子守りーーー獣狩り①
「俺が合図を出したら、真っ直ぐ突っ込んで、素早く倒せ。あまり長引かせるなよ。」
「分かったわ。」
「分かった。」
よし、準備は万端。
後は俺の合図次第でこの子達があの狼を狩る!
合図を出す瞬間は間違わないように・・・・・・・しっかりとタイミングを見極めろ!
狼がこちらの反対を見る瞬間!
「今!」
ダッ!
アリサとアルトが勢いよく隠れていた木の陰から飛び出す!
続いて俺もあいつらから離れすぎないように、一定間隔を保って走り出す!
狼はまだこちらに気づいていない。
今のうちに出来るだけ距離を詰める!!
ダダダ!
見つかった!足音でバレたか?
とはいえ、ここまでは想定内!
このままの勢いで突き進めば先手は取れる!
ワオオオオオオオン!!!!
な!?
回避行動も防御も取らずに吠えた!?
どうしてこの状況で、もうすぐそこだぞ!?
抵抗せずに死ぬ気なのか!?
「やあああああ!」
ザンッ!・・・・ドサッ。
「私の勝ちね!」
「うわあ!もうちょっとだったのに!」
「ねえ!やったわよ!アレス!」
狼が死んだ。
1太刀で殺された。なんの抵抗も無しに。
アリサが俺に何か言ってきてるようだが、今はそんな事はどうでもいい。
抵抗しなかった。
初めての出来事だ。
ただ吠えるだけ。
今までも負傷した狼を討伐した事は何度かあるが、こんな事は初めてだ。
なにか意味があったのか?
あったとして、一体なんの為に?
・・・・・分からない。
この狼の怪我、何かに噛み付かれた後か・・・?
少なくとも人為的では無さそうだが、思っていたよりも重症っぽいな。
動けなくて、諦めたのか。
けど、何か胸騒ぎがする。
出来るだけ早く、ここから離れた方がいい気がする。
「2人とも、喜んでる所悪いけど、すぐに後始末して帰るぞ。」
「え!?もう帰るの!?」
「早すぎない!?」
「目標は達成したんだから、そりゃあ帰るに決まってるさ。」
この不安は、わざわざ2人には言わないでも良いか。
本当に何かが起こるかも分からないんだ。
心配事を無駄に増やさせるのは良くないしな。
「とりあえずもう燃やすから、少し離れとけよ。」
そう言い、2人が離れた所を確認し、狼に火を付けたーー瞬間、大音量の咆哮が森に響く!
グウオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!
魔物の叫び声!しかも複数いる!
それに、今の声は狼じゃない!
ドドドドドド!!!
まずいな。
足音的に、真っ直ぐこっちに向かってきてる!
「あ、アレス。・・・・今の声は何?何が起きてるの?」
「ど、どうするんだよ!めっちゃ近ずいて来てねえか!?」
アリサとアルトが焦ったような声を上げる。
2人のこんな声、感情は初めてみた。
それほどまでに今回の事に不安が募ってきている。
「落ち着け。狼は燃やしたから、すぐにここから離れるぞ。」
本来は完全に燃え尽きたかを確認しなければならないため、途中で離れるのは良くないが、今回はやむを得ない。
すぐにここから離脱する!
「わ、分かったわ!早くここから離れま……」
ーーー瞬間、森から何かが、勢い良く飛び出してくる!
キィイイイン!!
「きゃっ!」
咄嗟に剣を抜き、アリサの目前まで迫っていた獣の攻撃を受け流す!
「アリサ、アルト。走れ! 村に逃げるんだ!」




