異世界の街
冒険者ギルド!
この世界にはそんな物があるのか!
異世界物では定番とは言え、あるかどうかも分からなかったからこの世界はあるようで良かった。
・・・まぁ魔物が居る世界だし、そりゃ必要になるよな
これで楽しみがまた1つ増えたな
「ってか身分証を作るのに冒険者ギルドに行くのか?」
「そうだな。身分証を作るなら冒険者ギルドが1番楽だからな。あいつらは魔物と戦える奴らを常に求めているから、犯罪者とかじゃない限りは誰でも簡単にギルドカードを作れる。そしてそのギルドカードが身分証になる。」
「なるほどな。・・・もしギルドカードを取った後に犯罪を犯したらどうなるんだ?」
「その場合はギルドがクエストを出すだろうな。」
「クエストか…」
「そうだ。クエストは分かるか?基本は魔物の討伐依頼や薬草の採取や馬車の護衛が多いな。だけどギルドは犯罪に対してクエストをたまにだが出す事がある。誰々を生け捕りにしろーとかな。」
「そんなに沢山出す訳じゃないのか?犯罪者が少ないのか?」
「いいや、そうじゃない。ギルドが犯罪者を捕らえるクエストを出す時は大抵は冒険者が犯罪を犯した時だけだ。だからギルドに登録してない、ギルドカードを持ってない犯罪者に関してはクエストを出す事が少ないんだよ。」
「え?なんで?犯罪者は全員捕らえた方がいいんじゃないか?」
「まぁそうだがな。捕まえた方が良いに決まってる。けどな、ギルドからしたら自分の管轄下にある冒険者が犯罪を犯せば 、自分達の評価が下がる。だから、金を掛けてまでクエストを出す。だが、野良の、管轄下にない犯罪者は捕まえた所で大したメリットがないからな。報奨金が出るわけでも無いし、それなら普通のクエストをやって貰った方がギルドとしては儲かるからな。」
「うん、なるほど。そういう事ね。」
確かに、ギルド側からしたら捕まえても何も無いなら冒険者をわざわざ行かせる必要もないか。
ならほかの犯罪者は野放しか?
「まぁ犯罪者は基本は国が兵を出して何とかするから、放置されてる訳じゃないぜ。」
おおう、まるで俺の心の中を見透かされているみたいにピッタリのタイミングだな
・・・そうか、国か
まぁ普通に考えればそら国が動くか
野放しにしてたら自国の民が犠牲になるかもしれないもんな
そんな事になれば批難されるだろうしな
「よし、着いたぞ。ここが冒険者ギルドだ!!どうだ?でけーだろ?」
「おぉぉ。これが冒険者ギルドか!すげー!」
でかい
が、でかいにはでかいが俺は日本から来たからな
もっと馬鹿でかい建物を見てきた
けど俺が感心してるのは大きさなんかじゃない
そう、俺が驚いてるのはこの冒険者ギルド自体に対してで大きさでは無い
ここの冒険者ギルドはラノベやアニメなどで数多の作品に出てきた、男の子なら誰しもが1度は憧れるような、そんな想像通りの場所だ!!!
冒険者ギルド
門に入ってからのメインストリートを進んだ先、街の中央の少し離れた所に面した、巨大な石造りの建物。
3階建てのその建築物は、冒険者ギルドとして名を馳せていた
入り口には巨大な木製の扉があり、年季の入った取っ手には無数の手垢が染みつき、冒険者たちの歴史を物語っている
建物の上部にはギルドの紋章──交差する剣と盾──が誇らしげに刻まれ、数多の冒険者を迎え入れるかのように輝いていた
そんな冒険者ギルドを目を輝かせて見ていた俺にクラウスは微笑む
「それじゃあ行くぞーアレス」
「あぁ!行こう!」
わくわくが止まらない
早く中に入りたい
けど俺は言葉も通じないからクラウスの後ろをはぐれないように着いていく
扉を押し開けると、すぐに広がるのは活気と熱気に満ちた大広間
正面には受付カウンターがあり、複数の受付嬢が忙しなく応対をしている
受付カウンターまで真っ直ぐ道が出来ており、周りにはギルドと一体化した大規模な酒場が広がっている
粗削りな木製の長机が並び、冒険者たちが酒樽を傾け、騒がしく笑い合っている
カウンターの奥では、強面の店主が豪快に肉を焼き、香ばしい匂いが広間中に漂っていた
中央分が吹き抜けになっており、二階部分までしっかりと見えており、二階にも沢山の人が酒を飲んだり、肉を食らっている
三階は何があるか分からない、が大抵はお偉いさんが居るんだろう
「うおぉ…」
感動でうまく言葉が出ない
家族も友達も居ない俺が退屈せずに、寂しくならずにさせてくれた数々の作品を体験出来てるみたいで涙が出そうだ…
「おぉ!クラウスさんじゃねぇか!どうしたんだ?また冒険者活動再開ですか!?」
急にクラウスに向けて声がかかる
でけー声だ
その他にも色々な所から声が聞こえる
まぁ何を言ってるかは全然分からないが言ってる人達もクラウスさんも、皆笑顔だ
なら、悪いことは言われてないだろう
「よぉお前ら久しぶりだな。けどすまねぇな。今日来たのはお前らとパーティーを組むためじゃない。今日きたのはこの坊主の為だ。」
クラウスも何かを言い返す
ん?な、なんだ?
大勢の人が俺を見ている
いや怖い怖い
もしかして取って食べられる?
そのためにクラウスは俺をここに連れてきたか!
