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世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
12/60

12.不思議のなかみ

3/3

本日、最終話となります


 紫乃さんはお店を出て自転車に跨ると、路地とは違う広い道へ出てくれます。


「ねぇねぇ、銭湯は何処にいくのかな?この辺りだと……浜湯かな?それともアッチの方にある鶴の湯かな?」

「いや、自転車にのっているんだから少し離れた銭湯じゃないの?」

「とりあえず、確認したらいいんじゃない?」

「「「それだっ!」」」


 頭の中でみーちゃんとふーちゃんがはしゃぎながら何となく周りを探索してくれます。

 それを咎めるのは長女とばかりにひーちゃんがいい案を出してくれて、みんながそうして?という感じになったので、紫乃さんに確認をしようと思ったのですがやる気が漲っているのはふーちゃん。


「タエちゃん?どっちに行くのか分かってる?」

「銭湯でしょ。えーっと、浜湯とか鶴の湯とかはアッチでしょ?」


 いきなり声を掛けられたのでビックリしていたのですが、ふーちゃんが方向を指さして紫乃さんに確認しますが、どうやらみーちゃんの言う通りでこの辺りではなかったみたいで、浜湯や鶴の湯ではなさそう。そして紫乃さんから出た言葉は――。


「私がいつも行ってるのはやなぎ湯だから……」

「やなぎ湯?えーっと……」


 名前を聞いた瞬間、やる気が漲っているふーちゃんが多分探索の魔法を使ったのでしょう。風をギュッと圧縮、プラズマ化させて周りに一気に放出すると同時に頭の中にこの辺り一帯というよりはかなり広い範囲の地図が脳内に浮かびます。


「ちょっ、紫乃さんの目の前でしょっ!」

「あっちゃー。これどうやって誤魔化す?」

「とりあえず申し訳なさそうな顔をして……、はぐらかすしかないけど、ふーちゃんは銭湯までシーねっ!!」

「うぐっ、でもでも、場所は分かったでしょ?」

「シーって言ったよ……ね?」

「あ、はい。黙りますっ」


 ふーちゃんがちょっとやらかしてしまったので、えへへと苦笑いしてみると、紫乃さんが方向を教えてくれます。

 そして、走って追いかけると言おうとしたところ怒って凄く冷静になっているみーちゃんが、“ダッシュ”はまだこの時代だとあまり言わないと教えてくれて、慌てて言い換え、紫乃さんを追いかける形で大通りを北に向かいます。



 自分達がいつも住んでいた場所よりも少しだけ暗く、そして所どころでは煙が上がっているのを不思議に見ていると、紫乃さんが燻り火(いぶりび)だと教えてくれて、ボヤの原因になることが多いから、気がついた時はぎゅっと踏みつけて消して欲しいと言ってきます。

 そして、言われた通りに消しながらも紫乃さんを追いかけるのですが、頭の中はこの燻り火が別のモノに見えていて。


「この低温な燻り火だったら、焼き芋とか美味しそう」

「あー、芋ぐらいなら手に入るかな?あ、でも……」

「うん。火加減はいいかもしれないけど、くさい」

「タバコの火で料理は流石にないよね」

「火加減だけ最高だけど……それに、全体的にくさい」

「まあ、時代が時代だから。それにしても賄いは趣があってよかった」

「本当にねっ!」


 と、全く別の考え中。



 大きな通りをぐんぐん進み、獅子や麒麟の像がある大きな橋を渡ったら、右に曲がって少しだけ臭う川に沿うように道を曲がった先にあったのは、簡素な銭湯。


「おー。コレはこれでいいんじゃない?」

「初銭湯は時代を感じる良いお店だねー」

「年代的にお湯は熱めらしいよ?」

「熱いの?熱いの?疲れがどばっととれるタイプだからいいよねー」


 またも頭の中はわちゃわちゃし始めますが、紫乃さんが変な顔をしてこっちを向いてきます。


「あ、そう言えば……ちょっとだけマズいかも?」

「え?え?なにか私粗相しちゃいました?」

「タエちゃんが粗相したわけじゃないんだけど……お風呂セットをおかみさんから借りて来るの、忘れちゃって」


 お風呂セット……言われてみれば、家のお風呂じゃなくて今から入るのは銭湯。

 銭湯はある意味戦闘でもあるので、必要な武器や防具にあたるタオルやシャンプーが必要なわけで。


「これは、取り出すしかないね!」

「シャンプーとタオル、後はコンディショナーに化粧水それとマッサージ器具と……」

「ばーか、この時代はシャンプーもコンディショナーも、それにタオルも無いの!」

「えぇ!?そうなの?じゃあ、どうするの?」

「手拭いと石鹸……ぐらいだけど、石鹸ぐらいは買えるか貸して貰えると思うから、色々は全部仕舞っておいて、はい、この手拭いだけ見せれば十分」

「「そっかー」」


 ふーちゃんとみーちゃんが大きく頷いて、やっぱり長女らしくひーちゃんが頑張ってくれるのがちょっとだけ嬉しいのですが、ここは私たちの決め台詞?の場所でしょう。


「ふふふ。こんなこともあろうかと、ちゃんと用意してありますよー」

「え?え?手拭い?何処から出したの?」

「秘密ですよ。女には秘密がいっぱい……あるのです?」

「……分かってやっているわけじゃないんだね。まあ、手拭いがあるなら、問題は無いか。石鹸は私のを一緒に使って」


 ちょっとだけ後ろを向いて手間取っていたことは笑顔で誤魔化せたみたい。

 石鹸も借りられそうなので、銭湯を早速楽しむとしましょう。





お風呂回……すぐそこなのにっ!!(笑)


次回お風呂回です。

勝手に漫画やアニメになった時を想像して、サービス回をつくってみようと試みました。


でも、何故かここで引っ張る事に。

何となく、前回の三話が脳内わちゃわちゃ少な目だったので、今回は多め……。

たっぷり?を目指したら、こんな形になりました。


次回の大安吉日、またのご来店お待ちしております。

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