英雄を倒すには⑥
漆黒から黄金へと変わった剣と白銀の剣が交互に舞い、その剣技は誰もが魅了される様な強さだ。
とりわけ黄金の剣の方はあまりに力強く、光り輝いているかと錯覚するほどの力を感じた。
まるで勝利への道を照らしているかのようだ。
「アレス! 立て! こいつを阻止するぞ!」
「は、はい!」
ロアクが壁にぶつかり立ち上がれないアレスに声をかける!
アレスは咄嗟に反応し、ネフィラの元へ向かおうと激痛が走る体に鞭を打って命令を聞かせようとして・・・すぐに違和感を覚えた。
「!?」
先程までの怪我や痛みが嘘だったかの様に体が軽い。
治っている。
先程のロアクの魔法の効果か?
あれは一体何だったんだ?
浮かんできた疑問を今は一度隅へ追いやり、ロアクとネフィラの元へ駆け出し、剣を振る!
その一撃はネフィラに防がれるが、ネフィラは驚いた顔をしていた。
「ふっ!」
「っ! まさか広範囲回復? いや・・・範囲型のバフもか! ははは! なるほど厄介じゃのう!」
今までのアレスのどの攻撃よりも格段に速く、そして重かった。
そしてそれはロアクも同様。
いきなり急成長なんて事はない。疲れている分、普通なら遅く軽くなる筈。
なら何故?
1番あり得る理由としては先程のロアクのなんらかの魔法。
というかそれに以外に考えられん。
「楽しませてくれるのう!」
「そのままずっと楽しんでいてくれ!」
黄金の剣と漆黒の鎌がぶつかり合って奏でる金属音はさらに激しさを増していく。
「確かにこのままずっとお主と戦っていたいのう」
「俺はそれでも構わない!」
「だが、そういう訳にもいかんからのうっ!」
ネフィラの鎌を避け、後退するロアク。
正面にネフィラ。
ネフィラとロアクの間より少し奥にアレスが立っており、ネフィラがアレスを先に狙えば、ネフィラがアレスに到達するよりロアクがネフィラの死角から攻撃出来る様な絶妙な立ち位置に立っている。
「このままじゃあ終わらんのう。楽しかったが、雇われた以上は働かねばならん」
「律儀だな。このまま楽しく殺し合っていればいいじゃねえか。俺もまだまだやり足りねえしよ」
「魅力的な誘いじゃが、それは無理じゃな。お主が目に見える程対鎌への戦闘方法を身に付けておるからの。適応能力が抜群に高いのう。長引く程厄介じゃ」
「お前には敗北の心配はないのか?」
「いくら適応能力が高くとも、お主の様な若造に負ける訳がないのう」
「その見た目の奴に言われると違和感しかないな」
「人生の先輩としてアドバイスをやろう。姿形だけでそいつを判断するのは辞めておいた方がよいぞ」
「ああ、それはお前を見て学んだよ」
「はは! そうかそうか! それは良かった!」
ネフィラが愉快そうに笑うが、すぐに表情を切り替える。
「さて、話はこれで終わりじゃ。そろそろ始めようかの」
「いつでも来い」
「うむ」
まるで瞬間移動でもしているのかと思う程の速さでネフィラがロアクに詰め、ロアクは白銀と黄金の2本の剣で命を刈り取る鎌を止める。
決戦が始まり、ロアクとアレスが地に伏せるのはそのたった数分後だった。




