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大火事①

「女神を照らし出す聖火よ、奔流になりて道を拓き、全てを焼き尽くしこの世に動乱を。灼奔流焔(イグニスバースト)!」


男達がそれぞれ四方に向かって炎を放ち、そしてその炎は樹へと移り、燃え広がっていく。


「上へ伝えろ! 消化を急げ! 女子供を避難させろ!」

「はい!」


獣人の1人が駆け出し、上へ急いで樹の上へ登っていき、周りに伝えていく。

男達は再度詠唱を開始していた。


「させるかあ!!」

「ふっ!」


それを察知したリシュアと俺が同時に駆け出し数人を斬り殺すが、残りの者が同じ魔法を放った。


「女神よぉ、我らは、使命を・・・果たしました・・・・・・」


俺が斬ったうちの1人がそんな事を言って息絶える。

女神? 使命? なんの事だ?

リシュアが言っていたルゼリア聖戦国というのも気になるが、今はそんな場合では無いか。


「アレス殿、無理を承知でお願いしたい。無力な女子供を避難させたい。誘導を手伝ってくれないだろうか?」


リシュアが片膝を着いて真剣な眼差しを俺に向けてくる。

断る理由は無いな。


「分かった。ネフィラ達にも伝える。梯子を使わずに登るけどいいか?」

「緊急時の今、そこは気にしないで大丈夫だ」

「了解」


樹の焼ける匂いが鼻を突く。

広がるのが早い。

人のいる場所まで到達するのもすぐだ。

上にいては不味い。

下に下ろすか。


「リシュアさん! 下に避難させます!」

「恩に着る!」


そう言ってリシュアは急いで上へ上へと駆け上がっていく。

俺も急がねえとな。


「ネフィラ!」

「話は聞こえておる。ここに避難させればいいんじゃな?」

「ああ、頼めるか?」

「うむ、任せておれ」


短く言葉を済ませるとネフィラは凄まじい速度で樹を駆け上っていく。


「私達も早く行くわよ!」

「待てアリサ! お前らはここにいろ。上は危険だ」

「なんでよ! 私だって出来るわ!」

「火の煙は危ないんだよ! 一酸化炭素中毒に・・・は分からないかっ、とりあえず危ないから駄目だ!」

「アレス、お願い。危ないのはアレスもネフィラも一緒でしょ? それなのに、俺達だけ見ているだけなのは嫌なんだ」

「アルト、お前まで何を言って・・・・・・」

「頼むアレス。人が焼け死ぬところを俺はもう見たくない」

「っ!?」


もうってことは・・・・・・何処で見たのだろうか。

アルツ村でブラッドヴァルドに襲撃された時だろうか、それともベルナールに捕まった時だろうか。


「あの時のように目の前で何も出来ずに人が死ぬのを見るのは嫌なんだ・・・だからお願い」

「・・・分かったよ。その代わり、お前らも絶対に死ぬなよ。あと煙には気をつけろ」

「「っ!? 分かった(わ)!」」


アルトとアリサが走り出すのを確認して、俺はまだ火があまり回っていない方向へと走り出し跳躍し、樹を駆け上がって人工物へと到着すると、すでに混乱は広がっていた。


「おいおいあれ家事か!?」

「え? うわっ! 本当じゃん! どうするんだ!?」

「皆さん落ち着いて下さい! 各所の梯子を開放しています! ゆっくりと慌てずにすぐに地面へと降りて! 冒険者や魔法使いの方は消火を手伝ってくれませんか!?」


獣人の男が大声で指示を出しながら協力者を集う。


「慌てずに降りて下さい! こちらはまだ火が回って・・・っ!?」


火は既にこちらまで燃え広がっていた。

複数箇所の梯子も焼け落ち、樹の登り降りが慣れている大人の獣人族と、アレスのように魔鎧(まがい)によって身体強化を出来る者以外は梯子が無いと降りられない絶望的な状況だった。

そんな中男の獣人達は決断した。

人間や他の亜人を一度無視し、一族の女子供を優先して自らが抱えて直接下へと降ろす事にしたようだった。


「っち! くそがっ! たけぇな、降りたら死ぬって!」

「うるせえ! 死なねえって! ポーションがある! 何とかなる! いくぞおお!」


そう言って2人の人間が飛んだ。

数秒後地面に到着し、絶叫が聞こえる。

足全体があらぬ方向に曲がりきっていたが、それでも生きていた。


「俺も獣人の方を優先するか。冒険者はどうせしぶとく生きるだ、ろっ!」


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