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疑問 SIDE-T

改訂に少々時間がかかり遅れました、申し訳ありません。

では、本編をどうぞ。

騒動が一段落し、それから消えた女子生徒を先生達が捜しているが、数時間経った今も見つかったと言う話はなかった。

そうしてそれからは何もなく夕日が沈もうとし、辺りは段々と暗くなり始める。

妙な一致団結の雰囲気が流れ皆も捜そうとしたがもしもの場合を考え、俺達生徒はそれぞれの部屋で待機している様にと先生に言われたらしい。

それはちょうど俺達が帰ってくる直前に言われたみたいで、浩二に教えられて俺達もおとなしく部屋に戻った。

その頃には大半の生徒が戻り始めていて俺も偶然見たのだが、一人の男子生徒が先生と言い争って全く引かないでいた。

先生達が集まっている場所の近くを通る時「俺も捜します!」と聞こえ、後で斎と天子に聞いたのだが、どうやら先生に怒鳴っていた男子生徒は消えた女子生徒の彼氏らしい。

だからあの男子生徒も必死なのだろう。

気持ちがわからないわけでもない。

むしろ莉奈がいなくなった頃の自分と重なって、助けてやりたいとも思う。

だけど、今の俺にどうにかしてやれる程の余裕はない。

ようやく、やっと莉奈の手掛かりを掴んだぐらいなのだ。

チャンスを逃せば次があるとは限らない。

けど……


「……あー、纏まらねぇ」


施設に戻った時の出来事が気になってしまい、自分に割り振られた部屋の二段ベッドの上の方で横たわりながら考えていた。

今俺の中の優先事項は莉奈を捜索する事だ。

なのだが、どうしてもこの出来事が頭の中で引っ掛かっかる。

莉奈の時の様にいくら考えても答えは出ず、俺は纏まらない頭を抱えるばかりだ。


「おぃ東哉……って、何を悶えてるんだ?気持ち悪!?」


そんな俺を、ちょうど梯子で昇り顔を覗かせた浩二が見ている。

その浩二の顔はどう反応したらいいのか困惑している表情だった。

俺はあえて無言で蹴りをいれて浩二に聞く。


「ほっとけ、それでどうした。何かあったのか?」

「あぁ、先生が生徒は全員講堂に集合するように、だって」


今、先生達は総出で行方不明の女子生徒を捜索しているだろう。

今からの予定が変わってずっと部屋で待機が続いていたのが良い証拠だ。

その先生達が引き返して来て、俺達生徒を集めるということは何か進展があったのだろうか。


「……何か他に聞いてないか?」

「さあ?」


さらに詳しいことが知りたくて浩二に聞くが、浩二は頭を横に振る。

ここで悩んでいてもしかたがないから、俺達は部屋を出ると講堂へ向かった。




俺達は講堂に着くと、周りを見渡して斎と天子を捜す。

二人は講堂の真ん中辺りにいて、二人で何か話している様だった。

二人に向かって歩いていると、途中で天子が俺達に気付き手を振ってくる。

俺達も手を振り返しながらさらに歩き、二人の側まで近付く。


「おっす。二人ともこの集まりについて何か聞いてるか?」


俺は浩二に聞いた事を二人にも聞いてみるが、やはり二人とも頭を横に振る。

だが、斎が少し悩む様子を見せながら話す。


「関係があるかわからないが……集まるように言われる前、喉が渇いたから自販機まで買いに行ったら、学年主任の先生が電話していた」


「誰と話していたかわからないか?」


俺が気になったことを聞くが、斎はまた頭を横に降って否定する。


「そこまでわからなかった……けど、話し終わって先生が私に気付いたら、急に怒ってきた。確かに勝手に部屋を出た私が悪いけど、そこまで怒らなくて良いだろうと少し腹がたったがな」


その時の事を思い出したのだろうか、斎は疲れた表情をしながら溜め息をつく。

斎の様子に三人とも苦笑を浮かべていると、ちょうど斎が話していた学年主任の先生が講堂に入って来た。

学年主任の先生は先に来ていた他の先生からマイクを受け取り話始める


「あー、皆を集めたのは、今起きている女子生徒の行方不明についてなんだが……」


俺の視線の中にそわそわして落ち着きのないやつがいるから、そっちに視線を向けてみる。

そこにはいなくなった女子生徒の例の彼氏がいた。

自分も捜しに行きたかったのに行けずに、進展を気にして気が気じゃなかったんだろう。

先生の話を待ちジッと見詰めている。

俺も気になるので、それに倣い先生を見る。


「実は急に体調が悪くなったみたいで、救護の先生が病院へ連れていってたらしい。今はもう体調も治ったみたいで大丈夫だと言う連絡を受けた」


先生の言葉を聞いて、周りから安堵の息が漏れるのがわかった。

誰でも、他の生徒が原因不明の失踪をしたら、何か事件でも起きてるのではないかなど思って不安になるだろう。


「私の連絡ミスでこんなことになってしまい申し訳ない。それでは各自自分の部屋へもどってくれ」


そこまで言い、先生は講堂から出ていく。

それを合図にしたかのように生徒も講堂を出るが、安心したのか皆明るく話している。

さっきの例の彼氏を見てみると安堵の表情を浮かべていて、周りの友人から「よかったな」など言われながら絡まれている。

俺も自分の部屋に戻るため浩二達に声をかけるが、斎だけ何か考えている様で下を向いていて、返事がなかった。


「斎?どうしたんだ?」


不思議に思い聞いてみると、斎は下を向いていた顔をあげる。

そして今だに悩んでいる様だったが話し始めた。


「いくらなんでもおかしくないか?すぐ治る体調不良で病院に行って、彼氏に連絡もしないなんて」


「そう言われてみたら確かに……」


斎の話しに俺達は納得する。

斎の言った疑問は当たり前のことだったが、俺達も含め他の生徒は安心からそんな当たり前すら気付けなかった。


「それに今さっき話したけど、あの先生の怒り方は部屋を出ただけにしては度が過ぎていて、まるで、電話のことを聞かれたくなかった……そんな感じにも思えて来たんだ」

「それなら、今先生が言っていた事は嘘だったという事なのか?」


俺の言葉に斎は表情を苦くして、返す言葉に詰まる。


「そこまで言わないけど……不自然な点が多すぎて不安だな」


疑問が多く、また事が大き過ぎて困惑してしまう。

そんな時、それまで一言も口を挟まなかった浩二が俺に向かって言う。


「そんな事、今考えてもしかたがないだろう。俺達が、いや東哉、お前がすべきはなんだ?忘れたのか?」

「!……、そうだよな。今は莉奈を捜す事を考えないといけないよな」


俺は考えを切り替える様に頭を振る。

騒動が一段落し今日の日程が完全に潰れた今がチャンスだ。

俺は外へと足を向け、目を浩二達へ向ける。


「皆、あとの事を頼んでいいか?」

「おぅ、こっちは任せて行ってこい!」

「ああ、東哉は莉奈の事だけを考えてると良い」

「頑張ってね〜莉奈ちゃん居たら連れ戻すんだよ?」


力強い後押しを受けて、俺は莉奈を捜す為また施設の外の森へと向かった。


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