オルフェリス②
「ようこそオルフェリスへ! 楽しんでくれ!」
「ああ、ありがとう」
梯子を登りきると梯子を下ろしてくれた獣人の男が歓迎の言葉をかけてくれたので感謝を伝え進み出す。
「人間も結構居るんだな」
「そりゃあそうじゃ。正大陸から1番近い国じゃからな。まぁ亜大陸にはよっぽど端じゃない限りは満遍なく人間はどこにでもいるイメージじゃがな」
「意外だな。もっと少ないもんだと思ってた。魔大陸も結構多いのか?」
「魔大陸は殆ど人間を見かけんのう。亜大陸には魔大陸と違って人間の国がない上に非力な人間にとっては少々過酷な土地だろうじゃからな」
「あ〜確か亜大陸には人間主体の宗教国家があるんだっけ?」
「そうじゃ、そのおかげもあって亜大陸には人間が多いんじゃろう。ラクスティアからここのオルフェリスまでも距離はあるが、魔物は弱いし道も整備されておる。行き来は間違いなく魔大陸よりも楽じゃな」
「なるほど、そういう理由があるのか」
ネフィラは思っていたよりも結構地理に詳しいな。
まぁ数百年前から生きてて且つ人間の国まで来てるくらいだし、ある程度は知っててもおかしくはないか。
「ずっと話してないで早く行くわよ!」
アリサとアルトが奥の方で振り返りこちらを呼んでいる。
すぐに置いてかれるな。
「もっと高いとこまで登るわよ!」
「2人とも早く来て! 1人で面倒見れないって」
アリサがアルトの手を引っ張り近くにあった階段を駆け上がって行く。
アルトは面倒くさそうな助けを求めるような顔で一瞬振り向くがアリサに連れ去られてしまった。
「アルト、いつも頑張ってくれてありがとう」
「うむ、よくやっておる」
本人には絶対に聞こえてはないだろうけど励ましの言葉を送っておく。
「にしても、獣人って色んな種類がいるんだな」
アリサ達の後をゆっくり歩いて追いかけながら街の様子を見ていると、先ほどのリシュアの様に狼っぽいのも入れば、耳が丸っこくて殆ど見えないくらいの短い尻尾は熊だろうか。その他にも犬や猫だと思われるのが沢山いる。
「獣人っていいな」
「そんな真顔で突拍子もなく気持ち悪い事を言うでない」
「いや尻尾とか触りたくなるだろ」
「お主そんな奴じゃったか?」
「そんな奴だよ」
地球にいた頃は犬や猫は好きだったけど、買ったことが無いどころか触った事もない。
かと言ってこっちの世界は犬や猫は居ないし、狼や虎みたいなのはいるけど、魔物は基本襲ってくるから触れるのは殺した後だけ。
でも殺した後に触り心地を確かめようとニヤニヤしながら触っていたとして、もしそんな場面を他の冒険者に見つかったら変態かサイコパスだと思われるだろ。
それは俺の望むところでは無い。
「お主とはちょっと距離をおいた方がいいのかかも知れんのう」
「大丈夫だよネフィラだし」
「どう言う意味じゃそれ。絶対失礼な意味じゃろ。我は結構見た目は良い方だと思っておるのだがのう。少し自信を無くすのう」
そう言いながら淡い紫色の長髪を自らで勢いよく払うと銀のメッシュが見え隠れする姿は同性ですら誘惑されそうな魅力を放っていた。
「思ってないだろ」
「ふっバレたか」
「声が愉しんでた」
「鋭い奴じゃ」
そんな事を言いながらもうすっかりアリサ達を見失いながらとりあえず階段を登り続けていたら、少し上の方からアリサのデカい声が聞こえて来た。
「だから! どうして通っちゃダメなのよ!!!」
ネフィラと顔を見合わせる。
「少し急ぐか」
「その方が良さそうじゃ」




