戦争準備③
現在、戦える者は殆どが街の外に出て迎撃の準備をしている。
いくつかの隊に分かれ、最前線を兵士達、その次に冒険者の前衛組、最後尾に魔法使いや弓隊の後衛組に分かれている。
「この三番隊の隊長になったガルドだ。よろしく頼む。」
「「「よろしく。」」」
俺はガルドさんの隊か。
知り合いがいて良かった。
この隊は三番隊。
冒険者組の中では結構前の方に配置されている。
クラウスは一番隊で、最前線に配置されている。
「アレス君。まさか君と同じ隊になるとはね。君はクラウスさんが参加させないと思ってたよ。」
「グリスヴァルドの危機ですからね。俺もこの街を守りたいですからね。ガルドさんも、戦争には参加しないと言っていませんでした?」
「今まではそうしてたんだけどね。だけど、今回は黒鋼騎士団が居ないからね。僕も参加せざるを得ないよ。君と同じで、僕もこの街を守りたいからね。」
「そうだったんですね。」
「ああ、共にこの街を守ろう!」
「はい。」
クラウスだけじゃなく、ガルドさんもここまで黒鋼騎士団の事を評価しているのか。
それ程までに信頼されてるのか。
「皆!いつでも戦える準備をしておいてくれ!」
「「「「了解!」」」」
そろそろ始まるのか・・・
緊張してきたな。
周り皆も同様に緊張してそうな人が多い、普段感じない感覚だ。
戦いの緊張感が体中を支配している。
冷静さを保とうとしても、心臓の鼓動が早くなる
「皆、無理に前には出なくていいよ。今回の僕達の役目は黒鋼騎士団が帰還するまでの時間稼ぎだからね。」
「黒鋼騎士団はいつ頃帰ってくるんでしょうか?」
誰かが聞いた。
みんな気になっている事だ。
黒鋼騎士団がどれだけ早く帰ってこれるかで、被害に差が出来る。
「最低でも1日は掛かるんじゃないかな。さっきエルンストさんの所の人が、呼び戻しに行ったからね。」
「1日・・・」
ここからダンジョンまで往復で約1日。
もし、呼び戻しに行っても、タイミングが悪ければ、すぐには帰って来れないだろう。
黒鋼騎士団がダンジョンに行ったのは約1週間前。
いつ帰ってくるかも分からない戦力を待ちながら、ただ耐える。
正直、いつ帰ってくるか分からないのが1番キツイ。
さて、ブラッドヴァルドはいつ来るのか・・・
そう思っていた矢先、森から1人、誰かが出てきた。
「皆、準備してね。」
「「「はい。」」」
一気に全体の雰囲気が変わる。
後方で魔力の高まりを感じる。
恐らく、詠唱を開始し始めたんだろう。
ついに始まるのか。
「・・・・・・なんだ?」
出てこない。
あの1人以外、他に人の影がない。
あいつも森を少し出た所で止まったまま動かない。
何をしているんだ?
口元が動いてるけど、何か話してる?
何も聞こえないぞ?
「動かないんですか?」
「動けないんだよ。こっちは元々戦力が少ないからね。無闇に突っ込んだりして、さらに戦力が減ってしまったら、守れなくなる。」
「なるほど。」
ガルドも相手の行動の意味が分からないみたいだな。
結局、相手が動くまでこっちは待つしか無いのか。
「広範囲の魔法が来るぞ!!相殺しろ!!!」
後方からエルンストさんの大声が響く!
ま、魔法!?
ドゴオオオオオオオオオオオン!!!!
「「「!?」」」
直後、上空で大爆発が起きる!!
耳を突き刺すような轟音が響き渡り、その瞬間、戦場の静寂が破られる!
「「「うおおおおおおおお!!!!」」」
森から多くの人間が現れる!
ついに、戦争が始まってしまった。




