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分かつ道 SIDE-T

今回は予定通りアップできました。

この回で第一部は佳境の一歩手前になります。


では、本編を!!

今高見原市営地下鉄中央線 高見原駅

深夜1:00



日付も変わり人の出入りも疎らな駅の校内で、俺は前回同様に椅子に座っている。

最終電車はつい今さっき通過していて、俺は駅の校内から人がいなくなるのを待つただ待っている。


結局日向さんには全快に6日、修業で2週間お世話になった。

『励起法』に関しては2週間で一応習得することが出来たが、『励起法』は地道な鍛練がものを言うらしくあくまで付け焼き刃でしかない。

能力に関しては出力を少しでもあげる為に、三要のうち『理解』と『精神』の二つの面を『励起法』の鍛練の間に鍛えた。

鍛えたと言っても一度にどれだけの範囲や質量を分解できるか、何度も試して自分の能力について再確認した事やスイッチになる言葉を辞書などを引きながら考えたぐらいなのだが。

結局、言葉に関しては今日の昼までかかった。

そこに行き着くまでに日向さんに、何度も助言してもらったりしている事からどれだけ苦難だったか察して欲しい。

その他にもこの先に始まるであろうと予想する闘いに、いくつか助言してもらいった。

そんな色々な事を経て、今俺はこの場にいる。

こうして一つ一つを思い出してみると、日向さんには物凄くお世話になった。

なのに気まぐれでしたことだから別にお礼はいいって言うし、ここまでしてくれるのには何か訳があると思ったのたのだが最後まで理由も教えてくれなかった。

そうこう思い返していると、構内に人気は無くなっていて照明もちょうど消される。

それを見計らって俺は立ち上がり、黄色い線の所まで来ると勢い良く線路へと飛び降りた。

俺は前回から『地獄列車』の中から聞こえてきたあの「助けて」という声が気になっていた。

あれから、あの声が耳について離れない。

俺は知ってしまった今目を反らす事は出来ないし、偶然だけど力を得た。

だから、俺は…。





俺は壁に手を触れながら奥へと進んで行く。

前回、俺は列車を破壊する為に能力を使った。

しかし能力が発動しないと言う結果だった。

能力が使えなかったことも疑問には思っていたが、それについては日向さんから教えてもらっている。

それは能力者封じの結界儀式と言うモノが掛かっているらしく、掛かっている場所に関してはどんな能力でもかき消されるか阻害されるようだ。

一応、無効化したり破壊することは出来るが、特殊な技巧や道具が必要らしくどちらにしても今の俺には無理らしい。

それで俺は考えた。

色や形が特殊な列車なのにいくら探してもつからないと言う事は、普通の人には知られない路線があるか、またはそこに行くための隠された通路があるのではないかと俺は考えたのだ。

