ヴァルデス①
商王ヴァルデスの屋敷前。
ラクスティア冒険者ギルド長のデイブが、Sランク冒険者フィルドとロアクの2人の護衛を引き連れ、門の前へとやってきていた。
「冒険者ギルド長のデイブだ」
「お待ちしておりました! デイブ様! すぐに応接室へ案内致します!」
そう言って門番の近くにいた執事姿の人が、デイブ達を応接室へと先導する。
デイブは緊張しているのか汗が止まらない様だ。
「ここで暫くお待ちください」
案内をした執事はそう言って一礼し、部屋の隅の方で待機している。
っち! ヴァルデスめ、舐め腐りよって。数日前に決まった事だぞ。予定くらい空けておけ・・・・・・だがまぁいい、今まではお前の言いなりになってきたが、今日はそうはさせんぞ。
今回はギルドの最高戦力であるSランクの奴らがいる。
フィルドとロアク、奴らがこの街を離れる前から顔見知りでそのときから生意気なガキだったが、その時点で頭一つ飛び抜けていた。
Sランクとなり帰ってきたこいつらは、あの時よりもさらに強くなっている。
この2人がいれば、こちらも強気に出れる・・・・・・はずだ。
「待たせたな、デイブ」
そう言って入ってきたのは大柄な男。
見るものからすれば不愉快になるだろう程の、上品さなど微塵も気に気にしない、ただただ豪華絢爛な衣装を見に纏い、190cmを超えるであろうその体躯と態度、そして金髪坊主という威圧感がその人物から放たれていた。
ヴァルデスが部屋に入ってくると、先ほどの威勢など微塵も感じさせないほど冷や汗をかき、ビビり散らかしている。
フィルドとロアクは変わらずデイブを護衛出来る位置で後方で待機していた。
ヴァルデスも複数人の護衛を引き連れ、ヴァルデスの後方や部屋の隅まで、いつでも剣を抜ける様に警戒している。
「さて、何の用だ? デイブ? まともな用件じゃなかったら、俺様がお前を豚の丸焼きにでもしてやる。あ、お前は一応豚では無かったか? がははは!!」
煽られるがデイブは耐える。
入ってきた護衛に目を通すが、前回いた強者がいない。
フィルド達に話した女の護衛。
しかし、奴が居ないとはいえ油断は出来ん。
周りにいる奴の護衛は精鋭部隊だろうしな。
フィルドとロアクなら問題ないだろうが、戦闘の中で私を守れるかと言われれば別だ。
争いは起こさない様にしよう。
「はい。今回は・・・冒険者ギルドは、今日より冒険者とラクスティア国民との間で問題が起こった際に仲裁に入らせてもらう事を、お伝えに来ました」
「なんだと貴様? 俺様が前回言ったことを忘れたのか? お前達はただ見ているだけでいい。冒険者を放置しろ。そう言ったはずだ」
デイブを煽って気持ちの悪い笑みを浮かべていたヴァルデスの顔から笑顔は無くなり、分かりやすいほどに怒りを露わにする。
「しかし、これは冒険者ギルドとして決定した事ですので、ヴァルデス様には申し訳ないですが、ここは諦めて・・・」
「調子に乗るなよ!」
ガシャャアアン! とヴァルデスが勢いよくテーブルにおいてある高そうなカップを床へ投げ捨てる。
「お前が言うことを聞いているから金を流してるやってるんだぞ! 何勝手にてめーの判断で決めてやがる! 俺の邪魔をするってのか!?」




