厄介な冒険者?①
「だからさぁ、どうにかしてくれない?」
「無理だ、身分証を提示出来ないのなら入れる事は出来ない」
「そこをなんとかしてくれよぉ」
「無理なものは無理だな」
10人程の人間の冒険者がリシュアに迫るが、リシュアは毅然とした態度はそいつらを跳ね除けている。
「そもそもお前達は本当に冒険者なのか?」
「だからそうだって〜、ギルドカードどっかで無くしちゃったからさ、今だけ許してよ。ね? いいでしょ? 入れてくれたらすぐに新しく発行してもらうからさっ。あ、冒険者ギルドあるよね?」
「何度言えばわかる。しつこいぞ」
「おぉ怖い怖い」
キッと目を細めて迫ってくる冒険者の男をリシュアが睨むが、男はチャラけて仲間と顔を見合わせる。
「あんまりしつこい様なら斬るぞ」
「ははは! やっぱり亜人は野蛮な獣だな! 何の罪も犯していない俺達を斬ってどうするんだ? あぁ? また戦争でも起こしたいのか?」
「・・・・・・」
「くくくっ言い返せねえみたいだな! 哀れだなぁ」
「リシュア、抑えろよ。奴らの狙いはそれだ」
「わかっている」
近くにいた獣人の男に静止の声をかけられる。
「リシュアかぁ、良い名前だな。よく見たら顔も綺麗じゃねえか」
冒険者達がリシュアの顔を見て、舐め回すように体に視線を巡らすが、リシュアが変わらず黙って立ち塞がると、男は面白くなさそうにして話題を変える。
「そう言えばよ、知ってるか? 獣人ってのは奴隷として価値が高いんだよ。特にこの森にいるガキとかはな」
「きさまぁ、何のつもりだ?」
「落ち着けリシュア」
男の発言にリシュアが怒りを露わにし剣に手を掛けるが、獣人の男が止める
しかしその静止の言葉にも確かな怒りが籠っていた事にリシュアは気づく。
「なぁ、お前らならよく知ってると思うけど、この辺りから外れたガキがよく失踪したりしてねえか?」
男が何かを知っている様な口調で笑みを浮かべながら問いかける。
「!? お前らがっ!!」
リシュアが剣を抜き、冒険者に飛びかかろうとした瞬間、冒険者とリシュア達の間に影が現れたかと思うと、スタッと2人の人物が現れ、驚いて動きが止まる。
「お取り込み中すいません。間違って落ちちゃって」
「うむ」
「「「!?」」」
「誰だてめら!? どっから来やがった!?」
そう言ってリシュアと冒険者達が上を見上げ数人が顔を青ざめる。
「俺らは冒険者だよ、冒険者」
「は、はは、そうかそうか! なら俺らと同業じゃねえか! なぁ兄弟! ちょっとこいつらを説得してくれよ! 俺達ギルドカードを無くしちまってよ! すぐにギルドカード発行しに行くって言ってんだがよ、入れてくれねえんだ!」
「それは可哀想ですね!」
「やっぱそう思うよな! ならこいつらをどうにか説得してくれよ! なっ! 嬢ちゃんにも頼むよ!」
「勘違いすんなよ、可哀想なのはお前らみたいな奴の相手をさせられる獣人族に対してに決まってるだろ」
「うむ、当たり前じゃ、こやつらは馬鹿じゃのう」
俺とネフィラがリシュア達を擁護した途端、冒険者達は一瞬ポカンとした顔をしてすぐに爆笑する。
「はっはっはっは! 聞いたかお前ら!? こいつら、俺らを馬鹿にしてるぞ!」
「「「「はっはっはっは!!」」」」
「ははは、まぁそうだよな。男ってのは女の前だとカッコつけたくなるもんだ。俺は優しいからな。もう一回チャンスをやるよ。そいつらを説得して俺達を上らせろ、ああ、それと」
そう言って男が俺の耳元で付近まで近づき、俺にしか聞こえないように言ってくる。
「死にたくなけりゃお前の女も置いていけ」
「無理」
「ああ!? んだとてめえ! 優しくしてやったらすぐにつけ上がりやがって!」
男が拳を振り上げ、俺の腹を目指して殴ってくる。
「つけあがってんのはどっちだよ」
「ぐおっ!?」
男の手首を掴み半身になり男を奥へひっぱり進んだところを足を掛けて転がす。
「冒険者対冒険者なら、戦争になんてならねえから問題ねえな?」
「我の分も残しておくんじゃぞ」