くっ罠だったか!
「じゃあ、ギルドカード作るか。」
「お、あ、あぁ。」
急に声をかけられるとびっくりするな
「あのー、クラウス?何であの人たちは俺を見てるんだ?」
「そらこんな前線都市の冒険者ギルドにお前みたいなガキが来たら誰だって驚くさ!」
「え?前線都市?」
え、なにどういうこと
この街戦争中なの?
怖すぎだろ
「はぁ!?お前そんな事も・・・そういえば記憶無いんだったな。まぁいい。とりあえずギルドカード作るぞ。」
この街には身分証を作りに来たんだ
戦争は怖いが今は気にする事じゃないはずだ・・・多分
「お久しぶりです。クラウスさん。本日はどのようなご要件で?」
「あぁ、この坊主のギルドカードを作ってやってくれ。」
「分かりました。では、名前と種族、主な戦闘スタイルなどを教えて下さい。」
「なぁアレス。お前の種族は人間だよな?よく使う武器は…棍棒か?」
「俺は人間だよ。武器って言われても棍棒は護身用で持ってただけだ。振り回す位しか出来ない!」
「なんでそんな自慢げなんだ…」
クラウスが呆れたように言った
「まぁ後から変えれるし、一旦棒術とかで良いか。よくわからんし。」
「名前はアレスだ。種族は人間。武器は…棒術で」
「分かりました。・・・・・では、これがギルドカードです。」
「あぁありがとう。助かったよ。」
「ほらよアレス。これがお前のギルドカードだ。」
「おぉ!お?何て書いてんだ?」
「まぁ文字も分からないよな。けど言うの面倒臭いし、家帰って言葉と一緒に文字も教えてやるから、その時に自分で見てみな。」
「了解。わかったよ。」
本当は早く内容が知りたいが、まぁ知りたいと思う程頑張れるし、別にいいか。
「よっしゃ!そろそろ帰るか!」
ーーーーーーー
「着いたぞ!ここが俺ん家だ。」
中世ヨーロッパにありそうな家だ
基本、木とレンガで出来ている
二階建てで窓は多めでベランダもある
所々色が落ちていたり、汚れがあったりするがあれは取れない汚れとかだろう
しっかり丁寧に使われて来たことがパッと見でも分かる
「へーこれがクラウスん家か。いい家だな!」
「そうだろう。俺の自慢の家だ。」
そう言ってクラウスは嬉しそうにしながら中へ入っていき、俺もそれに続く
「アレス、お前はここの部屋を使え。1時間時間をやるから、家の中を見るなり、外を散歩するでも寝るでも何してても良いぞ。俺は晩飯を買ってくるから帰ってきたら飯食うぞ。」
「あぁわかった。ありがとう!」
・・・・・ふぅ。今日は色々あったな
こっちに転移してからここに来るまでまだ1日も経ってないなんて、あまりに忙しい日だったな
もうすっかり陽も下がってるな
後数十分もすれば陽も完全に見えなくなるな
・・・・もう疲れたし、今は少し寝よう
ーーーーーーー
「ふああぁ。」
眠い
まだ眠いな
・・・外ももうすっかり暗いな
あ、そういえばクラウスが飯買ってくるって言ってな
俺どんだけ寝てたんだろうか
「あ、クラウス。」
「よう。アレス、起きたか。気持ちよさそうに寝てたから起こさないで置いたぞ。」
「…ありがとう」
「はは、まだ寝ぼけてるか。」
リビングに行くとクラウスが新聞(かな?)を読んでいた
「飯はそこに置いてるよ。3時間寝てたんだ。腹減ってるだろ。食いな。」
そこにはパンや肉などが大量にあった
普段の俺であれば一気に日本で食べてた物からグレードダウンしたから、少し質素すぎじゃね?とか失礼な事を思っただろう
でも今日は朝から何も食ってない上に沢山歩いてゴブリンを殺して、何も入ってない胃の中をさらにぶちまけた
そりゃもう腹が減ってるわけで
「こ、これ、こんなに食っていいのか?」
「あぁ好きなだけ食え。」
めちゃくちゃ食らいついた
スゲー美味く感じた
今までのどんな食べ物よりも
命を賭けて、今日、死ぬかもしれないと
もう温かいご飯も食べられず、ゲームも出来ず、友達も出来ずに、自分のしたかった事が何も出来ずに死ぬんじゃないか
ゴブリンに殺られそうになった時にそんな事が頭によぎっていた
けれど、今、俺はご飯を食べられている
自分の力ではなく、他の人の、クラウスのおかげで
思わずほんの、本当に少しだけ涙が出て、声が漏れる
「うう・・・・うっ・・うぅぅ・・・。」
あぁ、俺はこんなにも疲れてたんだな
泣きながらご飯を食ってる俺にクラウスはどう思っただろうか
変に思われただろうか
嫌われただろうか…いや、彼はこんな事で嫌がらないか
あんなにあった食べ物も俺が全部食ってしまった
全部クラウスの金だってのに、俺は・・・
「どうだ?美味かったか?」
そんな俺に何も見てなかったかのように、まるで聞こえて居なかったように、最初と会った時と変わらないような感じで聞いてきた
「あぁ。美味しかった。今まで生きてきた中で、1番。」
「そうか!そりゃ良かった!」
彼はニカッと笑った
「今日はもう疲れただろ。寝る準備して寝な。俺が片付けとくよ。」
「うん。ありがとう。クラウス。本当に
ありがとうございます。」
そう言いながら
俺は部屋に戻ってベッドに倒れ、眠りに落ちた