作戦実行ーーー奇襲組①
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「おうぅらあああ!!」
「っち!」
奇襲組は現在、アレスが敵の主力と思わしき人物を1人を受け持ちヴァルデス領地内の広い庭園のような場所で戦闘を行い、フィルド、ロアクは共にヴァルデス捜索の為、屋敷内を猪突猛進に相手を蹴散らしながら突き進んでいた。
「おいおい俺の相手をしてくれるんじゃねえのかよ! 避けてばっかでつまらねえな!」
「・・・・・・」
アレスは反応せず、ただ対峙する男から目は離さずに思考をしていた。
大剣使い。
大振り、剣の技術は荒いが、大剣を片手で振るうその力は凄まじい。
一度でも命中すれば致命傷になる可能性が高いか。
スピードはそこそこあるが、邪魔さえなければ確実に避けきれるが・・・・・・。
周りに雑兵がいる。
邪魔が入らない可能性は極めて低い。
こいつを相手にしながら、少し不味い。
多少時間を稼いで、ここから離脱するのもありか・・・
「あぁん? 何だ? ああ、そういう事か! てめーら散れ! 屋敷内で暴れてるやつを追いかけてこい! こいつは俺の獲物だ!」
「え!? し、しかし・・・・・・ぇ?」
「!?」
「これは命令だ! お前らもこうなりたくなければとっとと追いかけてこい!」
「「「は、はい!」」
ヴァルデスが反論しようとした部下の首を斬り落とす!
それを見ていたアレス含め、敵の雑兵達も目を見開き、すぐに駆け出していった。
あまりにクズで、自己中で、傲慢だ。
しかし、奇しくも一対一の状況に持ち込む事に成功した。
アレスにとっては好機である!
「周りが気になって攻めて来ないんだろ? ならこれで邪魔するゴミ虫は居なくなったぜ。ほら、楽しもうじゃねえか!」
「イかれてるな。お前出身ブラッドヴァルドだろ」
味方を殺してまで殺しあいを楽しみたいなんて、そんあイかれた戦闘狂はあそこしか思い付かん。
まぁここから真反対だし、違うとは思うが。
「よく分かったな! 俺は帝国出身だ! あそこは天国だった! 毎日殺しあいの日々だ!」
「は?」
は、え? ガチでブラッドヴァルド出身なのか?
適当に冗談のつもりで言ってみただけなのに。
でもまあ、それならこのイカれ具合にも説明はつくが・・・・・・ベルナールと言いダイアスといい、つくづく俺の戦う相手はあの国と関係があるな。
「ならそこから出るなよ。わざわざ天国から抜ける必要もないだろ」
「それはそうなんだがよ、今俺はあの国追われてんだ。殺しすぎちまってよ」
「どうして? 殺せば殺す程ブラッドヴァルドでは上に上がれるんじゃないのか?」
誰かがそんな事を言っていた気がする。
確かダイアスだったか。
俺には全く理解出来ない制度だが、たしかあの国にはそんな人の命をなんだと思ってるんだと問い掛けたくなるような制度があるはず。
「ああ、それは軍内だけに適用されるからなあ」
「・・・・・・ってことは」
「ああ、お察しの通り、民を殺しすぎちまった」
男は笑みを浮かべる。
「それで国を出されて、ムカついていたんだが、そんな時に、この街の事を知ったんだ。幾ら街の一角に居座るゴミ虫共を殺しても文句も言われない! ここはパラダイスだ!」
「ゴミ虫はお前だよ」
「あ? 今てめーなんて・・・」
男が口を開き、何かを言い終わる前にアレスは既に眼前へと迫り、剣を上段に構えていた。
「もういい、喋るな」




