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世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
115/120

115.せいぞろい

今日もいつも通りの三話でよろしくお願いします

1/3


 流石に人の家の台所で稲藁を焼くのは難しいので、悩みつつも指をパチンと鳴らすだけで料理は温まり、白い湯気が食欲をそそる。

 自分が食べたいモノを持って行ってとみんなに伝え、持ってきた料理が温まると机の上に料理を置いて行く。

 すぐに、机の上は色々な料理がぎっしりと並ぶことになり、その様子はまるでマジックのようだとぽつりと零しながらも、お皿と湯呑の用意を忘れない辺りが流石は紫乃さん。


「これだけ美味しそうなものを前に、我慢しろっていうのは……酷じゃないかい?」

「すぐに、終わらせるので先に食べていてください」


 そう言って、勝手口から私は家を出るとポケットから取り出すのは七輪。

 本音としてはドラム缶ぐらいの大きさがあった方が火力もあっていいのですが、ポケットサイズだとギリギリはこれぐらい。

 稲藁を七輪につっこんで、フッと息を吹きかけるように藁に火をともすと、赤くパチパチといい感じに藁が焼け始めた。

 その上でサクにしたカツオに串を差したモノをしっかり藁火に当てる。


「うん、いいかな?」


 爆ぜる音は脂の滴り、鼻を突くのは火にあたり過ぎて焦げた匂い。


カツオのたたきが出来あがったら、熱がる素振りもないまま七輪の火にフッと一息かけると火は消え、燃えカスも気にしないままポケットに七輪をしまう。


「証拠隠滅っと」


 勝手口から台所へ戻り、串からカツオを抜き、人の家の包丁を勝手に使って、更にお皿を拝借する。

ここまでやって、今更もないので、またもポケットからスライスにしたタマネギ、生姜のすりおろし、ニンニクのすりおろしとネギやミョウガ等を出して、カツオの周りに散らす。


「これでいいかな?」


 ひとり呟きながら、ずらっと並んでいる机の端にカツオのたたきを置いたわけですが、机の上の料理には手の付いた様子はなし。


「犬じゃないけど、待てがこれほど辛い数分は初めてだったよ?」

「そうですよ。主役抜きで勝手に食べるなんて、無理ですよ?」

「お気遣い、すみませんね」


 先にどうぞと伝えても、お二人共待ってくれていたわけですが、ずらっと並んだ机の上の料理達。


 何故か視線は料理とは別の方を向いています。


「取り皿……というか、皆さんジッと見ているみたいですけど……そんなにソレ、気になります?」

「多分、甘いモノだろう?アレ」

「ですよ。甘いモノ、ですよ?」


 視線の先、机の端にあるのは……ひーちゃんが用意したレモンパイ。


 そして、口をあんぐりと開けているのはみーちゃんで、流石にマズいとわかったふーちゃんは吹けない口笛をピーピー鳴らし、何の誤魔化しも出来ていない様子。


「折角なので、味だけでもしっかりと覚えて下さいね?」


 私はみんなの不安な様子を理解したうえで、そう言うと紫乃さんもお母さんも料理に見向きもせず、すぐに皿にレモンパイを取り、フォークで先の方を落として口に入れた。


「なんて、なんて、さわやかな」

「これは、何処のだい?」


 ピタリと手が止まり、私を見て来る。

 記憶が正しければ……今はないモノを多分間違えて出しちゃっている気がするレモンパイ。


「――何処でしょうね?少し先、もしかしたらまた出会えるかもしれない味って事に、出来ませんかね?」

「ふーん?」


 したり顔の紫乃さん。


「ほらほら、他の洋食も美味しいですし、これが本物のカツオのたたき、ですよ?」


 パイの乗っているお皿に机の上の料理が一緒に置かれ、パクパクと口の中へと消えていく。


 紫乃さんもお母さんも一緒に湯呑のワインを飲みながら、色々な質問をしてきてくれるので分かる範囲で答えると紫乃さんが慌ててメモを取り出し、その内容を文字に書きとっていく。


「本物のハヤシライスは、肉の旨味があるんだねぇ」

「十分、今日のお店のモノも本物でしたよ?」

「食べ終わった後の満足感も違うし、それに何より……こんなにきれいな白米……」

「あー、そういえば、混ぜご飯が普通でしたね」


 オムライスの方もチキンの入ったケチャップライスで、アワやヒエなどの混ぜ物なんてない状態。


「この机の上だけでも、お札一枚じゃ足りないだろう?」

「一期一会の出会いに金銭的価値を量るのは、野暮では?」

「それにしたって、だろうよ?」

「私は泊めてもらうだけでも十分、十分すぎる程、助かったんですよ」


 心の底からの言葉を言うと、紫乃さんは厄介だと言わんばかりの顔。


「それにしたって、豪華すぎるじゃないか」


 机を指さし、言います。


「感謝の気持ちが豪華で悪い事なんてありませんよね?」

「……それを言われちゃうと、ねぇ」

「まあ、汚い話かもしれませんが、食べたらどんなものでも、一緒ですよ」


腹に入れば、後は出るだけ。


「全く、頑固だねぇ」

「紫乃さんこそ、ですよ」


 二人で笑いあっていると、お母さんが昨日とは別の一升瓶を床下収納から取り出します。


「食べ物に負けない様に、飲み物は私がだしますよっ」


 お母さんのその一言に、紫乃さんはおどろけ、ぽつりと一言。


「こりゃ参った」


 ワインが日本酒で少し濁る。


「……明日が怖いですね」




あれも、これも。


美味しいモノばっかり。


もし、お腹がなったら……作者の勝利でしょうか?(笑)


……自分のお腹はなったので、現時点でドロー以上はない気も。


負けなかっただけ、いいのかな??


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