言われて右足から入ってみると常連さんの言う通りかなり熱めのお湯。どぷんと肩まで浸かり、一番奥の壁まで進み、前を向くように体を回して、ふぅと一息。



「しあわせぇぇ」



 同じぐらいに頭の中のみんなも気持ちよさそうで、口からはふぅーといい感じの溜息が漏れる。

 十分が過ぎたころ、紫乃さんが言う。


「私はもう充分だから、先に涼んでいるわ。外には出ない様にするからタエちゃんはゆっくりね?」

「ええ。そうさせてもらいます」


 さらに十分以上浸かっていると、気が抜けて、尻尾や耳がちらりと見えはじめるが、お風呂場の湯気のお陰もあって気が緩んでいたところ、誰かの足が尻尾をむぎゅっと踏みます。


「ふみゅっ!?」

「あら、踏んづけちゃったの?ごめんなさい?」

「ああ、いえいえ。私が足を変に伸ばしすぎていたみたいです」


 そう言って誤魔化したが、踏まれたせいか湯気に少し不思議な情景が蜃気楼のように映し出され、それは大きなお社と真っ赤な鳥居がずらっと並び、狐が遊びまわっているようなもの。

 お湯に浸かっている他の人にもその情景は見えていたようで、皆目をぱちくりと何度か瞬かせるが、次の瞬間にはただの湯気に戻っているので、日頃の疲れかな?とその程度。


「あまり待たせても悪いですから、そろそろ紫乃さんの所に行きますか」


 頭の中のみんなも賛成と言ってくれたので、お風呂を上がることに。


 お風呂上りのキンキンに冷えた井戸水は体の中からシャキッと冷ましてくれる最高の水だったが、欲を言えば冷えた牛乳が飲みたかったのだが……まだ時代がそこまでよくないようだ。



ストック……は……これでスッカンピンです(笑)


いや、もっと書き溜めていたハズなのですが……おかしいですね?

そして、今更気がついたわけですが、今月は何故か大安が五回あるぅ?!


大安ってそこまで多くなかったかと思っていたのにっ!

こればっかりは完全に予想外です。


とりあえず今日までは、三話で頑張りますよー

出来れば次回も三話……頑張りたいのですが、どうでしょう?

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