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恋敵? SIDE-T

今俺達はバスに乗り、林間学校で使う市で運営されている施設へと向かっている。

バスの揺れと窓から差し込む太陽の光に照らされ、俺は心地よくて意識を手放しそうだ。

俺が眠気に耐え切れずそのまま夢の世界へ向かおうとした時、通路を挟んで隣から声をかけられた。


「東哉、着いてからの事なんだけど……って、ゴメン寝てた?」


俺がビクッと身体を反応させたから寝ていたと思ったのか、斎が申し訳なさそうにしている。

俺はまだ寝ている頭を再起動させて、何とか答える。


「いや大丈夫、寝かけてただけ」


俺がそう言うと、斎は安堵した様子を見せた。

そして、言いかけていた事を話し始めると思ったのだが、斎は何故か黙ったまま話さない。

よく見てみると斎の目線が俺からそれていた。

斎の目線がどこを向いているのか見てみると、俺の隣の席を見ている。

そこには今さっきの俺と同じで、睡魔からの誘惑に負け眠っている天子がいた。

天子の元からの柔らかなイメージも合間って、天子の周りの空間だけ他よりも緩く感じる。

俺と斎はそんな天子を見て心が緩み、微笑みながら逆に凍り付く。


「……って、まったりしている場合じゃなかった」


一分後、我に帰った斎が何かを振り払う様に頭を横に振る。

その言葉で俺も意識が現実に帰って来て、斎同じ様に頭を振る。

きっと、俺も斎行っちゃ行けない場所に逝きそうだったからに違いない、ウン。


「ああ、…よし。東哉、話しを戻すけど……」


斎が色々な物を振り払いながら改めて俺の方を向き、なるべく小さい声で話しかけてくる。

その仕草から他の奴には聞かせられない秘密の話だと思い、俺は斎が話しやすいように顔を近づける。


「今から行く林間学校がある場所に莉奈がいるかもしれないけど…あんた、どうやって捜すの?」


斎の聞いてきた内容の意味が一瞬わからなかった。

とりあえず俺は困惑しながら答えを返す。


「どうやってと言われても、とにかく片っ端から捜していくしか……」


俺がそう言うと、斎は少し俺との距離を離したと思うと、いきなりデコピンされる。


「痛っ!斎、何するんだよ!?」


俺はおでこを摩りながら斎に抗議するが、さらに怒られる。


「お前は阿呆か?点呼や先生の見回りとかあるのよ。それどうするか考えてるの?」


斎に当たり前の事を言われ、俺は何も考えていなかった自分が恥ずかしかった。

そんな恥ずかしさで落ち込む俺を見て斎は、溜め息をはく。


「はぁ……本当、東哉は莉奈の事になると後先考えてないわね」


斎は呆れた表情で俺を見ていた。


「……仕方ないわ、それは私達に任せなさい。後の事は私達に任して、あんたは莉奈を捜しなさい」


しかし、斎は表情を崩し優しい微笑を返す。

何だか見透かされた気がして嫌だったが、斎の心遣いが嬉しかった。

だから俺は一言だけ伝える。


「……ありがとう」






バスが止まり、1番前の席に座っていた杉下先生が後ろにいる俺達の方を向く。


「よーし、お前ら。各自それぞれ自分の荷物を持ったら、この先にある広場で整列しておく事。そこで、これからの日程をしおりで確認する!!以上だ、ほら動け」


杉下先生はそれだけ言い、いまだに潰れている浩二と自分の荷物を担いでバスを降りて行った。

先生バワフルすぎる。

俺達もそれに倣いそれぞれ荷物を持ってバスを降りる。

降りてすぐにひろがる広場まで歩くと、すでに他のクラス毎に集まっていて、三組の所がやけに騒がしかった。

何が起きているのか気になった俺は、二人に聞いてみる。


「あのさ、気になるからちょっと行ってみないか?」


後ろを振り返りながら聞いてみると、二人とも頷いた。


「いいんじゃない?集合かかるまで暇だし」


「二人が行くなら私も〜」

斎と天子からの許可もおりたので、早速向かってみる。

近づいてみると、喧騒の中心には三組の先生と生徒がいるのがわかった。

周りにいる生徒はただの野次馬で、中心にいる二人の成り行きを見ている。

俺達はさらに近づき二人の顔がわかる所まで来た時、斎が驚いた声をだした。


「あれ?あそこにいるの美波先輩じゃない?」


斎が中心で先生と話している生徒を指差しながら言った。


「斎、あの人知ってるのか?」


俺が思ったことを聞いたら、斎が驚いた声を出した。


「えっ!東哉、莉奈から聞いてないの?」


斎が驚愕の表情を表すが、俺は莉奈からあの男子の話しを聞いたことはない。

俺が頭を横に振り否定すると、今度は斎だけじゃなく天子まで驚いた。

そして二人で小さな声で俺に聞こえないように話始める。



「何で東哉は知ってないの?」


「多分莉奈ちゃんもあまり言いたくなかったんじゃないのかな?」


「……なるほどね」



話が纏まったのか、二人は顔を離すと俺の方を向く。


「知らないなら教えてあげるけど……」


斎は言いにくいのか、いつになく歯切れが悪い。

そんな斎の代わりに天子が説明してくれた。


「莉奈ちゃん、美波先輩に告白されたんだよ〜」


天子の言葉に俺の頭は少しの間停止してしまう。

そして、やっと動き出した俺の頭から弾き出された言葉は簡単だった


「……マジか?」


俺の呆然とした表情に苦笑いを浮かべながら、斎は頷いて肯定した。

爆弾を落とした天子は、相変わらずニコニコ笑いながら俺を見ている。

俺は呆然としたまま思わず美波先輩の方を見ると、先輩と目線があった。


「……君が東哉君か」


「おい、まだ話は終わってないぞ美波!何で学校に来ないでこんな所にいるんだ!」


美波先輩は俺の方を向くと、今だに説教をしている教師を流して俺の方へ向かって来た。

学生服の上から濃緑色のトレンチコート羽織っているからか、何とも言えない威圧感を醸し出している。

それに今まで会った事もないのに、何故俺が誰かわかったのかが不思議だった。

しかし今さっき天子から聞いた事を思い出し、気持ちが反抗的になり俺は先輩を睨む様に対峙した。

そんな俺を気にする事なく近づいて、美波先輩はだけ俺に呟いた。


「……莉奈さんを捜すのを諦めるんだ」


それだけ言い美波先輩は立ち去って行った。

俺なんて眼中にないと言ってるかのように一別しただけで。


「……どう言う事だ?」


俺は美波先輩が呟いた言葉の意味がわからず呆然としてしまう。

ただ、美波先輩の言った言葉がとてつもなく重く感じた。



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