進出
革命から数週間後、ヴァルグレイ王国公爵家当主ラドヴァン・ダスティンがラクスティアへ来た。
それも大所帯で。
その一行の中にはダイアスもいた。
というのも、早速ルミナ商会を他国へ展開する為に、ここへ赴いたようだ。
ルミナ商会が出来て僅か数ヶ月。
しかしその実態はヴァルグレイ王国でも上位に入るレベルの商人だったベルナールの商会を引き継いだ物。
基盤は完璧。
これ以上拡大せずとも十分な利益や影響を与えられる。
しかし、ラドヴァン・ダスティンは妥協しない。
もっと広く、大きくする為に、努力を怠らない。
だからこそ他国への展開もここまで早くなった。
たった数ヶ月で内部が滅茶苦茶となったベルナールの商会を立て直し、拡大するためにすぐに支部を作る候補地を自ら視察しにくる行動力。
何やかんやでまだラクスティアに残っていたアレスやガルド達は驚きを隠せなかった。
大量の兵や商会の人間を引き連れてラクスティアに来た時は驚きで口を閉じれなかった。
ーーー
「ダイアス?」
「ん? おお! アレスか!」
「久しぶりだな」
「ああ、そうだな。ちょっと外す」
「了解です」
日課のトレーニングで街中を走っているとダイアスらしき人物を見つける。
恐る恐る名前を確認すると、どうやら当たりだったようだ。
ダイアスは一緒にいた人に一言を掛け、道の端へ行って話し始める。
「魔大陸に行くんじゃなかったのか? なんでまだラクスティアにいるんだよ」
「いやまだ革命が起きてから街が安定してないからな。俺も結構関わってたし、ある程度安定するまでは街の治安維持やらを任されてる。とりあえず動ける手駒が足りないみたいでね」
街中をランニングするのも巡回には丁度いいしな。
「えっ!? ラクスティアの革命に関わってたのか!? いや、アレスならあり得るか・・・? ラクスティアで革命が起きた事、ヴァルグレイ王国でも滅茶苦茶話題になってるぞ。多分周辺の国はもっとだろうけど」
「まぁそりゃ革命が起きたら話題にもなるだろ。ってかダイアスはどうしてここに?」
「少しくらい興味持て?」
アレスが革命に参加していた事が気になりつつも、ダイアスは切り替える。
「まぁいいか。俺はラドヴァン様に付いて来たんだよ。ラクスティアで支部を設立する予定らしいから。それに伴ってダイレス傭兵団も設立する事になるから俺が来たんだよ」
「ラドヴァン様の時も思ったんだけど、わざわざトップ来る必要あるのか? お前もそうだけど、特にラドヴァン様は商会だけでじゃなくて貴族としての仕事もあるだろ」
「ああ、それは思ったんだけど、「事務仕事なんて何処でも出来るが、実際に現場を知るには自ら動くしかない」って言ってたぜ」
「なんだそれかっけえな」
「な。かっけよなぁ」
会話が途切れ、しばしの間沈黙が続く。
雲ひとつない青空を見上げる。
気持ちいい天気だ。
「ダイアス、飯でもいくか?」
「ああ、とりあえず仕事終わらせないといけないから、夜に頼む」
「わかった。ガルドさん達とアリサとアルトも連れて行っていいか?」
「いいよ。俺もアズルム連れていくよ」
「アズルムさん来てたんだ」
「当主様を守らねえと行かないからな」
「それはアズルムさんは必要だな。ダイアスより強いし」
「あんま言ってくれるな」
「ごめんごめん」
2人で笑い合う。
「じゃあ、また夜にそっち行くわ」
「分かった」




