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侵入 SIDE―T

今回は改訂で少々遅れました、申し訳ありません。

「なんだよ、これ……」


目の前に広がる思いもよらない光景に、俺はただ呆然と呟きを漏らす。

『地獄列車』に乗り俺がついた場所は、黒いコンテナが積み重なっている地下ターミナルの様な所だった。

フランベルジェとの戦闘をその場の閃きと勢いでなんとか凌ぎ、目標であった『地獄列車』を見つけ乗車した。

次に『地獄列車』から聞こえた声の主を助ける事が出来れば、今回の目的としては上出来だっただろう。

しかし助ける事だけを考えていた俺は、『地獄列車』が何処に向かっていたのかなど、他の事を全く考えていなかった。

おかげで今、目の前に広がる情景に俺は動揺を隠せないでいる。

そして地下に広がる広大な空間を呆然と見ていると、『地獄列車』は機械で動いているであろう方向器によって方向を変えながら速度を落としていく。

俺は誰かに見つからないように、タラップの所で身を小さくし隠れていた。

そうしている間に『地獄列車』は速度を更に緩めていき、何処かの建物に入って行く。

そして金属と金属が擦れあうブレーキ音を立てながら、ゆっくりと停車。

物音が一切聞こえない程静かな薄暗い建物の中で、俺は身を潜める。

俺はどういう状態なのか確認する為、物陰から少し顔を出しながら周り見渡した。

天井からの降り注ぐ照明の光が弱い。

薄暗い為に上手く先まで見ることは出来ないが、周りにコンテナ等が積まれている所から、ここが倉庫らしき建物である事が想像できた。

しかし、薄暗さやコンテナ等が邪魔になって視界が悪く、これ以上ここいても他に分かることがない。

そこで俺は、もう一度回りを見渡して誰もいない事を確かめると、『地獄列車』から降りて近くのコンテナの影に身を潜める。

回りを警戒しながら、とりあえず地獄列車の先頭を目指してしばらく先に進んでいると、前の方から男達の声が聞こえてきた。

俺は慌てて物陰に身を隠しながらも、何か分かるかもしれないと思い男達の会話に耳を傾ける。


「……おい、搬入の方は終わったか?」

「はい、今『ケージ』はいつも通りにA研究棟の方まで搬入してきました」

「なら今日はもう上がっていいぞ………どうした?」

「いえ、仕事とは言え………少々」

「だが、関わっちまった以上、後戻りもできん。お前も、いい加減割り切れ」

「でも主任!! …スイマセン」

「解ってるさ…」


男達がこの場から離れていくのを感じて、俺は気を緩める。

どうやら男達の会話を聞いた限り、地獄列車から聞こえてきた『声の主』は研究棟にいるようだ。

でも、今さっきの会話は何だろう?

