子守りーーー獣狩り③
「さて、狩りの時間だ。」
アリサ達が逃げた方向を背後に、もう一度剣を構え直す。
ここから先は通さない!
グオオオオオ!!!
先程までは様子見だったのか、動かなかった個体も同時に襲いかかってくる!!
「うおらああああ!!!」
俺も負けじと咆哮仕返し、この囲いを突破する為に1匹の狙いを定める!
囲まれるのは危険だ。
1匹ずつ確実に仕留めなければ!
「ふっ!」
相手の攻撃を避け、すれ違いざまに攻撃を受け流しながら脇の下を斬る!
すぐに反転し、背後から魔石が有るであろう胸辺りに剣を突きつける!
「まずは1匹。」
後はこれを繰り返すだけな簡単なお仕事。
囲まれる事が無くなるくらい減れば、さらに楽に倒せるだろう。
止まっている暇は無い。
すぐに次の標的を決める!
「うおおおお!!」
グオオオオオ!!!!
やはり、今の俺の敵では無いな!
ーーーーーーーーーー
「案外早く終わったな。」
あれから15分程で全ての陰牙熊を討伐し終えた。
この魔物と戦うのは今回が初めてだが、この辺りに出る魔物の知識だけは、クラウスに叩き込まれてたからか、簡単に倒せた。
基本突っ込んでくるか、腕を適当に振り回すだけのデカイ熊だ。
身体能力だけで戦ってそれだけで勝てるからか、殆ど考えて行動する事が無かった。
「ま、そんな事より・・・・・・」
さっきの狼の傷は恐らくこいつらの仕業だ。
あの狼、足を負傷しただけにしては血塗れすぎたから、恐らく仲間がやられた時の血だろう。
そして1匹だけ殺さないように、動けない位にして放置して、少し離れた所で待機していたんだろう。
そして、狼が叫んでいたあの声。
俺は諦めただけだと思っていたが、今思えば、動けない狼は声を出して威嚇するしかない。
陰牙熊はその声を聞いて、こちらに押し寄せてきた・・・つまりあの狼は罠だった。
あくまで俺の予想だがな。
「ふう。後始末完了っと!」
それにしても罠を考えられる脳はあるのに、戦闘が雑過ぎるよな。
まあこの森に生息している魔物じゃああの群れには勝てないか。
無双してたんだろうな。
最強なら、技を磨く事よりも効率的に相手を見つける方に頭を使うか。
今回は人間が相手だったから悪かったな。
「じゃあ帰りますか。」
アルトとアリサは無事に村まで辿りついただろうか?
この辺り一帯はあの陰牙熊達の縄張りだろうし、他の魔物の心配は無いだろう。
「まあ、すぐに分かる事だな。」
村までは走って帰ろう。
早く帰って2人の安否確認をしたいからな。




