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世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
108/123

108.パー、の前

3/3


本日ここまで


 この後、少しだけ面白い出来事が続いた。


 泣くほどの状態だった先輩女給さんを抱き寄せる軍人さんが一緒に頭を下げて来て、一緒にお酒を飲む許可を得ることになったのだが、大将が何処からともなく秘蔵の一升瓶を開け、祝い酒だと猪口一杯を客にまで振る舞う運びに。


「うちの娘、幸せにしなかったら――」

「ああ、任せろ。命に代えても……だ」

「ふっ――流石うちの娘だ。いい目してるだろう?」


 大将の目はとても優しく、心から娘を心配している親そのもの。

 そして、振る舞われた一杯に親方衆が心を打たれないはずもなく、この一日が後々語られることになったとか、ならなかったとか。


 そんな一幕があり、先輩女給と軍人さんはお店が終わった後一緒に街へと消えて行った。

ですが、お店の女給の話題は尽きない。


「あんなに格好いい仕事終わりは、私には無理だね」

「でも、ちょっとだけ憧れない?」

「軍人さんの言うように、田舎は逃げ場ないからねぇ。覚悟が無いと……」


 夜の賄いは大将が作ったものの、昼の賄いで出たハヤシライスのインパクトが強すぎたのか、いつもの空気が漂い、おかみさんが大将を励ます事に。

そんな時間があったものの、賄いを食べて仕事が一段落つき始めるとぱらぱらと女給も帰り支度が始まります。


「はい、今日もお疲れさん」


 おかみさんが帳簿を確認しながら、手早く今日の給料を渡す。

受け取った女給達はそれをポケットに忍ばせると、頭を下げてお店を後にしていく。

 そんな様子を、私はこの店に来て初めて見ることになった。


お客さんのお酌が終わって戻って来た私におかみさんから声が掛かる。


「タエさん、いいかい?」


 パッと客席側を確認すると、酌をしていたお客さんは顔を真っ赤にして、へべれけの状態。他の女給さんが水を汲み、しばらくしたら帰すという。


「お待たせしました」


 客席側が問題ないのであれば、と会釈一つしながらおかみさんの所へ行くと、おかみさんは帳簿とにらめっこ。


「さっき、大将とも話したんだが……給料が割り出せなくてね」

「皆さんと一緒でも十分すぎますよ?」

「アレも、コレも、教わって……何もなしなんてお天道様も許さないよ!」


 それにとぶつぶつというおかみさんの言葉は的確。


「タダより高い物はないんだ。馬鹿言っちゃいけないよ」


 そう言って再びそろばんをはじくものの、満足のいく結果は出そうになく、どうしようかと考えていたので、私なりの落としどころを思案してみたのだが、どれもこれも多分おかみさんは却下する気が。


「どうしましょうかねぇ」


 思わず私も言葉をこぼすことに。

 そう言えば、紫乃さんをついさっきから見かけなくなった気がして、視線を彷徨わせてみると、子供達がうつらうつらとしていて、それに気が付いた紫乃さんは使い終わった前掛けをひざ掛け代わりにかけてあげていた。


「なるほど?これは――」


 私なりの答えが思いついたので、ちょっとだけ脳内会議をしてみる事に。



「ねぇ、お給料もらっても……」


 私が確認をするようにみんなに問うと、賑やかに帰って来る声達。


「うん、持って帰れないよね。あ、でもでも、明日の朝食は豪華になるよ?」

「それと、今夜も皆でパーッとやっちゃう?」

「ふふん、みんなが色々とやっている間に買出しは完璧ぃ!」

「美味しいモノは逃げない」


 どうやら知らないうちに、みんなも勝手に動いていたみたいですが、さっき一緒に笑ったようにおかみさんを気に入っているみんな。


「昨日のアレだけじゃ、ちょっと足りない?」

「んー、でもでも料理も残っちゃいそうだし、迷惑料はむしろ払わないとマズくない?」


 私の中のみんなは好き勝手に駆け回りながらの会話。

 いい形の落としどころを考えていると、意見が次第に纏まります。


「だったら――」

「それなら――」

「それ、めっちゃ格好……いいかも!」

「美味しい為には、仕方ない」


 私達は自分達にとって一石二鳥……三鳥ぐらいに都合のいい事を思いつけたので、早速その動きをしてみる事に。


 その為にもまず、やらないといけない事は協力者の確保。

 とはいっても、私達のたくらみに賛同してくれる協力者なんて一人しかいないわけで。


「紫乃さん、紫乃さん、ちょっといいです?」

「ん?……おかみさんも悩んでいるし、どうかしたのかい?」


 コクンと小さく頷いて、こしょこしょと耳打ちすると、紫乃さんはかなり驚いた顔。


「本気かい?」


 再び頷いて見せると、一瞬だけ迷いを目に浮かべたのですが、スッと目を閉じてその迷いを私に見せない様にした後、ゆっくりと頷く紫乃さん。


「分かったよ。じゃあ、いつもの場所で……いいのかい?」

「面倒な事をお願いしてすみません」


 頭を下げると、色々な含みを持たせた目で私を見てきたので瞼を閉じる形で合図を送った。


「おかみさん、まだかかりそうかい?」

「あー、紫乃。そうなんだよ、どうにもね……」

「だったら、とりあえず子供達だけは寝かせたら、どうだい?」

「ありゃ、忘れてた。いけなかったね」


 子供達は眠そうで、だけど目をしばしばさせながらおかみさんを見て、コクンと一つ頷きます。





本日も読んでいただきありがとうございます。


空気、雰囲気を楽しんで貰うタイプな作品なので、作者がアレコレ語り過ぎると崩れそうなのが困るところ(笑)


広げた風呂敷を畳むのは当たり前ですが、畳み方っていうのがまた、ええ、難しい。


奇麗に……出来るだけ畳みたいのですが、畳めれば私的には御の字。


でも、楽しんでも貰いたい。と、欲張っています。


どうなる事やら……。


さて、次回大安吉日は……22日。……間が短い?気のせい??


……実は28日の次回の大安と間違えていて……アブナカッタ(笑)

慌てて修正しました。……最近ケアレスミスが多くて困ったさんです。



では、次回の大安吉日にまた読んでもらえるよう、本日は閉めさせていただきます。

ありがとうございました。


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