革命
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「ギャハハ! そんなもんかよ!」
「ぐっうぅ・・・」
「! 大丈夫か!? 後ろに下がってろ!」
乱入してきた冒険者が、革命軍を執拗なくらい痛めつける。
そこをグレンが横から割って入って助けるが、鎮圧軍と冒険者に挟み撃ちされ乱戦状態に戻った今の状況で、周りは敵だらけ。
グレン及び革命軍側の冒険者達は苦戦を強いられていた。
「お前らを守ってくれる奴らの足を引っ張って、どういう気持ちか教えてくれよ!」
「ぐああああ!!」
「っち! 守りきれねえ!」
人を馬鹿にした様な笑みを浮かべながら斬りつける冒険者を眺めながら、自身も対応に追われ助けられない状況に舌打ちをするグレン。
「クッソ! いつになったら終わんだよ!」
悪態をつきながら複数の冒険者に立ち回るグレンだが、そこで違和感を覚える。
反対側の戦場が、静かになっていた。
視線をそちらにやると、大勢の鎮圧軍がその場に武器を置き跪いている。
なぜか優勢だったはずの鎮圧軍が降伏している。
「は・・・・・・、なんで・・・・・・」
「おいおいなんであいつら動かねえんだよ!」
「ふざけんな! アイツらのために参戦してやったってのによ!」
「まだ終わってねえだろうがよ! お前らが手こずってたから手伝ってやってたんだぞ! 動け!」
ただ人を斬りたいがために参加したのを鎮圧軍になすりつけようとする冒険者達。
混乱しているガルドパーティーをよそに、作戦を聞いていたアリサやアルト、ライオット、そして革命軍の大勢の人間は、鎮圧軍のその行動の意味を理解する。
「ヴァルデスは死んだ! 商王軍は武器を置き投降せよ! さすれば命は助けてやる! 革命軍諸君! 我々の勝利だ!!!」
声の出どころに視線を向けると、そこにはヴァルデスの頭を持って突き出しているフィルドが立っていた。
「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」
天を突き抜けるほどの歓声が夜の街に響き渡る。
なんだなんだと人が増え、現在の状況をだんだんと理解する。
ヴァルデスの頭を持った男に、武器を地面に置き投降する大量の兵士。
そして歓喜するラクスティア国民。
この国はもう、天国では無くなるのだろうと理解する。
「ふっざけんな!!! こんな事して許されんのか!!」
「そうだそうだ!! 冒険者が革命に加担するのは違反じゃねえのか!?」
「国の長を殺してどうするつもりだ! この街をどうするつもりだ!」
「あの時に思ったけど、まさかこんな事に加担するなんて! 見損なった!」
少しずつ増えていく野次達の声が大きくなっていく。
しかし、革命軍にSランク冒険者が居ることを確認した途中参戦した冒険者達は、渋々ながらも大人しく武器を置いていて、既に戦闘継続の意思は消滅していた。
同業者だからこそSランクの強さを知っており、気に入らなくても敵対しようとは思わなかった。
そんな野次馬無視し、フィルドはライオットの元へ近づき、話しかける。
「ライオットさん。終わりました」
「はいっ・・・・・・ありがとうっ、ございます・・・フィルド様」
自分達の目標が達成された事と、激戦の中を生き残った事、そしてこれからの生活を考え、感極って涙が溢れそうになるのを必死に止める。
「・・・・・・ライオットさん。戦闘は終わりましたが、やる事はまだ山積みです。彼らに指示をお願いできますか?」
ライオットが落ち着くのを少し待ってから言う。
「はい。分かりました」
「では、半分程はヴァルデスの屋敷へ向かわせて下さい。彼らは私が指揮します。残りの者達と、鎮圧軍の兵士達をーーー。」
事後処理が始まり、動ける革命軍の者たちは忙しなく動き出す。
この日、ラクスティア国民の革命は成功し、この事は商人や冒険者、旅人を通してすぐに広まり、近隣諸国から遠く離れたヴァルグレイ王国などでも大きな話題となった。




