ネフィラ①
「え、Sランクだ・・・」
「うわっ、本物じゃん! すげえ!」
「どうしてここに来たんだ?」
「けっ! 女に囲まれ過ぎだろ。どいつもこいつも、ちょっと顔がよくて強いだけだろ。はあ見てらんねえ」
「フィルド様〜かっこいい〜!」
「こっち向いてロアク様〜!!」
アレス達の周りを囲んでいた群衆の中を、彼らが進む方向へ勝手に道ができていく。
冒険者以外にも結構人気だとか有名だとか聞いていたが、それを今アレスは実感した。
ここだけ見れば、どこかのアイドルかと思ってしまう。
「・・・・・・」
フィルドとロアクがアレス達の元まで近づき、止まると、一度周囲を見渡し、言葉を発する。
「彼らから先んじて聞いたであろうが、もう一度私が伝えておこう! 今日より、我々はラクスティアの国民に手を出す輩を発見次第、止めに入らせて貰う! 今までのように好き勝手暴力を働く事があれば、こちらもそれ相応の対応をする!」
フィルドの発言に、ドッと周囲が湧いた。
エリックが言うのとは訳が違う。
知名度も、人気度も、強さも、誰から見ても全てが上位の存在。
Sランクと冒険者は、このような魔物の脅威に晒されていない安全な街では滅多に見れない存在。
そんな彼らを見て高揚していた群衆には、あまりにも衝撃的な言葉だった。
「なっ!? マジで言ってんのか・・・・・・?」
「おいおい流石に洒落にならんぞ」
「はっ? え? ガチで?」
「まぁ俺は ラクスティア人に関わった事ないから関係ないや」
「おお〜大きく出たね〜」
人々が様々な反応を示す中、冒険者達は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるは、反抗はない。
まぁ、当たり前か、相手はSランクだ。
俺に苦戦してる様じゃ、この人達には手も足も出ないしな。
ざまぁみろだな。
「っち! クソが!」
最初にライオットに絡んだ冒険者が、倒れている仲間を抱えて群衆の中へと溶けていく。
それを皮切りに冒険者達は不満そうな表情ながらも、けれど絶対にフィルドとロアクには視線を合わせない様にこの場を去っていく。
「さて、私達もそろそろ撤収したいところだが・・・」
そう言ってフィルドがすっかり忘れられていた少女へ目を向ける。
「フィルドさん、彼女は最初にライオットさんを・・・」
「そこは知っている。建物の上から見ていたからな。お前達が人混みに流されていくのもな」
「あ、はい」
「して、貴方の名を聞かせてもらえないか?」
「うむ、我の名はネフィラじゃ」