またその他にも隠された場所ならば、何か特殊な処置を施されているのではないかと。

そこで俺は最終電車も終わり、もう電車が通らなくなるのを見計らってその場所を探しに来たのだ。

壁沿いに手をあて解析しながら歩けば見付かるかもしれない、『解析出来ない場所がある』可能性があるからだ。

そうして壁伝いに進んでいると、先の方にうっすらと人影見えてきた。

そこにいるのが誰なのか何となくわかっていながら。

さらに近づくと、そこにはやはり例の青年がいた。


「フランベルジェ……」

「やっと来たな、待っていたぞ……貴様をな!」


俺が名を呼ぶと、フランベルジェから叫ぶように告げられる。

そのあまりの勢いに俺は飲まれそうになるが、何とか持ちこたえ踏みとどまる。


「三週間前は怪我や私自身の慢心があったとは言え、あんな苦し紛れの一撃を受けるとは…」


その時のことを思い出したのか表情を怒りに歪め、俺を睨んできた。


「だが、今回は万全の状態だ。少しの慢心も油断もせずに…貴様を崩壊させる!!」


その瞳には怒気が浮かんでいて、ただ睨み付けられているだけなのに身体が震えそうになる。

しかしよく考えてみると、これは好機かもしれない。

あんなに怒気をあらわにしている今のフランベルジェは冷静な状態でないはず、つまり一撃で決めて来るだろう。

それを逆に利用する。

俺はフランベルジェの挙動を見ながら、集中力を高めてゆく。

日向さんと修行していて、俺は能力者に対してはまだまだ力不足だと知らされた。

能力自体をまだまだ使いこなせていない事や、『励起法』をまだ覚えたばかりだという事の他にも、戦闘に必要な色々な点が足りていない。

そんな俺が戦闘で勝つには、奇襲のような相手の意表をつく方法が最適である。

だから俺が日向さんとの修行で身に付けた事の一つが、『励起法』のスイッチを使い瞬間的に戦闘へと移行出来るようにする事だ。

集中力が高まった時、俺はスイッチである目を細める動作を行い、最後の一押しをして『励起法』を発動させる。

それと同時に、足を全力で踏み込みフランベルジェへと接近する。

一週間前日向さんに放ったものよりも更に速さと威力が増した一撃、相手が意識するよりも早く撃ち込む奇襲。

フランベルジェの反応も明らかに遅れていて、俺は決まると思いそのまま拳を振り抜いた。


「……えっ?」


しかし、フランベルジェはそんな俺の拳を意図も簡単に避けてしまった。

驚く俺を見ながらフランベルジェは、疑問の声を呟く。


「『励起法』を使えたのか? 前回は全くそんな素振りもなかったがな?」


怪訝な表情で俺を見るが、奇襲の一撃を避けられた俺はそれどころではなかった。


「まぁいい、こんな短期間ではどちらにしろ付け焼き刃にしかならん。それでは、次はこちらからいくぞ!」


そう言い放つと、フランベルジェは姿勢を低くして突撃してくる。

何とか崩しかけた姿勢を取り戻し、俺は右側へ身体全体を飛び込む事でギリギリで避け切る。

さっきの攻撃でフランベルジェとの力の差を知った。

あいつと俺との経験の差がありすぎる、それがあの一瞬で解った。

だから俺はとにかく避けることに専念することにした。

実力差がある相手に真っ正面や正攻法で勝てるわけがない、奇襲も失敗に終わった今とる行動は一つ。

相手の攻撃を避け続けて僅かな隙を見つけ、そこに勝機を結びつけるしかない、と日向さんが言っていた。


「くそっ!貴様、避けるか」


フランベルジェはギリギリで捕まえる事の出来ない俺に怒りを膨らませてゆく。

俺の方は『励起法』により強化しているし相手の頭に血が上って単調な攻撃になっているとは言え、少し掠りでもしたら行動不能になりかねないと分かっている為とにかく必死だった。

そんな一方的攻められ続けて精神的にもきつくなってきたその時、別の音が聞こえてきた。

その音は俺が来た方から来ていて、物凄い早さで段々と近づいてきている。

何の音か分からないままフランベルジェの攻撃を避けていると、それは間もなく俺達の目の前に現れた。


「地獄列車!?」


俺は予想外の出現に驚き、フランベルジェは苦々しく呟く。


「くっ、もうそんな時間か…」


フランベルジェは俺達の方に向かってくる地獄列車を避けるため、端の方へと飛び退る。

それを見て俺も逆の方へ移動しようとした時、ある考えが浮かんだ。




しばらくして列車が過ぎ去り、フランベルジェは東哉の避けた場所へとすぐさま攻撃を仕掛ける。

しかし、そこには既に東哉の姿は無く周辺を見渡してみると、予想外の場所にいた。


「……貴様、逃げるか!!」


東哉は『地獄列車』の最後尾に掴まっていた。

直ぐに追いかけようと走り出しかけたとき、東哉が何か赤く光る棒状の物をフランベルジェへと全力で投げる。

フランベルジェはそれを難なく避けようとしたとき、その正体に気づく。


「ん? 発煙筒……まさか!」


フランベルジェが、回りに粒子のようなものが舞っている事に気付いたときには既に遅かった。

発煙筒の火花が火種となり粉塵爆発が起き、閃光や衝撃が吹きあられ周辺の壁が崩れていく。





「……がはっ!」


崩れた壁で出来た瓦礫の山からフランベルジェが這い出てくる。

『励起法』により身体強化をしていたお陰か、身体には傷らしき傷もない。


「あいつめ、私に一度だけでなく二度までも……」


フランベルジェから発せられる怒りと殺気で空気が震えている。

しかし、周りを瓦礫で埋め込まれ身動きが取れず、東哉を追うことは出来なかった。



『地獄列車』に掴まりながら暗いトンネル内を進んで行く。

さっきの爆発は想定通り上手くいった。

しかし、『励起法』を使えるフランベルジェがあれで終わるとは思えない。

つまり、まだフランベルジェとの決着はついていない、再び標的にされる可能性が大きいだろう。

その事に気持ちが少し重くなりながらも、とにかく今は例の声の人を助ける事に気持ちをり替える事にする。


そんな事を考えていると、トンネルが終わり辺りが開け風景が変わった。


「……えっ?」


俺が目の当たりにした風景は、黒いコンテナが積み重なった地下ターミナル。

地下鉄の先にこんな場所があるとは予想だにもしておらず、俺はただ驚くしかない。

これからどんなものが待っているか分からない恐怖を感じながらも、俺は地獄列車に乗りながら先へと進むのだった。


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