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第一部 Epilogue 君に想う事

今回は少し短いです。

二週間空けると公言しましたが、前回ので終ると微妙なので少し付け加え程度でエピローグをあげさせて貰います。

「はぁっ…はぁっ…」


私は乱れ始めた呼吸に構うことなく、『励起法』により深度を深めた身体で広い部屋の中を全速力で駆け回る事1時間近く。

私の流れる視界の中心には七凪さん。

部屋の中央に立っていて、私に向けて鋭い眼光を向けている。

しかし私は怯むことなく、七凪さんの動きを伺いながら身体を振るようにタップダンスにも似たようなステップを踏む。

七凪さんが腕を振り手に持っている物を投げてきた。

部屋の照明を反射し輝く、細長い銀色の物体…ナイフを。

正しくはペーパーナイフだけれども、『励起法』により身体能力を引き上げた七凪さんから投げられたそれは普通に簡単に私を貫くだろう。

気を少しでも抜けば大怪我だ。


「どうした動きが段々遅くなってきてる、励起法を行う集中力が切れてきたか?」

「っ、まだ行けます!」


七凪さんがナイフを投げる手を止めることなく、私に指摘してきた。

私は少し重くなるつつある身体に鞭打つと、強がりながらも答え返した。

身体を無理矢理にも動かしていると頭は妙に別の事を思い付く。

例えばあのナイフはどうやって取りだしているのだろうか? とかだ。

七凪さんは手に持っている分のナイフを投げ終わると、すぐに手を閉じ開く。

それだけの動作をしただけで、次の瞬間には七凪さんの指の間にナイフがずらりと挟まれているのだ。

そんな手品師も真っ青な芸当を、七凪さんは延々とやってのけている。

しかも、投げたのだからペーパーナイフが床には転がっているはずなのに、足元や壁には一切落ちても刺さってもいなかった。

そんな疑問が簡単に出てくる程一つのルーチンワークの様な訓練を、既に数週間七凪さんの元で修行を行っている。

だからだろう、最初の頃より多少は余裕も生まれてきていたからか、気づけば私はこんな事を呟いていた。


「結構、励起法の持続起動に慣れてきたかも」


私の呟き声を拾ったのか、七凪さんが目を細め私を見る。


「言うようになったな。それでは本数を増やすか…ちゃんと避けきれよ?」

「えっ?」


七凪さんの言葉の意図が分からず、私は呆けた声を零す。

そんな私に構うことなく、七凪さんは両手に持っている十本のペーパーナイフを一斉に投げてきた。

私は慌てそうになる気持ちを必死に抑え、飛んでくるペーパーナイフを励起法の深度を下げ見据える。

瞬間、自分だけ時間の流れが遅くなったかの様に周りの動きがスローモーションになる。

目の前には私に向かって迫り来るナイフの群れ、そこにはほんの少し隙間がある。

その僅かな隙間に身体を飛び込む様に滑りこませた。

実にこの間、コンマ5秒。

しかし、そんな私の意識が逸れたほんのわずかの間に、七凪さんは今さっきまで立っていた場所から煙の様に姿を消していた。

前にも同じ事があった、その時は確か。


「っ!!!!」


私はすぐに後ろを振り向くが…


「よく分かったな、だが……」


私が飛びすさろうと足に力を貯める僅かの間に、七凪さんは一足で詰めより私の首筋にペーパーナイフを添えた。

驚愕した私はその場で体が固まり、動けないでいる。


「私から意識を少しの間でも逸らしたな。一瞬とは言え、能力者同士の戦闘ならば殺されるには十分な時間だ。何度も言う事だが、解るな?」

「……はぃ」


私は自分が慢心したことを恥じる。

今の私にはそんな事さえ許されない。

そしてそれは、私自身が求めた結果であるのだから。


「とりあえず今日はここまでだ。一時間の休憩を挟んで午後からは座学だ」


そう言い残して七凪さんが部屋を出ていく。

それを確認してから私はその場に腰を落とし、仰向けに倒れる。

そのままゆったりと休んでいると、ふと急に気になった。


(今頃、東哉はどうしてるのかな?)



血は繋がってはいないとはいえ、家族として10年間一緒に過ごした大切な人。

彼にはこんな非日常に関わる事なく、普通に生きて欲しい。

わざわざ過去を振り返る事など無いのだから。

そんな事を思っていると、急に胸の奥が締め付けられるような感じがして身体が震える。

最初は急に何が起こったのか分からなかった。

しかし、自分が襲われている恐怖の正体について理解すると、自然と口が動いた。


「…会いたいよ」





悲しそうに表情を曇らせ、里奈自身の本当の気持ちが心から零れた気がした。


と言う訳で第一部はこれにて終幕と相成ります。

次回は、今度こそ二週間空けての第二部開始となります。



それではまた!!

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