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世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
119/120

119.お昼のはなし

二話目ですよー

2/3


「お疲れさん、これから昼かい?」

「ええ、その予定ですよ」


 しっかりと何かを感じ取っている親方は視線を泳がせた。


「ああ、そう言えば……みなさんには伝えていませんでしたね」


 視線が更に泳ぐ親方を無視して、私は言葉を続ける。


「今日の夕方近い時間、あちらの方ですね」


 割れる橋の方よりやや南辺りを私が指さす。


「夕方近い時間?あっちの方は別になんにもないが?」

「ええ、何もない事が大事なんですよ」

「そんな事もあるのか?」

「あるんですよっと」


 言いながら、私はお客さん達が座っていた椅子を片付け始める。


「なあ、また――」

「そろそろ」


 親方の声に声を被せるように私が言おうとしたのだが、お弟子さんの一人がガッと両手をつかって机を持つ。


「また来てくれるよ、な!」


 力の差で机はピクリとも動かない。


「昨日の別嬪さん、格好良かったが、覚えているよ。だが、俺には多分通じないぜ?」


 どうやら、怪しい男との一件も見ていたのか、丁寧に昨日私がやっていたような別の場所を指して視線誘導をした後にその場からいなくなることが出来ないだろうとニヤリと笑う。


「それはそれは、――手ごわいですね?」


 ふふっと笑って、お弟子さんの目の前に向かって手を伸ばし、勢いを止めずそのままだと指が刺さるかのようにして柏手をうつ。



 パァンッ



 思わず目を瞑った弟子は、驚いた。


 机の感触が消え、握り込んだ手だけが残る。


 慌てて目を開けると、目の前にいたはずの別嬪さんは居なくなっていて、残っているかと思った椅子もそこにはない。


「あ、あれ?」


 みんなが気にかけていた別嬪さん。

 離れるなら、また来て欲しいという想いもあってちょっと強引な事をしたつもりはあった。



「狐に化かされたな?」


 ぽつりと親方が言った。


「――は?」

「イイ女と狐の逃げ足は速いんだよ……はぁ、ったく」


 なんだそりゃって顔の弟子が、少し赤くなる。


「そのうち遊びに来てくれ、って言うだけで――いい話になるのに、欲をかくからこういうことになったんだぞ?」

「いやいや、親方。え、俺が悪いんですか?」

「そうだよ。まあ、仕方ない。タエさんが最後に言っていた、あっちの方か?夕方だと仕事終わりだろうから、皆で見てみるか」


 カラッと笑う親方と眉を顰める弟子が、ぽつんと現場に残された。




「さてと、ちょっと遅いけどお昼はどうする?」

「折角だし、お寿司がいい!」

「お昼過ぎてるけど、通し営業のお寿司屋さん、あるかな?」

「ピコーン。あっちの方、あんまり栄えてないけど、味は良さそう」


 折角の魚市場が近い場所。

 がっぽり稼いだからではなく、持って帰っても使い道がないお金は必要ないわけで。


「じゃ、お寿司屋さんへれっつごー」

「「「「おー」」」」


 人の家の屋根の上で相談を終えたら、ふわっと地面に降りて市場の方へ。


 少しだけ市場から離れた路地裏。

 人通りは少なく、とても寿司屋がある雰囲気には見えない。


「あれ?この辺りにあるはずなんだけど?」


 ふーちゃんレーダーによる導きでお店の近くまで来たはずなのに、寿司屋っぽい建物は見当たらない。


「ねえ、ねえ、ここじゃない?」


 それでも、食いしん坊なつっちーが食べ物の気配を頼りに見つけた店はかなり寂れているように見えた。


「お寿司屋さんじゃなさそうだよ?米加工屋って書いてあるし」


 暖簾はかかっているが、店名に被せるようにあまりきれいじゃない字の紙が貼ってある。


「とりあえず、お腹減ったから入ろう?」


 ここまで来て、何も食べられないのは困ると言わんばかりに、私の身体は勝手に暖簾をくぐった。

 パッと店内を見るとかなり趣のある店構えで、外見とは違い清潔を保たれている。


「あぁ、女か」

「ええ、女ですが」


 キッと睨む店の親父の目は挑戦者を彷彿とさせる。


「安モンは扱わねぇ。こっちが上だ。ほら、米みせろ」


 いきなりすぎる言葉に何が起きたのか分からないのだが、呆ける様にしていると店の親父が眉を顰める。


「冷やかしだったら帰んな」


 シッシッと手を振ってきた。


「いえ、こちらはおす――」

「おいっ!」


 私の言葉を無理矢理遮って、手を引いて引き戸をガラガラと閉めた。


「御禁制の時代に名前を出す奴があるか。旦那にでも言われて来たんだろうが、早く米をみせろよ」


 御禁制?


 その一言で、ハッとしたのは物知りなみーちゃん。



「あ、あ、思い出した。もしかすると、この時代お寿司屋さんが一番厳しい時代かも」

「え?」

「どゆこと?」

「管理が外国に変わって、お米の流通が滞って……」


 みーちゃんが教えてくれるのだが、つっちーがニヤリと不敵な笑みを浮かべて言葉を遮った。


「あるよね?お米」

「まあ、ね」

「もういっそのこと、派手にやっちゃお?」


 ふーちゃんが言うと、みんなが一瞬だけ視線を合わせ、その後に同じ笑みを浮かべた。


 目の前に美味しいモノがあると分かっているのに、遠慮する必要は何処にもなかった。




食いしん坊が外すはずは無いのです。


まあ、あまり上手に書ききれるかは微妙ですけど(笑)


知ってる人は、「ほー」

知らない人は、「へー」


って、なるぐらいが丁度いいのです。


お寿司の一人前十貫前後、の由来の一つ。ですねー


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