ゴブリン狩り
「クラウス、ゴブリン10匹の討伐は分かったんだけど、それをどうやってギルドに倒したって証明するんだ?」
森の中をクラウスと並んで進んでいく。
この森はゴブリンなどの弱いの魔物しか出ないらしい。
「ゴブリンの魔物を持ち帰ればいい。」
「え、魔石?魔石あんの?見た事なかったな・・・・・あれ?ゴブリン倒した時取ってなかったよな?」
魔石と言えば異世界のモンスターの定番ではあるけど、この世界は無いと思ってたわ。
初めてゴブリンを殺した時も見えなかったし、クラウスがゴブリンを殺した時も取ろうともしてなかったから、そういうのは無いもんだと思ってた。
「ゴブリンのは大した金にならない上に数も多かったからな。そもそも持てなかったしな。」
「あ、なるほど。そういう事か。あん時は薬草も持ってたもんな。」
「そうだ。ほかの魔物にも魔石はちゃんとあるからな。覚えとけよ。」
「ああ。分かった。」
まぁゴブリンにもあるなら他の魔物にもあるか。
ゴブリンの魔石は安いとはいえ、俺にとっては貴重な収入源だ。
クエストのためにも、しっかりと集めないとな。
「なあ、クラウス。俺達は今どこに向かっているんだ?こっちにゴブリンはいるのか?」
「俺達が今向かってんのは池がある場所だ。ゴブリンだって生物である以上、水分が必要になるから池にいる可能性が高い。」
「ああ・・・・池か。」
池。
俺が初めてゴブリンと会った所。
俺が初めて死にかけた所。
俺が初めて、意志のある生物を殺した所。
まだ戦うのは怖い。
それでもやらないといけない。
折角ここまできたんだ。
今更帰るなんて言えないし。
「緊張してるな。」
「そりゃ緊張するよ。クラウスとの特訓を始めてから初めての実戦だからな。しっかりと上手くいくかどうか・・・・・」
「緊張はするのはいいが、あまり強ばりすぎるなよ。程よく力を抜け。深呼吸しろ。」
「すううううううぅぅぅぅぅはああああああああ。」
深呼吸を何回か繰り返し、心を落ち着かせる。
そうだ、何も緊張する事じゃない。
初めてゴブリンと会った時は確かに命が危なかった。
しかし、今回はしっかりと特訓をしてきた。
それに、クラウスの方がゴブリンなんかよりもよっぽど強い。
そんな人に鍛えられたんだ。
今の俺なら勝てる。
弱気になるな。
「アレス、居たぞ。ゴブリンだ。」
「!!」
本当に池に居たな。
2匹か。
最初は1匹からやってどれくらい戦えるか試したかったけが、ここはクラウスと俺で1匹ずつ・・・・
「アレス、複数と同時に戦う時は常に相手の位置を
把握しておけよ。ある程度で良いから。」
くっクラウスさんは助けてくれないんすね・・・・
・・・・やるしかねえか!
これは俺のクエストだしな。
頼りすぎるのも良くないか。
「不意打ちで1匹殺れれば大分楽になる。それを狙え。」
「分かった。」
・・・・もうやるしかない!!
クラウスが昔使っていたという剣。
今は俺の手の中にある。
刀とは違う刀身が真っ直ぐな剣。
しっかりと手入れされ、今でも切れ味は抜群だ。
鼓動が早くなる。
手汗で剣が滑る。
「行ってくるッ!」
息を殺す。
小さな声でクラウスに告げ、一気に飛び出す!
クラウス程では無いが、大分走るのは早くなったと思う。
10m程の距離がすぐに埋まる。
「っ!!」
目が会った!気づかれた!
でももう1匹はこちらに気づいて居ない。
まずはこっちだ!!
剣を握る手に力を込め、一気に踏み込む。
ゴブリンの背後、迷うな!
剣先を狙いすました。
「うっおおお!」
剣が肉を貫く感触。
勇気を振り絞れ!
声をあげても構わない!
「ギャッッ!!」
ゴブリンの身体がビクンと震え、息絶えた。
よし!1匹倒せた!
もう1匹は・・・・
「うおっ!!あぶねえ!」
生き残っている方が俺の頭に目掛けてフルスイングしていた。
咄嗟に身をかがめれて良かった。
「ふっ!」
かがんだ勢いで相手の足を払い転けさせる。
「おらああああ!!」
剣を振り下ろし、ゴブリンに突き刺す。
「はぁはぁっはぁ・・・・勝った。よっしゃあ!クラウス!勝ったぞ!」
息が荒い。
ゆっくりと剣を引き抜く。
「ああ、良くやった。」
勝てた。
勝ったのだ。
────俺は、やったのだ。
・・・・・まさかこんなにあっさり勝てるとは思わなかったが、これは大きな一歩だ。
ただ、殺す感覚はまだ慣れないもんだ。
血には慣れた。
この世界に来てから何度も見た。
・・・・・だけど、命が消える感覚は・・・・殺す感覚は未だに慣れないな。
・・・・まあ、それはこれからだな。
「でも、2匹だけか。・・・・まだまだ全然足りないな。」
「そうだな。それにアレスは2匹倒したが、魔石は1個だぞ。1匹は魔石ごと砕いてる。魔石ってのは大抵胸にあるからな。次からはそれも気をつけろ。」
「うわ、まじか。・・・・分かった。次からは気をつける。」
「まあ数が多すぎる場合は魔石を狙って一撃で殺して数を減らすのもありだから、自分の命を1番大切のしろよ。」
「うん。ありがとう。」
「よし、じゃあ他の池も回ってゴブリンの魔石を集めに行こうか。行けるか?」
「大丈夫。行けるよ。俺も少し慣れてきたよ。」
今日はゴブリン狩りだな。