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七不思議 SIDE―T

一日遅れで投稿します、遅れて申し訳ないです。

九条家を出た後、俺は七瀬からのメールに書かれていた番号に電話を掛けた。

一回二回とコール が鳴り電話の向こうの相手を呼び出しているはずなのだがなかなか出ない。

メールが着てからまだ二、三分ぐらいしか経っていないからすぐに出ると 思ったんだが予想は外れた。

コールも十数回鳴り一旦切ろうと考えた時、携帯からコール音が止み通話状態になる。


「スマン、ちょっと作業をし ていて出られなかった」

「作業って何を……」

「企業秘密だ」


『企業じゃないだろ』と突っ込みたかったが、このネタにこれ以上触れると何か後悔しそうだったから俺は踏み込むのをやめて本題に入ることにする。


「……それで何なんだ、入った情報って」

「まぁまぁ、そんなに急かすなよ」


携帯の向こうから七瀬の気怠そうな声が聞こえてくるが、何だかお疲れの様だ。

「少し長い話になりそうだからどこかで会わないか?」


確かに会って話した方が楽だろう。

このまま携帯で長時間話すのは、はっきり言って通話料の無駄だ。


「わかった。それじゃ、どこで待ち合わせする?」

「昨日の頼まれ事から考えるに、船津はまだ九条の家の近くだよな。それなら……」


それから俺達はお互いの場所から考えて、七瀬の行きつけの喫茶店に集まることになった。




俺は七瀬からメールで送られてきた住所を頼りに向う。

桜区楼閣町の端にある『トラスト』と言う喫茶店らしいのだが、あいにく俺は行ったことが無い。

町の中心にある大きな中洲の端、繁華街の少し奥ばった所にあるらしい。

俺は飲み屋や食べ物屋が乱立する街中を注意しながら歩いていると、ふと目の前の細い路地へと続く角が気になりそこを覗く。

奥の方を見てみると、少し奥ばった店の前に立て看板があり『トラスト』と書かれてあった。

店名はあっている、近くには他に喫茶店はない。

俺は恐らく目的の場所だと確信すると、店のドアに手をかけ開ける。


ガラン、ガラン、ガランとドアを開けた拍子にカウベルが揺れて、店内に鐘の音が響く。

中に入るが店内はいたって普通の喫茶店と一緒で、カウンターには店の人らしき女の人がコップを磨いている。

店内を見渡してみるとカウンターの隅に女性が一人うなだれていて、ボックス席の方には数人座っていた。


「いらっしゃい……おや、初めてみる顔だな?」


カウベルの音で俺の来店に気付いた店の人が、カウンターから話掛けてきた。

女性は長い髪の毛をバレッタで纏めていて、縁のない細い眼鏡をかけている。

その容姿や雰囲気からかもしだすのは大人の女性の美しさ。

俺がその女性に思わず見とれていると、ボックス席の方から声をかけられる。


「おーぃ、船津こっちだ」


俺は我に帰り声のした方を見るとそこには七瀬が座っていた。

遅い朝食を食べていたのか、それとも早い昼食かテーブルの上にはサンドイッチやサラダ等が並んでいる。

大声で呼ばれて店内の視線が自然に集まり、俺は気恥ずかしくなり足早に七瀬の方へ向かった。


「おはよう、初めてここに来る割には早かったな」

「あぁ、俺昔から店を探したりするの得意だったんだ」


俺が七瀬の向かいに座わるとメニューを渡してきたので受け取る。

しかし、この喫茶店に来たのは初めてだったから俺はサンドイッチを摘んでいる七瀬に聞く。


「何かオススメはあるか?」

「ん?そうだな、ここはコーヒーが美味しいぞ。結構こだわってあるからな」

「へぇ、それじゃあコーヒーにするか」


俺はさっきの女性を呼んでコーヒーを頼む。

するとオーダーをとった女性は眉間にシワを寄せながら帰っていく。


「…なあ七瀬、何か俺変な事言ったか?」

「? ああ、気にするな。それよりココの名物が見れる。ホラ」


いきなり雰囲気が変わると言った事に七瀬に尋ねるが、進めた張本人は涼しい顔でカウンターを指差す。

振り返って俺は言葉を失った。


「…えっと、七瀬。あれ何だ?」

「見ての通りだが」

「俺の気のせいか? 何故だか、フラスコやアルコールランプやら学校の化学実習で見た実験道具が見える」

「灯さんは元々の研究員で、仕事を辞めてから喫茶店やってるらしいんだけど。生来の性格で水や温度やその他諸々の事まで考えコーヒー煎れていたら自然とあのスタイルになったらしいぞ」


