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世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
102/120

102.つぎのあじ

本日ここまで

3/3


 新しいメニューは話題の的に。


 店内はさらなる賑わいを見せ、仲間内と来ている親方衆が外で待っている次の客にも情報を伝え、忙しさは変わらないままかと思っている所に、特大の戦力であるおかみさんが顔を出す。


「なんとかなっているようだけど、私が居ないとダメだね?」


 その一言にホッと一安心したような顔になったのは紫乃さん。


「おかみさんおかえり。待っていたよ!」

「紫乃がここまで泣き顔になるとは、何があったんだい?」


 紫乃さんとおかみさんが簡単な説明をしてくれている間も、厨房は大忙し。


 ジーっと見上げる視線に気が付くと、さっきの子供達は小奇麗になっていて、ふわりと石鹸の香りがした。


「なるほどね。じゃあ、ココからは私がバシッとやってあげるから……紫乃、とりあえずハラヘリなこの子達に食い物と、出来そうな事はないかかんがえておいとくれ」


 小さな頷きを紫乃さんはすると、タタタっとこっちへ駆けて来る。


「大将が忘れ始めているかもしれないから、若旦那の所の地の料理ってどうにかなる?」

「……私がやっちゃっていいんですか?」

「常連にアレだけ満足させれば、大将も気が抜ける事もあるからね」


 紫乃さんなりの気の使い方だ。

わざわざ指摘する事は考えず地のモノが何か考えてみるが手掛かりは少ない。


「どの辺りの出身か――ってズルいですけど、確認してきちゃっていいですかね?」

「うん、それが一番早いね。頼むよっ」


 そう言うと、母性たっぷりな顔に早変わりした紫乃さんが子供達と奥の方へ。

 おかみさんにすぐに戻ると伝えてから、若旦那の所へ行くと、かなり驚いた様子でハヤシライスをかけたオムレツを――まるで、崇める様に食べている軍人さん。

 その様子は私だけではなく、お客さん達もおかしかったのか、笑うに笑えないような顔をして周りも見守っている様子。


「食事は楽しんで頂けているようですね」

「ああ、こんなに美味いモノは初めてで。それに、さっき聞いた限りじゃ値段も安い。約束というのは守れば守るだけいい事があるものだな」


 しみじみという声には、色々な感情がこもっているように感じた。

 でも、今は話を聞きに来ているので、確認をする。


「地のモノというご注文があったと思うのですが、出身は?」

「ああ、土佐だ」

「なるほど。土佐でしたか」


 私と軍人さんの会話に若旦那がスッと横から入って来た。


「土佐か、美味いモノが多いな。だから地のモノ……なるほど。義理堅さも頷ける」


 若旦那がニヤリと笑う。


「そう……なんですかね?」


 生まれというよりは、人間性のような空気を出す軍人さんだが、褒められていることは分かるのか、少しばかり照れ臭そう。


「それでしたら、もう少しだけお時間頂いていいですかね?面白いモノ出しますから」

「面白いモノ?」


 若旦那さんがぐるんと首を回してまでこっちを見て来た。


「紫乃の言う通りだとすれば、是非頼みたい!」


 言いながらガシッとかなり力強く腕に近い手を掴まれ、握手をする事に。

 あまりに突然の事で、私は驚きながらも頷きを返したのだが、このやり取りを見ていた親方衆の一人が、声を上げる。


「タエさんを独り占めはズルいぞ?一段落がついたなら、こっちに来て喋らないか?」

「おっ、タエさん?戻って来たのか?」


 一人が声を掛ければ、必然と周りも私に声を掛けてくれるのは嬉しいが、今は面白いモノを作るのが先。


「トクベツを作るので、その後でお願いしますね」


 ウインク一つをパチンと振りまいて、さっさと厨房に戻ったのですが、何故か客席側が凄い盛り上がりに。

 そして、お酒の注文が連続して入ってくる事になり、私は厨房で早速地のモノを作る事に。


 ただ、許可はとっておくに越したことは無い。


「大将、当てがあるので地のモノ作ってもいいですか?」

「地のモノ?あっ、そう言えば注文が入っていたっけ?」

「ええ。お客さんは怒っていませんから、大丈夫ですけどここにはない食材も使いたいので、一応許可を取ろうかと」


 そう言って、ポケットからするりと取り出したのは、昨日のお昼に頂いたサバの半身。

 昨日の美味しかったサバがそのまま残っている状態。


「いいぞ?って、サバか?おおう、コレは誰が見てもわかるぐらいいいサバだな。当たる事はまあ少ないだろ。ただ、ああ、おい、新聞もってこい。まな板にぬらして引いてやってくれて」


 基本的に肉料理が出る洋食屋。魚の取り扱いはゼロではないものの、肉と同じまな板を使いたくないという大将の気遣いと思いからの言葉に、いち早く動いたのは子供達。


 それはまるでチャンスを伺っていたとばかりの素早い動きで、裏の奥へと駆けていき、とんぼ返りで新聞を持ってくると、何も言わずにグイっと差し出して来た。


「ありがとう」


 私の言葉には反応せずジッと上目遣いで見てきたので、受取った手と逆の手でそっと頭を撫でてあげた。


「ん」


 ふわりと再び、厨房に石鹸の香りが広がった。




読んでいただきありがとうございます。


美味しいモノが終わったら、美味しいモノが始まります(笑)


この時代の洋食屋さんだとエビフライや魚のフライもあるはずですが、そこはあえて、肉系強めの洋食屋さんと相成りました。

洋食屋さんの魚介。

エビフライが食べたくなりますよねぇ……。

たっぷりのタルタルにハヤシライスかけて貰いたい派です(笑)


ああ、脱線してしまいました。


こんな前からある料理、今も残っている料理。

時代を超えて、残ってくれていて有難い限りです。


さて、次回は11日かな?


今回も読んでいただき感謝、感謝です。

次回の大安吉日、またのご来店お待ちしております<__>

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