表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
101/120

101.閑話 ゴミ漁りの子供達/はじまりの次

二話目です

2/3


「そのままは流石にね……裏で泡が立つまで洗ってからはいっとくれ」


 よく分からないまま連れていかれた銭湯だったが、すぐに入ることは出来なかった。

 後ろをついてくる二人は未だにキョロキョロとしているが、いつもより少しばかり調子が良さそうに見えるのは、さっき食べたパンのお陰だろう。


「こっちへおいで。お湯を貰って来たから、さっさと洗って……ああ、服が無いか。ちょっと大きいけど、取ってくるから言われた通り洗ってな」


 ここまで連れて来たおかみさんと言う人に桶に入った湯を貰って、手拭いと石鹸を渡される。

 水浴びはする事があるが、お湯は久しぶりだ。


 元々、東京駅で下ろされて、そこから何とか毎日を必死に食つないできた。

 ただ、新しい大人が割り込んできて、いつもの場所に居られなくなって、仕方なく食いつなぐ為に来てみた銀座だが、人が多すぎる場所は思っていたより隠れられない。


 自分達三人に繋がりはない。ただ、一人では生きられないから集まった。

 人数がもっといた頃もあったし、一人だったこともある。

 面倒を見ているという程、気にしている訳じゃないが、生きる為には人数が必要だ。


「これ?洗う?」

「そう」

「あわあわ、美味しそう」

「食べ物じゃないから」


 お湯に石鹸を入れると泡が出来たが、自分達で洗い始めると色が一気に悪くなる。

 服を脱いで、頭から水をかぶって、石鹸を浸した手拭いで頭のてっぺんから足の先まで洗ったが、最初にあった泡は一つも残らない。

 三人でゆっくりと水浴びをしたのなんて……いつぶりだろうか?少し前にあった雨の日は気持ちよかった気がするが、食べられなかったひもじさしか思い出せない。


 言われた通りに二度目に水をかぶってみると、少しだけ泡が残った。

 三度目になると、泡がしっかり残り小さい二人は少しだけ楽しそうに笑うようになった。


「よし、まあいいだろう。ほら、しっかり湯に浸かって、そうしたらまた垢がでるだろうから、今度は風呂場でしっかり洗いな」


 パチンと強めに背中を叩かれて、銭湯の中へ行くと『もわん』と温かい空気に包まれる。


「この子は、コッチで見ておくから。ノロノロせずに、ちゃちゃっとおし」


 まるで野良猫を掴まえる様に、小さい女の子は女湯に連れていかれ、チビと自分二人でお風呂へ。

 かなり久しぶりのお湯。

 少しだけ、気持ち悪くなったのは胃が空っぽだったからだろう。

 言われた通り、チビを洗って、自分も洗った。



 銭湯を出る前に新しい服を貰った。

 服はおおきすぎて、ぶかぶかだ。

 でも、とってもキレイだった。


「寝泊まりはウチで、昼間は下働きだ。代わりに、飯は……腹一杯は無理かもしれないが、毎日は食わせてやれる」


 オレは右手を繋いで、チビは背中でうたた寝して、女の子は左手を繋いで歩きながらおかみさんがそう言った。


「飯が食える。ゆっくり、寝られる?」

「ああ、守るとは言わないが、働くならそれ相応にね」

「とられない?」

「人の分を取ったら、その限りじゃあないがね」

「とらなければ、とられない?」

「ああ。男だからも、女だからも無いよ。子供だとか大人だとかも無いよ?」


 その声は、遠い昔に聞いたかもしれない声に似ていて、最近は聞いたことない声だ。

 イジワルな大人。奪う大人。盗る大人。そいつらとは違う『声』だ。


「泣き言は……聞いてあげられる時代じゃない。言いっこなしだからね」


 優しい目で吐き捨てるように言われた。

 あまり意味は分からなかったが、殴って来るとは思わなかった。


「私、とられない?」

「しっかりと働いたらね」

「じゃ、やる」


 早々に女の子は大人に負けた。


「このチビは……まだ……」

「……考えな。お前さんの働きで二人分、それがこの子の為になるなら、いいさ。ただ、そうじゃないだろう?」


 オレたちはゴミ拾い。


 タバコの吸い殻からタバコをつくったり、捨てられた雑誌を安く売ったり、どうしても食べられない時は缶詰の底も舐めたりした。

 駅の近くの弁当箱のゴミは人気だったけど、体格差もあって殆ど食べられたことはないし、金属片が売れると拾ったがアレは一日でやめた。


「こいつは、こいつがなんとかする」

「そうかい」


 今も背中で寝ているぐらい、体力が無いチビ。

 新しい場所では今までと一緒ではいられない。


 そんな自分達を上からジッとおかみさんと言う人が見て来る。


「トクベツは、無いからね。とりあえず、店に戻るよ。今の恰好なら、店内に入れられるわ」


 何故見られたのか分からない。

 ただ、少しだけ足早になった気はする。


 ゴミを拾って、必死に生きて来た。


 いつもと違う風が吹いた気がする。


「明日から、しっかりと働いてもらうから、先行投資もやむなしだね」


 明るい顔でおかみさんがそう言った。


 その言葉はすぐに意味が分からなくて。

 お店に着いても、分からないのに、ゆっくりとゆっくりと沁みる。


「明日」

「あした」


 自分が発したら、女の子も同じように言った。


 今までなかったもの。

 これからも無いハズのモノ。


 なぜか心がざわついた。




時代が違うって、調べてみるとなかなか今の人間なので過酷さが伝わりづらい。

そして、過酷な状況に慣れていないから、あまり重たく書けない。

でも、読み物として考えると、あまり重くなりすぎるのも考え物。


スカッととはいかないまでも、ホッと胸を撫で下ろせるラインでかけたかなぁ??


話数的にも、内容的にも、気になるところだったりします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