ともかく今は動く事が先決だと考えた俺は男達がいた場所に視線をやる。すると、柱の所に倉庫内の地図らしきプレートがあり、何処が研究棟に繋がっているかも書かれてある。


「よし、待ってろよ。今助けに行く…」


俺は気持ちを言葉にして意気込み、A研究棟を目指して進んで行く。






それから数分後。


「……何をやってるんだ、こいつは?」

「……さぁ?」


男は訳がわからないと雰囲気を漂わせながら、相方である同僚に話しかける。

しかし、分からないのは同僚の男も同じだったらしく、気の抜けた返事が帰ってきた。

幾つもの画面が壁一面に等間隔で並んでいて、二人はその中にある一つの画面を凝視している。

その画面の中には一人の少年が写っており、こそこそと動いてる様はいかにも不審者であった。


「匍匐前進……ローリングに…………エルード…」

「なぁ、もしかしてこいつ……」

「あぁ、完全に“金属の歯車”の影響を受けてる……勘違いの馬鹿だ………ったく、どこから迷いこんだんだ?」


男達が呆れる様に見ている画面に写っている少年、正体はあからさまの東哉だった。

『励起法』で身体を強化しながら東哉は、どこぞの潜入兵並の動きを見せながら進んで行く。

確かにその動きは、倉庫内にいる整備員や警備員達の視線をうまく避けているつもりだった。

しかし、巧妙に隠された監視カメラにはばっちりとその姿を写していた。


「……とりあえず警報だすか」

「……あぁ」


監視カメラの画像をみる男達は、やや脱力感を感じながら警報のスイッチを押し込んだ。

そうして東哉の意気込みは報われることなく、侵入者の存在は知らされる事となる。






「っ警報!? そんな、見つからない様に上手く出来てたはず……」


『励起法』によって身体を強化していたお陰で、普通見えない距離の相手すら確認することが出来た。

それで何とか見つからず、もう少しで倉庫を抜けられるところまできたのだ。

それなのにどうして……。


「侵入者発見!!」

「っ!? もう見つかったか!」


状況に混乱にてその場で悩み立ち止まってしまった俺は、すぐに警備員に見つかってしまう。

見つかった理由がどうであれ、捕まる訳にはいかないから俺はとにかく逃げ出した。

それから数分後。

『励起法』をしていたお陰で俺を追っていた警備員を撒くことが出来たが、闇雲に逃げたせいでここが何処だか分からなかった。

どこかにまたプレートがないかと回りを見渡してみて、その情景に俺は驚く。

液体の入ったガラスケースに赤い花が入れられていて、その横にあるパソコンの画面には三角形が3つ重なっている。


「これは……なんてバイオで、ハザ……」

「それ以上言うな!! ここの職員は皆思ってるんだ!!」


俺が見た光景を感じたままに表現しようとした時、誰かの怒声と“バンッ”と言う破裂音が聞こえた。

かと思ったら次の瞬間、俺の頭のすぐ側を小さい物体が高速で通り抜けていく。

冷や汗を全身から滝の様に流しながら後ろを振り返ってみると、そこには先端から硝煙を出す黒光りした物体を持つ警備員達がいた。

…要は拳銃である。


「おい! 膝をついて両手を上げろ。さもなくは今度は撃つぞ!!」


数人いる警備員の中から隊長らしき人物が、銃口を俺に向けたまま警告する。

そんな相手の言っている通りにしなければならない状況で、次に俺は口走っていた。


「撃ってからいうなー!! お前ら……撃っていいのは、撃たれる覚悟のある奴だけだって知ってウッワワワワ!!」

「黙れっ!! それ以上ネタに走りたいなら地獄でやれ!!」


再び怒声と共に警備員達が撃ってきた銃弾を、俺は意外にも避けることが出来た。

その事に警備員達だけでなく、むしろそれ以上に俺も驚く。

『励起法』により自分がどれだけ強化されたのか、確かに実感した瞬間だった。


「銃弾を避けるだと!? …こいつ能力者か!」


隊長らしき人物の言葉でその他の警備員達に動揺が走った。

能力者がそんなに珍しいのかと思いながら相手の出方を伺っていると、隊長らしき人物がある物体を俺の方に向かって投げてきた。

放物線を描くように放られたその物体を、俺は少しだけ見覚えがあった。

興味本意でインターネットで銃器などを調べていた時に見ている。

確か……。


「おい、これって閃光だ……」


俺が言い終わる前に投げ込まれた物体が破裂し、辺りが光と音に包まれようとした時。


「おい、こっちだ!!」


誰かの声がしたかと思うと、次の瞬間俺は誰かに横から思いっきり引かれた。






閃光が収まると同時に警備員達は侵入者へと殺到する。

いかに身体能力を強化出来る能力者と言えど、音や光までは完全に防ぐことは出来ないはずだ。

これは今まで能力者との戦闘で培った経験と今もっている装備、絶対の自信があった。

しかし……。


「くそっ、どこ行きやがった!」


閃光が起こる前まで侵入者がいた場所には、人影が一切なかった。


「草の根分けても探し出せ!! 全班に通達、対能力者戦闘装備だ!!」



怒りを顕にしつつも部下達に、周辺を捜索するように命令を出す隊長格の男。

男は進入者がいた場所を、憎々しげに睨みつけた。


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