何か違うと考えていれば、しばらくするとコーヒーが運ばれて来る。

俺はそれを飲みながら七瀬が食べ終わるのを待つ事10分、七瀬が食べ終わるのを確認すると俺は本題を切り出した。


「そろそろ話に入ってもいいか?」

「おぉ、ちょっと待ってくれ」


七瀬は見た目と反し几帳面にナプキンで口元を拭くと、俺を見て話し掛けてきた。


「さて、早速。お前に頼まれた件だが、高見原の七不思議については知っているか?」

「……あぁ、詳しくは知らないけど触りくらいなら」


この町は怪現象や心霊現象が多い事から、ネットなどでオカルト都市とも呼ばれている。

そのため色々と数多くの噂話等が流れていた。

さらに、伝わっている話の中でもその時代の主流とされている物の中から高見原七不思議と呼ばれているものがある。


「今の高見原の七不思議は『桜坂の剣士』『地獄列車』『我が子を探す女』『岩長神社の神隠し』『人が消える坂』『人食いお化け』『行くと必ず恋人と別れるオブジェ』『地獄へと続く洞穴』がある」


七瀬が言っている事を前に莉奈から教えてもらったことがある。

俺を驚かせようとそれぞれの話を聞かせてくれたのだが、俺はその時『やけに人がいなくなる物が多いなぁ』と思いながら暢気に聞いていた。

別に俺が怪談などに対して怖がらないとか聞き流していたわけではなく、ただ莉奈の話し方が悪くて全く怖くなかったのだ。


「……まぁ、七不思議とか言いながら八つあったりしてたが、この間正式に七不思議になったしな。そこはあまり突っ込むな」


七瀬が可笑しそうに笑いながら呟く。

その言葉に俺は驚きコーヒーを飲もうとしていた動きが止まる。

七不思議が六不思議になってしまったのは間違いなく俺が起こした海岸公園の爆破のせいだろう。

実際、『残響の迷宮』を跡形も無く消したのは爆発する前だったが、爆発自体も俺自身が原因だから変わらない。

七瀬に他意は無いのだろうが浮かべている笑みが今の俺にはとてつもなく怖い。


「おっと、本題から少し逸れたな……実は今回俺が掴んだ情報はその七不思議関係なんだ」

「……詳しく教えてくれ」


俺の言葉に七瀬は頷きで返し、また話始める。


「船津が篠崎の目撃情報だけではなく不思議な事や有り得ない事についても、と言ったからそっちにも手を伸ばしてみたら……つい最近に『地獄列車』を実際に見たと言う人物が現れたんだ」


七瀬はそこで言葉を切り一息付いてから話続ける。


「深夜一時頃、終電を逃して地下鉄のベンチで寝てたら黒の電車が停車して、気になって近づいてみると中から助けを呼ぶ声が聞こえたらしい。七不思議の話と似たような話だから裏をとったら大当り、名前は出せないが似たようなシチュエーションで見たらしいぜ」


そこまで話し終えると七瀬はコーヒーを飲んで一息ついた。


「俺が調べて分かったのはこれぐらいだ。信じるかどうかは、お前に任せる」


七瀬の言葉を聞いて俺はまずは驚いた。

大体は何ともない事に背鰭や尾鰭が付く事によって、噂話や言い伝えなどが出来上がる。

しかし、それを実際に見た人がいると言うのだ。

正直、信じられたものでは無いが俺が取るべき事は決まっている。


「ありがとう七瀬。試しに俺も行ってみるよ」

「おぅ。まぁ、気をつけてな」


俺はとりあえずの御礼として注文書をもって会計を済まし『トラスト』を出た。








「…はい、話は通しました。…はい、その方向で話を………………」


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