誰?①
「「「!?」」」
その場にいた全員が、目を見開き、動きが固まる。
ライオットと冒険者の間に止めるように割って入った人物が、まだ若い少女で、あまりに異様だったからだ。
淡い紫色の長髪を靡かせ、前髪に覗く銀のメッシュが月光を受けて妖しく光る。
清楚さを感じさせる純白のワンピースが華奢な体を包むが、その佇まいはあまりに堂々としていて、その年に似つかわしくない艶めきを放っていた。
その少女はあまりに美しかった、同性でさえ目を奪われてしまう程に、通行人も含めたその場にいた全員が、数秒、彼女から目が離せなかった。
「・・・なんだあお嬢ちゃん? 今何か言ったか?」
見惚れている場合じゃねえと、ハッと気付いた冒険者の1人が遊びを邪魔された事に苛立ちながら少女に乱暴な言葉を吐く。
「ほれ、はよ立たんか」
「あ、ありがとう、ございますっ」
少女は冒険者の言葉を無視し、ライオットに手を貸し、立ち上がらせる。
「おい無視してんじゃねえぞ!! 俺達が手を出さないとでも思ってんのか!?」
「おい待て、よく見りゃああいつ滅茶苦茶可愛いぞ、胸はねえが、顔を傷つけるのは無しだぜ」
「うへへ、帰った後が楽しみだなぁ」
聞くに耐えない会話を、少女や周りの人に聞こえる声で冒険者達が繰り広げる。
「今夜は羽虫がうるさいいのぉ、そう思わんか?」
「えっ、あ、え、そ、そうですね・・・・・・」
いきなり問われた言葉に、ライオットが困惑しながら応える。
「そ、そんな事より、君は早く離れて!」
「? 何故じゃ?」
「君もあいつらに狙われてる! きっと嫌な目に会う、この人混みなら、逃げれるから、早くっ!」
ハッと今の状況を思い出したかのようにライオットが少女を逃がそうと説得する。
「嫌じゃな、そもそも我はお主を助ける為に出てきてやったんじゃぞ」
「助けるだぁ? 嬢ちゃんが? そのゴミを!? ぶっははは! 笑わせてくれるねえ!」
「おいおい冗談は寄せよ、今俺ら側に来たら痛い目には合わせねえよ」
「まっ、最初は痛いかも知れないがな! 慣れれば快感だぜ、ぎゃはははは!!」
「すまんが、我には既に心に決めた者がいるのでな、貴様らの様な羽虫と付き合うつもりなど毛頭ないぞ」
「ぶはっはっはっは!! そうかよ! ならそいつの目の前でお前をぶち犯してやるよ! まずはお前を分からせてやる! 力の差をな!」
「・・・・・・」
迫る冒険者に対して、ゴミを見る様な目でを向けるだけで、彼女はただ立っている。
逃げろ! とその光景を見ていた数人が思った。
ライオットの時は何も思わなかった連中が。
「「「!?」」」
アライオットは見た。
真横から高速で飛んできた物体・・・いや、アレスが、少女に迫っていた冒険者の横顔を思いっきり蹴り飛ばしていたのを。
ドゴオオオン!!
「アレスさん!」
「すまいせんライオットさん。遅れました」




