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世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
118/120

118.本日、お昼まで

今日もいつも通りの三話でいけそうです

ふぅ、よかったよかった。

1/3


 美味しい朝食をすませ、腹ごなしを含める形でいつもの所へと向かうと、仁王立ちで待っている親方さんの足が、わずかに落ち着いていない。


「おはようございます?」

「……おう、おはよう!」


 ほんの一瞬、キョトンとした顔になった気はしますが、親方さんが挨拶してくれます。


「いや、昨日の夜はみんなで押しかけて済まなかった、と思ってな」

「いえいえ。賑やかで楽しい時間でしたよ?」


 笑顔を返すと、親方はスッと目を細めますが首を小さく振ります。


「ああ、本当にいい時間だった。で、今日はしっかり?」

「ええ、ただちょっといつもよりは、――短めにするつもりですけどね」


 あまり得意ではないウインクをパチンとしてみせたが、反応はない。


「そうか。いきなりじゃ、無いんだよな?」

「さて、どうでしょうね?」


 ギョッとした顔になりながら、笑ってここ数日使わせてもらっている湯呑を渡された。


「じゃあ、挨拶したばかりだが、この場所を選んでくれてありがとう、な」


 真っすぐ、親方が見てきます。


「偶々、ですよ。――丁度朝のオカラがパサついて飲み物が欲しかったんですよね」


 誤魔化すように、勝手に麦茶のはずのヤカンを傾けたのですが、朝の早い時間で、まだ全然色も味も出てない麦茶は薄い水と変わりなかった。


「タエさんなら、いつでも飲みに来てくれていいぞ?」

「助かります」


 親方は笑って、仕事の支度を始めるわとこの場を後に。


 私は見られているのも分かっていますが、ひょいっと机と椅子を取り出して、いつもの時間よりはかなり早い時間にもかかわらず支度を済ませたら、現場の少しずれた場所を見回します。


「親方さん、ちょっとだけ借りますよ」

「おう」


 作業現場の手前辺りにあった墨と筆を勝手に拝借。新人さんがいいんですか?って顔をした気もしますが、気にせずにクシャッと捨てたであろう紙を拾って板の上で伸ばしたら、裏の白い所が多い紙に「本日、お昼まで」と書いて筆を置いて、手のひらを紙の上にスッとかざして、一、二、三。

 紙を持って、いつもの机と椅子へ戻って、ヒイラギの葉っぱを隠す様に紙を立てかけた。


「さて、と。占い、します?」


 数名は私の支度が始まった時点で並ぶような、伺う様な状態だったので声を掛けると、頷いて。

 すぐに客席に着席します。


「さて、何を占いましょう?」



 ――――。



 昨日サボったので、お客さんは減るかと思ったのですが、何故かそんなことはなく。

 朝早い時間から始めたにもかかわらず、人だかりは増え続けるばかり。

 そして、ヒイラギに立てかけた紙を皆さん見ているはずなのに、昼の鐘が鳴ってもこの場をあとにする様子はなく、並び続けている人々。


「ちょっと待ってくださいね?」


 次の人、と流れ作業のように出来る限りの人を占い、御守りを渡してきましたが、少しだけ待ってもらう事にして、私は立てかけている紙を手に取ってパタンと折りたたみます。

 そして、ヒイラギの葉っぱは少しだけ呼吸ができると言わんばかりにのびのびとした様子だったので、そのまま左手で持ち上げて、次のお客さんにニコっと笑って、待っているお客さん達の方へ歩いて行きます。



「これはちょっと、無理だね」

「お金はたんまりあるから、もういいんじゃない?」

「お蕎麦もよかったし、最後は御大尽?」

「何か探す?」


 みんなが心配とワクワクの気持ちを乗せて言ってきますが、まずはお客さん達をどうにかしないといけない状態。


「ヒイラギさんに、お願いしましょ」


 ぽつりと言うと、みんなも納得してくれたので、並んでいる列の横を歩いてい行くと、不意に、くいくいっとヒイラギが重さを示した。


「すみませんが、こちらのお客様までとさせてください」


 私は出来るだけ丁寧に頭を下げると、ギョッと驚いた顔の並んでいる客。

 ジッと私の目を見てきたので、逸らさずにいると納得したのかコクンと首を縦に。


「終いだってよ。残念だ」


 両手を上げてまるで降参だと言わんばかりの派手な動きをしてくれたおかげなのか、後ろに並んでいた客達もすぐにバラバラに。


「ああ、では、一つ皆様にも――」


 言葉で呼び止めると、視線が集まる。


「何かくれるのかい?」


 期待を持った顔の客達。


「夕方近い時間――方向は――」

「どういう事だ?」

「その時になればわかりますよって、事にして下さい」


 にこりと笑うと、そうかいとだけ言って、今度こそ客達はバラバラに。


「では、占いを続けましょうか」


 残っていただいたお客さん達を順番に占って、占って。



 最後のお客さんを占い終わって、ちらりと現場の外掛け時計を見るとお昼というよりはオヤツと言われそうな時間のほうが近い頃。


「では、こちらを」


 御守りを渡して、お客さんが席を立つ。

 頭を何度も下げ、いつまでも振り返るので私のタイミングで息がつけなかった。


 ふぅ、と机に手を置く。


 そこにはいつもの親方さんが立っていた。



ゲームセンターのクレーンゲーム。

あと少しで取れると思うのですが、そこからが……長い。


私にはテクニックなどないので、所謂「大人の事情」というパワーが無いと、取れない事が多いのですが、それでも年に数回は運のいい日が。


もし現実にタエさんが居たならば、占って欲しい気はします。

それに御守りも貰えるなら欲しいのですが……、占いを信じているわけではないんですよね。


自分で書いていて面白いですけど、会ってみたいですね。こういう人(笑)


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